十幕「次の狂い者、だーれだ」
愛されなかった甚振られ少女、麻己のおはなし。
―「さぁて。次の狂い者で、十人目、か。」
「へぇ、すごいね。記念すべき十人目って、誰かなァ」
「かなり狂った奴でェ、めっちゃくちゃ狂ったヒトがいいねェ! ♪」
「十人目になったら、なんかするのぉー?」
「するんじゃない? するんじゃない? いいんじゃなィ?」
ガヤガヤザワザワ、クルイモノクルイモノ。
ザクザクザクザク、クルイモノサワギ。ワイワイガヤガヤ、ザワザワクルイモノ。
騒ぐ狂い者と、十人目の狂い者。
今回はそんなおはなしだ。
―さてさて、改めて。皆さんご一緒に。
記 念 す べ き 十 人 目 の 狂 い 者 は だ ぁ れ ?
―私を満たしてくれるものが、大好き。
―二次元が。
―愛されて、甚振られて。
―嗚呼、悼み。
―狂い果てた私を、ねぇ、愛して...
―現実なんて嫌いで。
―空想の人間に、愛してもらいたくて。
―現実なんてただ殺しに来るだけの馬鹿な世界でしょ?
―私は完璧じゃなかった。
―だから、殺されようとされてた。
―全部嫌で、空想がいいの。
―二次元が。
―居場所が亡くて。
―現実に甚振られても。
―愛されたくて。本気で恋をした世界に愛して欲しくて。
―完璧じゃなくても許してくれるその世界。
―痛くても悼くても傷くても。
―耐えて絶えて堪えて。
―そして、愛されるんだ。
―嗚呼、連れていかれたい。
―二次元に。
―嗚呼、嗚呼、嗚呼、嗚呼。嗚呼。
―もっと幸せになりたくて。
―誰でもいい。
私 を 連 れ て 行 っ て
こ ん な 殺 し に 来 る 世 界 、い ら な い 。
ね ぇ 、 誰 か
―「二次元?愛されたい?...同じだね、其波麻己。こっちにくれば、そんなの簡単。
貴方の好きな物だらけ、ついでに自分を殺そうとした奴だって壊せちゃう。」
―壊せる?好きなものだらけ?
嗚呼、祝福?
「祝福、なの? 本当?」
「そりゃそうさ。私が本気で恋した二次元の者だっているんだし。
壊せたり、逆襲出来たり。なんでもできちゃうんだ」
―ならば。
「だったら、連れていって…」
「あぁ、勿論。じゃあ、二つ名は「空想愛狂姫」でね。
ほら、手をとって」
その子の手をとった。
「ほら、見えてきたでしょ? ほら、そこに、貴方の愛すあの人が。」
嗚呼、神々しくて狂おしいほどに愛しかったあの人。
すぐそこに、いる。
不思議でたまらないのに、嬉しくて、嬉しくて。
もう痛い思いはしなくていい。
私は愛しいあの人に愛されながら、壊すの。
壊し殺すの!




