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女子校  作者: 荒川 真夏
プロローグ
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プロローグ

 何気なく開いた某有名SNS。友達ユーザーの投稿が大量に画面に広がった。


―京都に同期と旅行に来ました!京料理食べたよ。修学旅行ぶりの京都で楽しかったな(#^.^#)

―会社の飲み会!今日は花金なんだから、酔っても文句言われないよね!?

―はあ、夜勤明けで辛い!でも、これを乗り越えたら彼氏とデートが待ってるよ!


どの投稿も幸せで溢れていた。そう、女の子らしい幸せ。私の友達ユーザーは基本的に女の子が多い。というのも、私は中学校から大学まで女の子しかいない世界で過ごしてきたからだ。『秘密の花園』とか、周りからは言われたあの時代。キラキラと輝く青春は、女の子だけの世界だった。

そんな私も気づいたら、24歳とアラサー一歩手前。恋愛とは程遠く、一般企業のOLをしている。普通のごく普通の女子だ。毎日同じ時間の電車に乗って、ぎゅうぎゅう詰めにされた電車で痴漢にあわないよう(そもそも、私の体を触りたいと思う男がいるかどうか分からない)会社を目指す。会社に到着したらそれはそれで、事務作業だのお茶出しだのを熟しつつ、禿げた上司に嫌味を言われながら仕事をする。そう、普通の女子。『女子校出身』とかいう肩書はなんの意味を持たない事をしみじみと感じる。

今だって、帰宅途中の電車の中で友人と私の中で分類された人々の投稿を見て、心の奥深くで暗くなる。彼女達のような楽しそうな投稿をする為の『ネタ』を私は持ち合わせていないから。「もう見るのやめよう」と思い、ページを閉じようとした時、ふと見つけたある投稿。写真も一緒に添付されていたその投稿には、私のきらびやかな女子校生活の中で『一番大切にしたい思い出』と『一番忘れたい過去』の両方を語るには欠かせない人物が幸せそうに笑っていた。


ー結婚しました。沢山の友人がお祝いしてくれました。私、とても幸せです。


あぁ、見なければよかった。そう後悔した時にはもう遅くて。彼女が真っ白なウエディングドレスを着て、『友人達』という人々に囲まれて笑っている写真が目に入ってしまった。もちろん、そこに『私』という存在はいない。

悲しいわけではない。悔しいわけでもない。別に彼女の言う『友人』というグループに入れてもらえなかった事が、彼女の結婚式に呼ばれなかった事が心に引っかかるわけでもない。

ただ、ただ切なくなったのだ。私の『青春』のど真ん中に居座っている彼女が結婚して、人妻になった事が。もう、あの頃のような感情を彼女に抱いているわけでもないのに、なぜか切なくなったのだ。

「・・・最悪。」

独り言は車両の生暖かい空気に溶けていった。

あの頃は輝いていたのに、大人になった今は。

こんな日は、コンビニにでも寄ってアルコールを買おう。やけ酒だ。

心に空いてしまったこの穴をふさぐ方法は、大人になったからこそ学べた事だ。そういう点、大人になった事に感謝したい。

最寄りの駅で降りて、改札を通りふと見上げた空には、あの頃と変わらない満月が輝いていた。

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