第六話 ある街で、俺は初めて勇者らしく振舞った
ある街で、俺は初めて勇者らしく振舞った。
憲兵から言い渡された事。
それはこの街に波乱を生んだ。
「それはどこですか」
「はい。南のミスコランドです! 先ほど、連絡が入りまして、現在三十人ほどの男子が占拠しているとのことです!」
そう言って、憲兵が俺を見る。
そして、何も言わず睨みつける。
まあ、俺も男子だ。悪く思われるのはしょうがないだろう。
「そうですか……。省吾様、あなたならどうしますか?」
カレンがなぜか俺に聞いてくる。
「姫様! 男子にこの件をどうにかできるとは――」
「黙りなさい! この方はこれでも勇者です!」
おい。それはフォローになってないぞ?
ナミナはこのやりとりを聞いて爆笑している。
ったく。こいつらは馬鹿なのか?
「……状況にもよる。まずはその街に行くぞ」
「……ッ! 馬鹿か! 姫様を殺す気か!」
「なら、着いてこさせなけれなばいい。俺は男だから捕虜にはなるだろうしな」
俺は簡単に切り落とし、話を進める。
「行きます。私も行きます」
カレンは必死に言う。
だが、
「で、ですが! 男子というのは獣で――」
「省吾様はそんな方ではありませんでした! ほかの男子も話をすればきっと――」
ホント馬鹿だ。こいつら、男子のことを全く考えてない。
「ダメだ。行くのは俺とナミナ。この二人だけだ」
それだけ言い、俺は窓へと足を運ぶ。
「なぜですか!」
「お前が来たところで何もできないだろ。なら、俺とナミナだけでいい。安心しろ、お前の国は取り敢えず勇者な俺が何とかするから」
窓を開け払い。ナミナを落とす。
「へ……ふわぁぁぁああああ!!」
地上五百メートル。そこをナミナが落ちていく。
だが、あいつはドラゴンだ。
ナミナの体が硬いウロコを得、翼が生え、大空を飛び回る。
「ナミナ~ 俺を乗せろ~」
言って、俺は大空にダイブする。
空を漂う俺はドラゴンとなったナミナに拾われ、南の街ミスコランドへと向かった。
「へぇ~。ここがミスコランドか」
青くきれいな水が流れ、木々も綺麗に咲いている。
空気もきれいで美味しい。
だが、その街の中に煙が上がっている場所があった。
「あそこか」
街の中心。大きな噴水があったところだ。
「ナミナ。ここで下ろせ。お前も人間になって、ついてこい」
俺たちは煙が上がっているところから少し遠いところに降り、歩いて向かうことにする。
「なんで、飛んでいかないんじゃ?」
「見つかった場合。相手が人質を殺す危険性があるからだ」
俺は淡々と語り、足を進める。
十分ほど歩くと噴水があるところに着いた。
「なるほど、見回りはなし。完全に行き詰ってると見た。リーダー格に問題ありって感じか」
一目見てそれだけの情報を得られて俺は再び考える。
が、答えは出そうにないので正面突破することにした。
「おい。これはどういう状態だ?」
我ながら緊張感の欠片もないと思う。
だが、相手は同じ男、なら……
「き、貴様! 誰だ!!」
大丈夫……でもなさそうだ。
「安心しろ、俺はお前たちには危害を加える」
「どこに安心しろと!?」
武器を持った男子が驚く。
「まあ、なんだ。お前のリーダーのところに連れていけ。ドラゴンに食べられたくなかったら」
俺はドラゴン化したナミナを見せつけ、脅しをかけた。
「どうすればいい。なんで姫は出てこないんだ! ここの街の人たちが大切じゃないのか?」
噴水のところで男が考え込んでいる。
どうやら、こいつがリーダーで間違いなさそうだな。
「おい。お前がリーダーでいいんだよな?」
俺が話しかけると、男は少し驚いた顔をしてから、
「だ、誰だテメェ!!」
と、武器を向けてくる。
こいつらは馬鹿か。話し合いというものをなんで最初から放棄するんだ。
「俺はカレン、姫の代わりに来た者だ。で? どうしてこうなったんだ?」
俺の問いかけに誰も返事をしない。
みんな、俺を敵対視している。
「なんで、男が城につけてるんだよ。お前は一体誰なんだよ!!」
「俺か? 俺は霧凪省吾だ。カレンにこの世界に呼ばれてやってきた勇者さんですよっと。そちらは?」
俺の返事に敵は一歩後ずさる。
「ゆ、勇者だと? ふざけるな! ひ、姫が禁じてを使ったのか? なんで勇者降臨の儀をしたんだ!」
なんか、わけのわからないことを言ってるなぁ。
「まあいい。取り敢えず、お前らみんな、拘束な」
「ふ、ふざけるな! こ、こっちには人質が――」
途中で言葉を止めたのは人質がみんないなくなっていたからだろう。
なにせ、俺が逃がしたんだ。しょうがない。
「な、なんで……」
「お前らの言い分は後で聞いてやる。とにかく、お痛したやつらはみんなドラゴンの餌食でいいよな?」
そう言って、またも俺はナミナで脅す。
ホント、こいつが味方でやることが進む進む。
こうして、盗賊事件は城へと場所を移したのだった。