表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

せんぱい

作者: ドロップスドロップ

ツンツン、と肩に硬いものが当たる。

ふっと斜め上を見ると大好きな顔があった。

「せ、んぱい」

5分前から考えていた笑顔で私はわざとひらがなで先輩を呼ぶ。

先輩が私を小突いたスマホをポケットに滑り込ませる。

私は、その指をじっと見ていた。

指をたどって、先輩を見る。

指の先から、バレないように、ゆっくり、先輩の顔をまでたどる。

指先、腕、肩、首、顔。

先輩はいつものくしゃっとした笑顔で私を見る。


「待たせて、ごめんね」


ああ先輩だ。

私は、待っていた間考えていたセリフを言う。そのために、わざと2分前の先輩の「ちょっと待ってて」には返信しなかった。

「せんぱいへの返信...考えてたら、先輩の方が、先に来ちゃった」


先輩はニッと笑うと、

「カワイイな、この」

そう言って、また、スマホでちょんと私を小突く。




スマホから、先輩の体温は伝わらないんです。

ほんとは手で、触れてほしいな、 ほら、人間のあったかさって、特別じゃないですか。



言いたい言葉をそっと飲み込んで、私は先輩の後を歩く。

サークルのみんなとの合流先まで、最寄りが一緒の私たちはいつも一緒に行っている。




周りの人たちは、私たちをカップルだと思ってるかな。

その人たちの記憶の中だけでいいから、カップルになりたいな。

先輩の彼女に、なりたいな。なりたかった。




先輩には彼女がいる。

知ったのは、昨日のサークルの飲み会だった。

汚い居酒屋。

そんな、全くロマンチックじゃないところで、私の恋は、終わったのだ。

しゅわしゅわとなるビールの泡と一緒に、私は先輩への思いを飲み込んだ。





先輩はいつも、私のこと、可愛い妹っていうね。

相談は深夜だろうと乗ってくれたし、飲み会の時は「絶対飲むなよ」と釘を刺して、いつも隣にいてくれるね。

いつも笑って、私の話聞いてくれる。テスト前の勉強会では、つきっきりで教えてくれたね。

先輩、私、先輩にもらったルーズリーフ、使わないでとってあるんだ。






でもね、先輩。







...やっぱりいいや。







ごめんね、先輩。



キスの妄想も、それ以上の妄想も、した。私だけ、好きだった。


私だけが先輩のことを、汚してたんだよね。


作った言葉、作ったそぶり、私だけが真っ正面に、先輩にむきあってなかった。


ごめんなさい。ごめんなさい、先輩。


でも私、まだ懲りてないの。

まだ、どうやったら先輩に可愛いって思われるか、考えて、作った行為をしちゃうの。








「どうしたの」

先輩が私の方を振り返って、微笑む。


「待って、せんぱい」

私は小走りで、先輩の方に駆け寄った。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ただの片思いではなく、先輩に相手がいるからこそ、さらにこの物語がくぅぅ、っと読んでいて楽しいものになってました! とても面白かったです!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ