光の神バルドル
神々の住むアスガルドでは、光の神バルドルが死ぬと言う予言で慌ただしいらしいのだがヘルは興味がなかった。
それよりも今目の前にいる珍客を、どうしようかと思案していた。
ノルン三姉妹の三女スクルド
その神格は未来であり、ヘルとは違う理由で殺す事のできない女神である。
「で、今日は何の用で来たの?」
「ん、もちろん神託を告げに」
それもそうかとも思うが、バルドルの死に関してなら既に知っている。
わざわざ告げに来るほどでもない。
予想に反してスクルドの神託は別の事だった
「今の貴女はもうまもなく死ぬ」
金髪ツインテールの女神は笑顔でそう告げた。
言葉の意味をのみ込めない。
「かわいい首輪ね」
そう言いながらスクルドは、ヘルの赤い首輪に触れた。
「触るなっ!!」
思わず手を払いのける。
スクルドは、ごめんなさいと謝ったがその表情から悪びれた様子は無い。
むしろ満足したかの様に帰って行った。
数日後、ヘルの世界にバルドルの魂が送られてきた。
その魂の美しさに心を奪われる。
初めての胸の高鳴り
この感情が何なのか解らず戸惑いを覚える。
ヘルは、今のヘルの終わりが近い事をまだ知らない。