三幕「貫かれた人間」
夢からはじまる、普通の少女燐が、夢の中で貫かれちゃうおはなし。
―あれ、なんだろう。なんかに閉じ込められてる感がある。けどなんかふわふわしてる感じもする。
これは、なんなんだろう。よく分かんないけど、いいとも悪いともいえないって感じがする。
夢だとは思うけど、こんな変な夢あるんだなぁ。
「...おーい」
なんとなく呼んでみた。誰かいるんじゃないかって。異世界的な夢なんじゃないかってね。
まぁ、予想通り誰も答えない。そりゃそうだよね。
「...呼んだ?」
小学生くらいの少女がひょこり。あらまぁ不思議。誰かいるみたい。
「なんとなく呼んでみたんだ。ごめんね、誰かは分かんないけど」
そう言い放って目を閉じた。
...?
まだ夢から覚めないや。醒めないや。
暇だからまた話しかけてみる。夢から覚めるまで話してようかな。
「ねぇ」
「なに?」
「ここってどこなの?いや、夢ってのは分かるんだけどね。どんな夢かって詳しくさ」
「夢だけど、これから現実になるよ。貴方が貫かれてくれて、そして契約してくれたらね」
「ははっ、なにそれ。やっぱ夢じゃんか」
「じゃあ、無理矢理でも貫かれてもらおうか。空禰燐」
わぁ、名前まで知ってるなんてね。ま、所詮夢だから。
「...貫かれてもらう?」
「そう。人間である恥を知ってもらわないとだよね。さ、準備はいい?」
「え」
その瞬間、何かが私の心を貫いた。
全てが理解できた。なぜか。
人間である恥、人間じゃない喜び。
この世界の全て。
全てのことが理解できて、もう嫌だと思い始めた。
全てが。
全てが。
全部、
全てが。
嫌嫌嫌嫌嫌嫌、嫌だ。
この世界は嫌なことしかない。
そうだ、破壊魔だらけ。破壊魔人間だらけの嫌な世界。
こんなの嫌、嫌嫌嫌嫌嫌嫌、嫌だ。
「どう?ねぇ、こっちにくれはそんな世界にいなくていいんだよ。こっちにくれば貴方は人間に天罰を下す存在になって、人間じゃなくなるの。破壊魔人間ばっかりいる世界なんて、こっちにきて天罰下して殺して壊しちゃえばいいんだよ。ねぇ」
こっちにくれば、この世界とお別れできるの?
ははっ、うまい話。でも今じゃもう信じられる。
だってもう嫌なんだもの。
「いいよ。壊す壊す壊す壊す。壊すよ。」
「いいじゃんいいじゃん。いいね。じゃ、私の手をとって。すぐ連れて行ってあげるからね。
貴方の二つ名は「貫かれ天使」でいいよね?貫かれて理解しちゃった天使さん。ね」
少女の手をとった。
ああ、ああああ。
ああ、あああああ。
人間なんてやってらんない。
私は貫かれ天使、空禰燐。
心の血、頂戴?
―「空禰燐、貫かれて理解しちゃったね。全てを。
貴方が生きてたら今頃、ヒトの心、壊してたかもね。こっちに来てよかったじゃん。」
少女はニヒリと笑い、また狂い者を連れて行こうとするのだった。