出会い
晴れた空とは対照的に久信は、あれこれと悩んでいた。
たまたまかもしれない。久信は、そう思う事にした。その方が良いと思ったからだ。
確かに、飛行機事故なんて滅多におきない。たまたま、おじさんが言った事が偶然おきただけだ。
しかし、昼飯の焼きそばもあまり喉を通らなかった。身体は、現状を受け入れていないらしい。
気付いたら、母親に図書館で課題を終わらすと言って駅に向かっていた。やはり、空は晴れていてこれから、雨が降るなんて信じられないくらい爽やかだった。
しかし、久信にはどうしても確かめたい事があった。そう、あの時におじさんが言っていた銀行強盗だ。
今日の確か夕方に襲撃される所までは、聞いていた。その先は、聞き流して帰ってしまったから分からない。
久信が到着した時はまだ、四ツ谷銀行の南青羽支店は強盗には襲われていないらしかった。
一応、店内に入ってみた。すると、女性が何やら支店長を呼ぶように話していた。多分、自分と同じぐらいの歳の女性だろう。
職員も困惑気味に応対しているのが、遠くからでも分かった。
近くまで言って会話を聞きたい衝動に久信は駆られた。
「いい加減にして下さい。」
その時、職員が怒っていた。
「だから、何度言ったら分かるの!」
女性も食い下がらなかった。
「これ以上、デタラメを言うなら警察を呼びますよ。」
「もう、好きにして下さい。」女性は、怒って出て行った。
「まったく、あんな客は困るよ。今日、強盗が来るだってさ。」
さっき女性と応対した職員が同僚に文句を言っていた。
その瞬間、久信ははっと我にかえった。すぐに、さっきの女性を追い掛けた。先の交差点にいるのが見えた。まだ、信号を渡っていなかった。久信は、全力で走って女性まで追い付いた。ここ最近、運動してないせいで息はすぐにあがった。交差点の信号が赤から青に変わった時に、久信は話しかけた。
「すいません。」
「はい、何ですか?」
女性は、警戒している様だった。
「あの、さっきの銀行でのやり取りを聞きました。」
女性は、顔を赤くした。
「それで、何で強盗に襲われると思ったんですか?」
久信は続けた。
「どうせ、信じないでしょうけど、、、。ある人が、言った事が現実になっているから。それで、あたしは、、」
最後まで言い終わらない間に、久信は身が凍りついた。
「ちょっと、おじさんは他に何か言ってたのか?」
急に口が動いていた。
「おじさん?何で知ってるの?男性だって、、、。」
その瞬間、女性もはっとして久信と目があった。二人で数秒見つめ合っていた後、女性が口を開いた。
「ここじゃ、まずいわね。あそこの店に入りましょう。」
言われた通りに、久信は喫茶店に入った。
薄ぐらい喫茶店は、非現実的な他人に聞かれたらおかしだろうと思われる会話を真剣に話すのには、格好な場所だと感じた。