真実
先生の家にお邪魔するのは二度目だ。今日は私は車で来た。駐車場は広く、カースペース4台くらいあると思う。
先生の家は、世田谷にある2階だての戸建て。しかしどうも、生活感がない。
「今日は何もしないから大丈夫よ。」
ははっと笑う先生。シャレにならない気がする。
先生はダージリンをコップに入れ、リビングの前のテーブルに二人分置いた。私はソファーに座り、先生はケルト音楽をかけてからソファーに座った。
「真実を話すわ。話すべきかどうか、佐々木先生に言われるまで迷ったけれども...。」
先生はダージリンを少し飲んでから話を続ける。
「旦那とはレジデントの時に知り合ってね。二人の子供に恵まれたわ。旦那はいまは内科のクリニックをやっていてね。でも、結婚当初からひたすら不倫、不倫、不倫。ずっと我慢していたけれども、もう嫌になってね。」
私もダージリンを飲み、うんうんと頷く。
「子供が卒業してから、すぐに別居したわ。もう、別居してから5年が経つの。子供は今は二人とも社会人で、長男は音大に通い、留学もしてね。次男は私立の医大。莫大な学費がかかっていたわ。だから、金銭的なやり取りは続けたの。子供達が巣立った後、私は旦那を追い出すように弁護士を立てたら、あっさり出て行ってね。この家の名義人は私なの。」
先生は喉が乾いたのか、コップに入ったダージリンを飲み干す。
ケルト音楽がクライマックスを迎える。
「別居後5年が経過していたら、夫婦関係は破たんとみなされるのが一般的。また弁護士を立てて、正式に離婚したいわね。でもね。不倫では一般的には、別れる、別れると言いながら配偶者と別れないケースが多いのよ。だから、正式に離婚してから、吉田さんがもし良ければ付き合いたいと思っていたわ。でも、焦ってしまってね。あなたは自分が思っている以上にモテるから。私が焦った結果、早々にレールを踏み外してしまったのよ。」
チラリと私を見た。
後日、上村先生は離婚したようだ。名字は上村のままにしていた。弁護士を代理人として立てたが、調停になることなく旦那さんはあっさりと離婚届にサインした。
財産は、稼いだ分はそれぞれ。世田谷の家は先生のもの。別居中に旦那さんが買ったマンションは旦那さんのものとなった。
髭男のpretenderを聞きながらこの話を書いています。
上村先生と吉田さんの運命の人は誰でしょうか。