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PhantomEden (ファントムエデン)  作者: 神薙シュウ
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ep1-1 再起動(restart)


「おいおい…、実弾で一撃ッてことは…」

「また”死神(シューター)”だよぃ…」

「なんでだよっ!普通部屋のカメラの情報は10分から15分の差があるんだろ!?」


すべての部屋のカメラの情報は警察が管理しているが、危険因子を感知するまでには通常、ルーチェが言った様に時間がかかる。

だからこそ、コウは余裕を持ってユミトに準備をさせたのだ。

しかし、コウが連絡をするために外に出た時点で、周りを包囲されていた。


どうにか、同じ戦闘員であるファルカ・ファウストとリーダーのルーチェ・カイルペインに連絡をとり、合流したものの、その隙に新たな仲間になるはずだった少年、ユミトとその母親はこの街ではあまりに珍しい”実弾”によって心臓を食い千切られ、絶命していた。


「こんな子どもを殺すのに”死神(シューター)”を使ったのかよぃ…。あいつら、何考えてんだ…」


死神(シューター)”、それは秘密警察(メビウス)の中で、最も恐れられている存在だ。

警察長に最も近い立場で、秘密警察(メビウス)の敵を淡々と殺しているらしい。


らしい、と言うのは、

誰もその姿を見たものがいないのだ。

少なくとも生きた人間は。

名前どころか性別すら不明な上、

見たものは全員物言わぬ遺体になっている。


「まァ…信じがたいが、間違いないだろうなァ…。コンだけ正確に左胸を狙えるはそうそういない。ましてやレーザー銃とは違って、距離が伸びると弾が下に下がる実弾銃でできるバケモンだ。マネしようッたッてできるもんじゃないでしょう…。つか、これで模倣犯なら俺はとうに死んでるよ」


強引に突破をしたせいで血が滲む左足を庇い、壁に寄りかかるコウは、口調こそいつもと変わらぬ余裕を醸し出しているが、心なしか悔しそうな声。


「とにかく、その情報が漏れてたなら、今だって向こうに情報を与えてる、ひとまずアジトに…」


戻るぞっ!とルーチェが言おうとした瞬間、建物全体がグワンと揺れた。


「なっ、なんだよぃ!?」


慌てて窓に駆け寄るファウスト、

その服をつかみ後ろに引っ張るコウ。


当たり前のようにバランスを後ろにくずし、

文句を言おうとしたファウストの目の前をレーザーが通り過ぎる。


「あ…、危なかったよぃ…」


冷や汗をながすファウストを見ながら、

コウはルーチェに指示を仰ぐ。


「…とにかくこの建物の中から脱出、スラムまで逃げて奴らを撒く。一緒にいると的になるから、それぞれ各自で脱出。合流はいつもの店だ。できる限り」

「殺すな。でしょ?まァ、任せなさいや」

「だよぃ!」


二人の反応にルーチェが頷くと、

散開…!の号令と共に3つの影が動き出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


躊躇いなく2階の開いた窓から外へと身を投げ出したコウは、その大柄な身体からは想像できないしなやかさでクルリと空中で姿勢を変える。

スタリ、と着地する頃にはその腕や足は氷を纏い、周りの空気はひやりと冷たくコウを包む。


周りを取り囲みながら、しかし警戒して一定の距離以上には近づかない警察たちをコートのポケットに手を入れダルそうに見回しながら、ひとまずは説得にかかる。


「あァー、とりあえず…、ほら、アンタ達も

こんな一般人のいる場所で戦って巻き込むのイヤでしょう?」


だからさ…辞めない?

左足痛いし、メンドイし。


と、とりあえずは言ってみるものの、警戒が解かれるわけもなくジリジリと距離を詰める警察に対して、

コウはため息を一つつく。


「だよなァ。…やりますか」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ファルカ・ファウストはコウとルーチェが飛び出していくのを見送ると、部屋の窓を全て閉め、そのまま部屋に居座る。


手元には身長よりも長い剛槍を突き立て、部屋の真ん中に立っている彼は、武器からして広い場所の方が相性がいいように見えるが、実際のところ、能力自体は閉鎖空間の方が相性がいいのだ。


バタバタと階段を荒々しく駆けあがってくるに向かってファウストは声をかけるが、

誰も意識もせず聞いていない。


容赦もなく扉を突き破り、入ってきた彼等が見たものは、灼熱の溶岩の床と、絶対零度の氷柱の生えた天井、そしてその部屋の真ん中に立ち、片足で地面をトントンと蹴りながら

にやりと笑う優男の姿だった。


「ずいぶんと大人数が来たもんだよぃ。

ようこそ(welcome)、おれの世界へ(to Utopia)」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


コウとは反対側に飛び出したルーチェは、飛び降り際に背中に挿した太刀を抜き、峰で相手を気絶させながら着地する。


反対側から聞こえる

何かが凍りつくような凄まじい音と、

頭上の部屋から聞こえる悲鳴をBGM代わりに、走り出したルーチェは楽しそうに笑うと、太刀を背中の鞘に仕舞い、

周りをとり囲む警察を見渡し、構える。


一気にたたみかける様に迫る相手を、いなし、投げ、肩や腕を折るが、一人として死者を出さない。

ルーチェの戦う術はこの世界ではごく一部のみが細々と繋いでいる道術、と呼ばれるものだ。


近距離でしか使えないが力加減が他の武器よりもしやすく、その分相手を殺すことも少なくなる。


とはいえ、

「奴には近づくな!遠距離武器と能力で叩け!」


「デスヨネー!」


遠距離武器や、それに類する能力を使われるとこちらには手を出す手段がない。

道術も背に背負っている太刀も近距離では絶大な威力を発揮するが、まさか太刀を相手に投げるわけにもいかない。


「まっ、そのための能力だけどな!」


そう言うルーチェは自ら進んで警察の方に走りよると、その真ん中で叫ぶ。


「不可侵領域っ!(ボイドフィールド)」


その言葉を聞いた途端、警察の顔が強張る。

なぜなら彼等が使用していた能力や銃器が声を聞いた瞬間から全ての機能を停止してしまったからだ。


不可侵領域(ボイドフィールド)

これはルーチェに与えられた能力。

その声を聞いた途端、

能力者は能力を使用出来なくなり、銃器や光線剣は機能を停止する。

マキナだった頃にはピンポイントに

当てられるほどの精密さや無限の時間制限を持っていたが、

プリウムになった時に能力は退化、

現在は無差別に効き、時間も短い時間しか作

用しない。


とはいえ、近距離を主軸におき、そもそも逃げる事を優先するルーチェにとってはとても使い勝手のいい能力だ。


「くそっ…どうなっている…」

「能力だけじゃない、光線剣(レイソード)の刃もダメだ…」


武器も能力も使えない事に戸惑う警察の横を

ルーチェはいとも容易くする抜けていく。

一度の跳躍で、群れになっていた警察を飛び越え、壁を蹴った二度目の跳躍で、数階建ての建物の上に到着した。


「どういう事だ…、

奴はブースターを付けていない…!

何故あんな跳躍が出来る…!?」


確かに二回と跳躍で、

屋根まで登り切る事は可能だ。

しかし、それはブースターを付け、

なおかつかなりの訓練を積んだものならばである。


しかし肝心のブースターはルーチェ自身の能力によって機能しないし、そもそもルーチェはブースターを付けている様子がない。


追いつく術だけでなく、追撃する術をも奪われた警察はただ犯罪者(ルーチェ)を見つめる他ない。


ルーチェは自分の居場所に攻撃が来ないのを確認すると、


「悪いな!人待たせてるんで、バイバーイ!」


と、軽快に手を振って、そのまま屋根を走り抜けカメラの射程外になるスラム街へと姿を消してしまった。



どうもこんにちは、暑いですね。

1章が始まりようやく、主人公達の登場です。

そして誰も姿を知らない死神も…。

また、それぞれの能力もチラリと出てきましたが、

3人の能力、理解していただけたでしょうか?


ルーチェとコウは分かりやすいですが、ファウストは分かりにくいかもしれませんね。

とはいえ、いずれしっかりと描写しますので、それまでしばしご辛抱を\(^o^)/


それでは、また次回お会いしましょう!

神薙シュウ

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