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魔器。
魔力を持つそれは通常の武器とは大きく異なる。
強力な力。それに耐えうる強度。そして・・・¨意思¨を持つ。
しかし所詮は武器。¨使われる側¨である為、戦う理由を選ぶことが出来ない。
守ること。
壊すこと。
殺すこと。
それ故に使い手を選ぶ。
所有者がその身を預けるに値するかどうか。
認めない者は手に取ることすら許さない。
唯一許されるとすればそれは---
◆◆◆◆◆◆◆
カーテンから朝日が差し込む。
瞼が弱化の熱を持ち起床を呼びかける。
「ふぁぁぁ・・・もう朝か」
特に何時起きと決めているわけではない。
これは個人商店だから出来る特権の一つだ。
軋むベッドから体を起こし軽く背を伸ばし、いつもの作業着に袖を通す。
階段を下りていくと、そこは見慣れた俺の店。厳密には親父から受け継いだ店だが。
親父も爺ちゃんから、爺ちゃんもひい爺ちゃんから。そうやって、気が付いてみれば何十年・・・何百年も続く老舗になっていた。あまり有名ではないけど。
それが証拠に、店の前に客が並んでいる気配はない。
といっても最低限の生活は出来ているし、たまに臨時収入も入ってくるからある程度金に余裕はある。
「おーい、レヴィ。いるかー?」
欠伸をしながら店の奥にある作業場兼リビングへと向かう。
微かに珈琲の香りが漂う店内。
だが目的地に足を進める毎に強くなるのはそれではなく、鉄と火の匂い。
そして・・・そこで俺、マルコ=ヴィクトールを待っていたのは---
「おはようございます。お兄様」
火よりも赤く、燃えるような長髪をなびかせた一人の少女。
場違いとも思える黒いゴシック衣装を身に纏い、両手には朝食の乗ったプレート。
知らない人が見たらメイドに見えなくもない。
「相変わらず早起きだな、お前」
「では、お兄様もたまには早く起きてみてはいかがですか?」
「それは断る。で、朝食は?」
「聞かなくてもご存じでしょ?すみませんね、レパートリーが少なくて。」
頬を膨らまし軽い不機嫌をアピールするレヴィ。
「別にそういうつもりで言ったんじゃ・・・。悪かったよ」
「ふふん、よろしい」
プレートをテーブルに置き、俺とレヴィは向かい合うようにイスに付く。
トーストとベーコン。サラダにコーンスープ。いつもと変わらない朝食だ。
「では」
「あぁ」
両手を合わせ祈りを捧げる。
俺は無信仰者だから祈る神は特にいないが、これも習慣というやつだ。
片目をそっと開けレヴィの様子を窺う。同じように彼女も祈りを捧げているが、違う点があるとすればその表情は真剣そのもの。
まぁ、こいつも俺と同じく神様なんて信じちゃいないんだけど。
レヴィ。
まるで人形のような外見を持つ美しい少女。歳は外見だけでいえば14~15歳といったところ。
しかし彼女は人間ではない。勿論、俺の妹でもない。
なぜなら彼女は---
「いただきます」
そう言うと、どこからともなくナイフとフォークが彼女の手の中に現れる。
レヴィ曰く。自分の一部を利用しているとかなんとか。
魔剣レーヴァテイン。
それが彼女の正式な名前。
魔器師が作った魔器。
そして、未だ嫁ぎ先の付かない売れ残り商品である。
読んでいただきありがとうございます。
次回更新はなるべく速くあげるつもりです。えぇ、はい。