第七話 ある事情で、俺は男の真意を知った
ある事情で、俺は男の真意を知った。
ミスコランドでの暴動を一瞬で片付け、俺とナミナは暴動者三十名を城に連れてきていた。
「離せ! 離せよ!」
リーダー格の男が叫んでいる。
ああ、うるさいな。
「ナミナ。そこの窓から放り出せ」
「何!?」
「ラジャー」
「待て待て! 助けて――――!!」
まったく、死にたいのか生きたいのか、どっちなんだこいつは。
「お前たちがなんであんなことをしたのかは、至極どうでもいいが聞かせろ」
男を見ずして俺は言う。
男は黙りを通そうとしたが、再び窓から落とそうとしたらあっさりとゲロった。
「お、俺たちの街は見ての通り美しい街だ」
「ああ、そうだな」
俺も正直あそこまで綺麗な街は見たことがない。
だが、
「それがどうした?」
俺の返事はきっぱりと相手を切り捨てる。
「な……お、俺たちは街のために頑張ったんだ! なのに、なのにこの城のやつらは俺たちを見捨てた!」
見捨てた?
「どういうことだ?」
「税金を増やし、今でも苦しい生活を一層苦しくさせられたんだ! それも、男だけだ! 男は普通の二倍の税金を払わなければならなくなった! これで、我慢できるか!!」
最後の方は涙声だった。
そうか。確かにそれは忙しそうだ。
しかしな。
「お前らは間違ってるよ」
「お、おおお、お前に何がわかる!!」
「わからないな。自分の街が好きだと言ったのに、自分の街を汚す奴らのことなんて」
「な、なに?」
俺は言葉を続ける。
「悔しかったろう、憎かっただろう。だがな、それをお前の好きな街でするのは間違ってる。それは、お前の街を侮辱している事と同じだ。やるなら、この城にやれ。お前らが本当に憎いのは街じゃない。そんなことを決めた、この城、だろ?」
俺の言葉に男は唖然とする。
俺は無表情で先に進む。
もし、立場が逆転していたなら俺はその制度に耐えられないだろう。
だが、俺はそれを街のせいになんてしない。どこまでも調べ尽くしてきっと、この城に来るだろう。
決して、俺は好きな街で暴動なんて起しはしない。
「お、お前はどっち側なんだよ」
男がふと訪ねる。
「ん? そうだな。言うならば、正義の味方だな。俺はどっち側なんて決めちゃいない。いつだって、中心である俺を起点として動いている。誰にも振り回されず、誰にも干渉せず、ただひたすらに自分がそうだと思った道を突き進む。それだけだ」
俺の言葉が意外だったのか、男は少し驚いたような感づいていたような顔をしている。
ナミナはというと、最初から最後まで訳のわからないといった顔だった。
そんな話をしていると、カレンがいる部屋についた。
「さあ、こっからは一人だ。お前がどうやろうと知ったこっちゃあないが、自分だけは突き通せ、もし仮にその先が死だったとしても、突き通せばそれは正義だ」
ドアを開き、罪人を部屋へと通す。
通り際、ポツリと声が聞こえた。
「もっと早く、あんたに会いたかったよ」
「間違いだと思ったなら正せばいい。正義だと思うなら突き通せばいい。どっちにしろ、誰にも正解なんてわからない」
だからこそ、この言葉をこの男に言いたかった。
部屋のドアが完全に閉まり、廊下は不気味なくらい静まり返る。
「なあ、省吾」
「なんだよ」
「あいつは結局、いいやつなのか?」
「さぁな。俺にはそんなことを決める権限なんてないから、どうとも言えん」
「そうか。だが、いいやつだったらいいな。あいつはなんというか、英雄の匂いがする」
流石ドラゴン。天敵の匂いは覚えているのか。
「さてな。俺にはよくわからん」
それだけ言い、俺は振り返る。
「何処へ行くんだ?」
「何か匂う。この事件の裏に何かあるかもしれない」
あの男の早くお前に会いたかった、これは誰かにあの暴動を促された可能性がある。
そもそも、この世界では男より女の方が強い。そんなことはわかりきっているのに暴動なんて起こそうと思うのだろうか。
否だ。ならば、暴動を引き起こした黒幕がいるはずだ。
それはきっと、女よりも強くて、男を簡単に信じ込ませられるような奴。
例えば、ドラゴンのような存在……とかな。