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3話

「ねえ君?」


 そのとき凛とした声が聞こえた。

 声の方を見ると、店にいたもう一人の客である、小さな女の子がクルムの方へ手招きをしていた。


「オレ?」

「うん。そう君だよ。君以外誰がいるの?」


 クルムが店内を見渡すと、相変わらず客は自分と手招きをする女の子だけだ。他にいるのはマンプだけ。


「……おっと訂正、君以外のお客さんは誰がいるの、だね」


 女の子はマンプを見ると言葉を訂正した。

 クルムの後ろでマンプの笑い声がした。彼にとって客が少ないというのはもう笑いのネタのようである。


「ちょっとこっち来て」


 クルムはなんだと思いつつ席を離れ、女の子の方へ行った。


 その女の子は少し離れて見ていたせいで少しだけ大きく見えていたのか、近くで見ると思ったよりも背が小さい女の子だった。もはやロリっ子である。だがその見た目に反し、少し胸が大きい。クルムの成長が完全に止まってしまった胸より大きかった。

 クルムは胸に目が行きつつも、女の子の顔を見た。

 幼い感じはあるが、少し大人びた雰囲気の顔。はっきりとした目が一層そう感じさせた。

 クルムはかわいいなと感じながら、促されるままに彼女の正面の椅子に座った。


「それで何だ。何の用?」


 女の子は椅子の上に立つと、クルムを指さしてこう言った。


「単刀直入に聞くわ。君、私と組んでみない?」

「組む?」

「そう。話しているのが聞こえたんだけど、今解雇されて、仕事を探してるんだけど、見つからないって感じなんでしょ」

「まあ、そうだけど」

「実は私、迷宮の中で採掘とかがしたいのよ。……だけど見てわかるように私はか弱い女の子。一人で入るのはなかなか怖い。そもそも入ろうとしたら迷宮の入り口にいる衛兵に止められちゃうしね。

誰か護衛を雇おうにも見た目のせいでろくに相手がされないのよ。されたとしても、来る相手は下心丸出しのロリコン。そんな奴とは仕事がしたいとは思わないでしょ」

「そうだな」


 クルムはトプのことを頭に浮かべつつそう答えた。


「そうでしょ! それで少し困ってたのよ。

 そしてそんな困っているところに君の話が聞こえたという訳」

「なるほど。

 オレは魔力ゼロなんだがそれでもいいのか?」

「別に問題ないわよ。君、護衛をずっとやってたということはちゃんと強いんでしょ」

「そうだけど」

「じゃあ問題なし、全然問題ないわよ」


 その答えにクルムは少し驚いていた。

 クルムが新しい仕事を探そうとしたとき、なかなか見つからなかったのにはトプに目を付けられたくないという街の人々の考えだけでなく、魔力がゼロということも含まれていたからだ。


「それでどうかな? 私と組んでくれる」


 もしこれが詐欺などの類でなければ、彼女と手を組むことでクルムは再びお金を稼げれる。クルムとしては願ってもいない提案であった。すぐに「組む」と答えたかった。

 だがクルムの中にはそんなうれしさと同時に不安もあった。

 仮に組んだとして、それにより彼女に迷惑がかからないかと。

 自分はトプに目を付けられている。そんな自分と組んだこの女の子がトプに目を付けられない、そんなことがあるわけがない。確実に目を付けられる。そして迷惑をかけてしまう。それは避けたかった。

 クルムは目の前の女の子を見た。

 彼女はクルムの顔をルンルンという効果音がありそうな感じで見ながら返答を待っていた。


 こんな良い子そうな女の子に迷惑をかけたくない。

 自分みたいな見ず知らずの人間、魔力ゼロという欠点がある人間を誘ってくれるいい子だ。探せばきっと良いパートナーも見つかるだろう。

 これいいチャンスかもしれないがしょうがない。

 クルムはそう考え、断ろうとした。


 だがそのとき、


「迷惑とか気にしないでよ」

「えっ……」


 クルムの頭の中が一瞬空白になった。


「話が聞こえてたと言ったでしょ。つまりそのトプとかいう奴に目を付けられるかもしれない、そんなことは承知の上で君に提案をしたの。だから迷惑とかそんなのは考えなくていいから。そんなのはどっかに放り棄てて、組むか、組まないか……君の率直な答えを聞かせて」

「どうしてオレなんだ……?」


 自然と疑問の言葉が出ていた。

 女の子は手を顎にやって少し考える仕草をした。


「なんとなく……かな?」

「なんとなく?」

「そう。なんとなく、君を見てて、君の話を聞いてて、君と組んでみたい、君と一緒に迷宮に行ってみたいなーて思ったの。だから声をかけたの。

 私は君と組んでみたい、そう思ったから声をかけたの」


 なんとなく。

 そんなあやふやなもので迷宮での護衛を決める。

 クルムは訳が分からなかった。何か裏があるのでは。もしかして自分を馬鹿にしてるのではとも思った。

 だが目の前にある子供のような純粋な顔がクルムの中でそれを否定させた。

 そして何より、なんとなくであろうと、自分のことを選んでくれたといううれしさがそれを否定させた。


 もしかしたら嘘かもしれない。

 騙そうとしているのかもしれない。

 馬鹿にしてるのかもしれない。


 だがそんなことはもうどうでもよかった。


 組むか、組まないか。

 迷惑関係なしに。


 そうなると答えは一つであった。


「組みたい」


 その答えを聞いた彼女は笑顔になって喜んだ。

 飛び跳ねながらクルムの横にやってきて、手を差し出した。


「よしっ! じゃあこれからよろしくね。

 あっ、私の名前はノルン。さっきも言った通りか弱い女の子だから。一応簡単な後方支援ぐらいはできるけど、基本戦闘なんて全然無理」

「オレはクルムだ。護衛は任せてくれノルン」

「ええ。お願いねクルム」

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