念願叶った元の姿は……。
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さっきよりも悪化したカオスな状況を止める人はいない。最後の砦である黒さんまで混ざってしまったから思わずネタ名で呼んでしまった。それほど今の私は取り乱している。
なんか黒さん含めた方々まで『フィーネリーネリア様、フィーネリーネリア様』と祈りの言葉みたいに人の名前呼んでいるんですが何ですかこの阿鼻叫喚図。
はっきり言って関わりたくない。
心の底から本当に関わりたくないが、説明してくれる人が一人もいない現状。うん、話せる状態にもっていくしかない。覚悟を決め一番近くにいた黒さんに話し掛けようとしたが、相手が両膝を付いているので見下ろしてしまう。さすがにこの体勢での会話はありえないだろうとかがんで覗き込み話かける。
「あの……くr…じゃなかった。ロシェさん」
「フィ、フィーネリーネリア様!それは私のことでしょうか?」
あ、わなわなと震えているのは勝手に省略してしまったことを怒っているんでしょうか。ここは素直に謝罪するしかありませんね。
「すみません。お名前を噛んでしまいそうで勝手に略してしまいました。そうですよね。嫌ですよね。噛まないように頑張ります」
「いえ、ぜひ略した呼び方でお願いします」
「え?いや、でも「略した呼び方がいいんです!どうかロシェとお呼びください!!」
かぶせ気味に真剣な表情で詰め寄られれば、こちらの返事なんてイエス以外ありませんよね。
「わかりました。ロシェさん」
苦笑して答えただけなのに胸元を押さえ「ぐふぅっ」と変な声上げるロシェさんこと黒さん。
触れてもいないのに何にダメージを負ったのかその表情は苦しそうである。もしかして持病を患っているのかもしれないという考えに至り心配し尋ねてみたら、至極真面目に「萌えただけです。お気になさらず」と返ってきた。「燃えただけ?」意味がわからず聞き間違えたのだろうと首を傾げるとまたもや変な声を上げている。
なんか冷静沈着の腹黒という印象だったのにこれでは黒さんと命名した愛称に相応しくないではないか。
仕方がない。『通常、黒さん。時々、黒さん。』と心のメモに訂正しておいた。
「フィー、そんな男と話していないでお兄様のところにおいで!そして近くでその懐かしい姿を目に焼き付かせてくれ!!」
回復したらしいおにまは笑顔で手を差し伸べてくるが正直近寄りたくない。ジト目で見ていればまたしても泣きながら祈りのポーズをしだした。これでは話が進まないではないか。
ここが魔法の世界だったら鏡が思っただけで出てきてくれたりするのかな。いいな~。全身が見える鏡欲しいな~。
「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
長いため息を吐き俯いた瞬間、どこから現れたのか足元を写した鏡が宙に浮いていた。
驚きつつも徐々に目線を上げていくと服装がおにま達のギリシャ風とは異なっていることに驚く。色は同じなのに何故か仙女が着ているような漢服を身に纏っている。
まとめようよ世界観!異世界の世界観!!と内心突っ込んだのは当然だと思うが、それ以上に突っ込むべきことは口にでていた。
「顔!顔、同じ!?」
鏡に写るのは日本に住んでいた頃、毎朝見ていた黒目黒髪の自分の顔。彫りも深くないいたって平凡な顔。ザ・日本人の顔だった。
死ぬ時と違うことといえば生前より十歳くらい若返っているという点だろうか。
頭上で纏められた黒髪は綺麗に整われ、その姿はまさしく天女らしかった。顔を抜かせば。
自分でいうのもなんだが、黒目黒髪美人が同じ格好をしていたならば天女という言葉がぴったりだと思う。だが、これはコスプレではないか?衣装体験ではないか?いや、ノーメイクという点からコスプレと言ってはレイヤーさん方に失礼ではなかろうか。じゃ、これは何なんだ?私は一体――――脳内パニックで自分でも何を思っているのかよくわからない状態だ。
しかし、これだけは言い切れる。元の姿に戻ったはずなのに前世と顔が同じというのがおかしい。
「顔!顔、同じ!!」
とりあえず大事なことなので二回言っておくことにした。
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