序章
何もかもが嫌だから、昼まで寝ている事にした。
そんな事で、未来が変わるはずのないのは誰より知ってるつもりだった。
何かがおかしいんだ。でも、その何かがはっきりとした言葉では言えない。
春の心地良い風に吹かれて、1日前の出来事を久信はゆっくりと思い出してみた。
朝は、いつもよりも早く起きられた。何だか時間に追われない朝はとっても清々しいものだった。
それから、朝ご飯を食べて家を出たのが8時少し前だった。なんとなく、いつもと変わらない久信の学校での日常が終わろうとしていた。
ただ、いつもと違った点が一つだけあった。帰り道に、奇妙な、いかにも怪しいおじさんに変な話しを聞かせられた事だった。
話しかけられた時は宗教の勧誘かと思った。無視するのもかわいそうに思えたし、何より退屈すぎた。興味本位で、おじさんの話しを聞いた。
そして、そんな事は忘れて昨日は寝てしまったんだ。
問題は、今日の朝だ。
いつもの様に起きて、TVをつけた。チャンネルを回してたら、速報ニュースが流れてきた。
バカバカしいとその時は思った。
でも、もしかしたら、万が一って事があるかもしれないって思った。ニュースが流れてきた。アナウンサーが興奮した様子で話していた。画面は、見なくても声の調子だけでそれは、分かった。アナウンサーの言った事が最初は、信じられなかった。
いや、正確に言うと信じようとしなかっただけかもしれない。
まとめるとこうだ、今日の朝に飛行機が墜落した。墜落したのは8時30分羽田発の札幌行きだった。しかも、機長の名前が斎藤だった。
そのニュースを聞き終わったと同時に、久信は凍りついた。
そして、全てはあのおじさんの言った通りだった事がゆっくりと分かった。