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探偵、開業! その1

五峰尾北いつみねおきた探偵事務所』

 都会とも田舎とも言えない町にある、雑居ビル3階。

 今日、ようやく僕の探偵事務所はオープンする。

 浮き立つ気持ちを抑えつつ、営業開始前の最終確認。

 窓際には大人の背丈程ある観葉植物のパキラ、小洒落た木組みの照明、イス、テーブル、その他諸々。

 内装よし。

 電話、パソコン、プリンタ、点検済み。

 機械類よし。

 印刷用紙よし。

 お茶よし。

 そして表に出て・・・。

『人探し、身辺調査など広く対応致します。

 相談料は無料となっておりますので、まずは気軽にご相談ください。

 電話番号 ××-××××-××××

 五峰尾北探偵事務所』

 ・・・看板よし。

 空気はカラッと乾き、空は快晴、今日は開業日和だ。

 チラシも配った。

 準備は万端だ。

「さて、それでは・・・」

 五峰尾北探偵事務所、営業開始!




 ・・・そして時刻は午後3時を回った。

 営業開始9時から何もないまま、6時間が経過した。

 電話の一本も来やしない。

 時計の音が耳につく。

 人が来ないのは、ある程度は覚悟していた事だが、それでもかなり堪える。

 なんせ、この密閉された空間にずっと1人きりだ。

 あまりにも寂しい。

 何か生き物でも飼えば、この寂しさも紛れるだろうか・・・。

 そういえば、このパキラも生き物っちゃあ生き物だな・・・。

 ・・・・・・。




「パキラちゃん、お客さんが来ないよう。このままずっと二人っきりかなー」

 不思議な話だが、ひとたび喋ってみると、このパキラちゃん(観葉植物)が段々可愛く見えてくるのだ。

「そうだ、今度もっと良い肥料買ってきてあげるよ。奮発しちゃうぞ!あ、お客さんが来ないから自分の食費すら危ないんだ、アッハッハッハッハ」

 ああ、何かだんだん楽しきなってきたぞ。

「パキラちゃん、僕、君が好きになったかもしれない。ああ、違う。もう好きだ!いいや!大好きだ!大好きだよ!パキ」

 瞬間、ドアノブを回す音が聞こえた。

 僕はパキラちゃんの幹から手を放し、後ろに飛んだ。




 お客さんが入ってきて目にしたのは、パソコンに向かって一生懸命何かを打ち込んでいる僕だった。

 この時僕はパソコンのデスクトップ画面を見ながらこう思った。

 この建物、防音とかその辺、どうなっているんだろうか、と。




 画面から顔を上げると、僕と同じ20代後半くらいだろうか、若い女性が何とも言えない表情で立っていた。

 お互いに無言で会釈し、向こうが察してくれた様子を確認したところで仕切り直す事にした。

「探偵業務のご依頼ですか」

「はい。人を探して頂きたいんですけど・・・」




 お茶を出して話を聞くと、この女性の名は真久辺緋紗那まくべひさなさんと言い、父の吉充よしみつさんを探してほしいとの事だった。

「なるほど。お父様の現住所はご存知ですか」

「あ、すみません。勘違いさせてしまったようですけど・・・。父は先日亡くなりまして」

 亡くなった。

 亡くなった?

 ほう・・・。

 死んでる。

 頑張って理解しようとしているが、これが中々・・・。

「えー、なんですか。すると・・・、遺体が行方不明という事ですか」

「いえ、そうじゃなくて。何と言いますか・・・、その・・・、霊でして」

 霊。

 幽霊。

 ははーん、なるほど。

 駄目だ、理解が追い付かない。

「ちょ、ちょっとすみません。一から順を追って説明してもらえませんか」




 ・・・早い話、こういう事らしい。

 先日、急に病死した父が葬式の後、枕元に表れて「お前が結婚しないと、俺はここら一帯で幽霊騒動を起こし続ける」と言って消えた。

 なんでも、父のお墨付きの男性とのお見合いが近くあるらしいのだが、その前に父が亡くなってしまい、それが未練で幽霊になったのではないか、という事だ。

 緋紗那さんは結婚する気はなく父を説得したいのだが、どこにいるのか分からないので探してほしい、というのが今回の依頼だ。

 そして、幽霊騒動は既に始まっているようで近所でも何度か起きていると聞いていて、なるべく早くお願いしたい、との事だった。




ふむ、これで大体の事情は把握できた。




「ちょ~っと、うちでは無理ですかね~」




 To be continued...

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