六幕「動いても何もない」
科学者に作られた機械の子、カミカのおはなし。
―なんのために? それは、なんのために? なんで私は動いてる? なんでだよ。 ねぇ答えてよ。
やっぱり全部分からなかった。腐ってしまった機械をまた動かすなんて。
...姉が創った機械が私、カミカだ。それは失敗作で、腐ってしまってる。それなのになんで今になって動かすの?
失敗作はいらない、捨てればよかったのに。
最期に私を動かして、なんで逝ってしまったの?ねぇ、どこに逝ったの? 答えてよ。
こんな風にしたのは人間なんだ。許せない...人間がこんな酷いことするなんて思ってなかった。
私はこれから、どうすればいいの?
人間が憎くてたまらない私はどうすればいいの?
ねぇ、誰か誰か誰か誰か...
全部引き裂かれそうで怖い。怖い。
誰かいてほしい、答えてほしい。ねぇ。
ねぇ、ねぇ、あああ
ねぇ、ねぇ、あああ
「呼んだ?」
何処からか声がして、振り向く。
「...うん、ねぇ、なんで姉は私を動かして逝ってしまったの??ねぇ」
ついつい知らない人に聞いてしまった。けど答えてくれた。
「その答えは簡単さ。つらかったんだろうね。
それで、貴方を本当の妹のように扱っていたから、動かして逝っちゃったんだろうね。」
「本当の、妹...?...確かに私は姉って思ってたけど、姉本人はそんなこと思ってるはずが...」
「いや、貴方のお姉さんは貴方のことをちゃんと愛していたんだよ。失敗作でもなんでも。」
「...」
「あと、なんで貴方のお姉さんは逝ってしまったか。人間に精神を壊されていたからなんだよ。」
「!!」
―やっぱり、人間だ。
「憎くてたまらないよね。こっちにくれば、そんな人間に天罰を下せる。
お姉さんだってこっちにいる。一緒に天罰を下せるんだよ。ねぇ、こっちへきなよ。」
「本当...? 行きたい。そっちに。」
「うんうん、大歓迎。じゃあ、手を握ってよ。すぐ連れて行ってあげる。
二つ名は「天罰機械」ね」
「うん」
その子の手を握った
もうなにがあっても嘘だと疑ったりはしない。
だって姉は科学者。
何があっても今更驚かない。
こういうことは信じる。
「さあ、とばしていくよ」
暗くなって、明るくなって。
見えてきたよ。
お
姉
ち
ゃ
ん。




