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ナイン・LIVES  作者: TNO
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プロローグ3 ようこそバシリアへ

 外の景色が目に入った瞬間、あまりにも衝撃的な有様に私は言葉を失った。

 ここで一体何があったんだ、殆どが瓦礫の山と化しているじゃないか。


 私が見渡せる限り、建物は殆どが崩れ落ちているか、半壊状態で放置されている。そこそこの人口が住めそうな規模だが、人気がまるで感じられない。


 そして代わりとでも言うかのように目立つ存在、赤い錆のような粉末がありとあらゆる場所に散りばめられている。

 自分の足元を見ても、やはり少量ながらも錆のような跡がある。この状況からただの錆ではないのは明らかだ。


 得体の知れないもには触れないのが一番と判断し、足元に気を配りながら消毒室から外界へ踏み出そうとする。


 数歩進むと背後からピシャリと、消毒室の扉が閉まる音がした。

 振り返ってみるとまるでそこにはまるで最初から扉が無かったかのようにコンクリートの壁がある。もう一度入れるか扉の前に立ってみたが、特に反応は無く引き返せないことを示していた。


 軽く不安の溜息を吐き、自分が出てきた建物の正面へと回り込み、見上げる。この建物もやはり例外ではなく、半壊状態である。地下施設があった壁とは反対側の側面がごっそりと崩れており、子供用玩具の家みたいに中の様子が外から綺麗に伺える。地下施設の入り口の方は特別頑丈に作られているのだろう、表面は少し削られて下にある金属の部分が見えているが問題なく建物を支えていた。その一面は二階までへと伸びていて家の一角だけが無事な状態で残っていた。そして幸いあの赤い粉末は家の中まで入り込んでいないようだ。

 家の一階はキッチンとリビングで構成されていて、二階は恐らく寝室複数のだったのだろう。建物が半崩壊状態でなければ、一家族が中々快適に暮らせる広さだったのではないだろうか?


 とりあえずキッチンがある以上は食料もどこかに残っているかもしれない。街の人が見当たらない以上、まずはこれから生きていくために必要最低限の食料は確保しておいた方が良いだろう。


 ……キャットフードじゃなくても問題はないよな?


 多少の不安を感じながら軽い足取りで壁の瓦礫を飛び越え、リビングの奥にあるキッチンへと向かう。


 椅子を台にしてカウンターに飛び乗り、器具の状態を確認する。冷蔵庫、ガスコンロ、そして水道が綺麗に傷一つなく残っていた。まず初めに期待が持てる冷蔵庫の中身を確認しようした……が猫の体ではとても開けられたものではない。

 そもそも電気が健在とは思えないので中身はほぼ確実に危険な状態になっているだろうと判断し、今回は冷蔵庫は後回しにした。因みに、冷蔵庫は表面が金属製だったので自分の姿が確認できた。体は大きめな全身黒い普通の家庭猫だが、尻尾は二つに分かれていた。

 二本の尻尾以外は特に特出する特徴が見当たらない。体の毛は闇のように黒く、とても良く艶が出ている。目の色はレモンのように黄色く、黒い体のせいでより目の色が一際はっきりと見える。しかしこうして見ていると、我ながら中々格好の良い猫だと思う、フフン。


 ……一人で自分の姿を自画自賛するのも悲しくなるので探索を続る。


 幾つかの棚や引き出しは幸い崩れた衝撃の為か、歪んで開いていた。


 中身を確認し終えた収穫は、


 お菓子五個、携帯食料十本、 持ち運べる用にボトルに入った水八本、そして袋に入った瓶の蓋多数。


 瓶の蓋はゴミとしか思えないが、丁寧に入っていたので何か意味があるのかもしれないので気に留めておく。


 その他飲食物は避難時の基本的な備えなので、しっかりと揃っているのは珍しいが不自然なものではない。敢えて言うとしたら、大半が無事な状態で保管されていたことだろうか。そして袋に入った物は兎も角、ボトルに入った水は恐らく簡単には開かないだろう。

 幾つかは袋が破けて散らばっていたが、三秒ルールどころの話ではないので、まだ食べていない。


 保存食なので問題はないと思うが。




 よし、食料も確認できたことだし次は二階の寝室も探索してみるか。


 食料を見つけてとりあえず飢える心配がなくなったので二階への階段を探し、発見したが。崩壊していた。

 困った。せめて頑丈な壁に囲まれている寝室だけでも調べたいのだが登る方法が無い。何かないかと辺りを見渡すが瓦礫と崩壊してる壁ばかりでそう都合よく梯子などが立て掛かっていたりしない。


 いや、登れるかも。


 まだ完全に自覚がない為失念していたが、猫の体ならば十分半壊状態の壁を崩さず登って二階へ行けるのでは?

 思い立ったが吉日とばかりに私は細く脆くなってしまった階段の壁を軽い足取りで登り、無事二階へたどり着いた。


 心の中で軽く自分を良くやったと褒めながら、私は寝室の廊下を見渡した。


 部屋は三つ、内二つは右側にありほぼ壊滅的で屋根が崩れ落ちていた。中にはふかふかのベッドが瓦礫の下敷きになっていて、床も一部破損しているので入るのは少々危険だ。崩壊しかけている寝室は外から見える限り特に目ぼしい物はない。


 さて崩壊している物は通り過ぎ、肝心の左側にある三つ目の寝室へと向かう。

 他の木製扉の寝室とは違い、ここの扉だけ金属製だ。しかも他の部屋より明らかに大きい。ここだけ明らかに場違いな雰囲気が満載だ。


 しかし、どうやって入る?


 私が扉の前で考えを巡らせていると扉から緑の光線が放たれ、私の体を上から下へと当たる。そして一往復すると、機械染みた音声が語りかけてきた。


 『お帰りなさいませ、ノワール様』


 発せられた言葉を頭が理解する前に扉は開き、またもや消毒用の小部屋が現れる。二回目のこともあって私は特に躊躇せずに入り、消毒の光と飛沫を浴びながらこの先にあるかもしれない危険に軽く身構える。




 数分にも満たない消毒時間が終了し、奥の扉が開いた。


 そこに待ち構えていたのは……。


 不安な顔で胸元にウサギのぬいぐるみを抱える、真っ青な瞳を持った銀髪の少女だった。

これでとりあえずプロローグは終了。

ノーヴェンはそこそこのイケメン猫でした。

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