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あの日は、夜這いに近かったのかもしれない

 今日も上村先生と一緒に社食で昼食を取る。

 夏休みは沖縄に行きたいのよ、とか、蒸しタオルを額に当てると美容に良いのよ、など、たわいのない話をする上村先生。

 私はじりじりして、話を切り出した。


 「昨日あんな事があったのに、何故平然としていられるのですか?」


 「あんな事?ここはそれを話す場所ではないでしょ。」


 とかわし、ごく普通に食事を取る先生。


 先生とお会いしたいです、と昼休みの終わりにメールを打った。

 わかったわ、いつものバーに行きましょう、と先生からメールがきた。今日は医局の勉強会があるから、遅くなるけれどもね、と付け足されていた。

 私は電子カルテを打ち終え、いつものバーへ行った。先生は私がバーに来てから2時間ほど経ってから来た。

 

 「ずっと待っててくれたのね。ごめんね。」


 そう言いながら上着を店員に渡した。

 とりあえずお酒とおつまみを頼んだ。

。私はワインを、先生はカクテルを、つまみはチーズの盛り合わせと生ハムをオーダーした。すぐにお酒が運ばれたが、乾杯はしなかった。

 いつもニコニコしている先生とは違い、真面目な顔で窓の外を見ていた。

 先生は、はぁ~っと溜め息をついた。


 「昨日、起きていたのね。しかし、デリカシーがないわね~、あなた。そういう質問はしないのよ?普通。」


 でも、夜這いに近かったかもね、と先生は付け足した。

 

 「あなたと出会った時は、面白い男の子だと思ったわ。そして、母性本能をくすぐるのよね。あなたは女性と話すときは、すぐに胸元や太ももをじっと見る姿が露骨でね(笑)。まあ、お盛んな年頃よ。やがて、佐々木先生とあなたが付き合ってね。二人は愛し合っていたわ。なのに、急にあなたが応じなくなってね。何で?と思ったわ。あなたは急に男の子らしくなくなったの。私は、あなたに声をかけて、確かめる事にしたわ。」


 先生はそう言って、カクテルを少し飲んだ。


 「あなたの心が女性である以上は、私と付き合う事は不可能でしょう?年齢差もあるしね。親と子位離れているのよ。

 たわいない話をしたり、見つめるだけで良かったのよ。でもね、体は正直よね...」 


 先生の自分の手を握り締めた、そして、涙が頬を伝ってこぼれ落ちた。辛そうに、寂しそうに話す先生。これ以上は何も言えなかったようだ。

 私はゴクリとワインを飲んだ後、こう言った。


 「私は先生にとても憧れているんです。でも、これが好きという感情なのか、今はわからないです。もう少し時間をください」と答えた。

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