第三話 ある瞬間、俺はどうやら死刑されるようだ
ある瞬間、俺はどうやら死刑されるようだ
騎士たちに捕まった俺とダ・カーポは壇上に上げられていた。
「貴様、何故謝らないのだ。謝れば貴様の命だけは助けられるだろう?」
ダ・カーポが変なことを聞いてくる。
「あ? そんなの死んでもゴメンだね。パートナーを見捨てて生きるなんて主人公じゃない」
まあ、主人公になんてなる気はいっさらないんだけどな。
しかし、どうしようか。
このまま行けば死はま逃れないだろう。かと言ってさっきダ・カーポが言ったセリフを実現するのは物語が進行しないし……。
「さあ、反逆者よ。貴様は何故ドラゴンを使役して我々を襲うのだ!」
変なおっさんが俺たちに何かを問いている。
さて、最初の選択肢とでも言うべきか。
どちらにしても、選択をミスったら死ぬな。
「お前たちは少しばかり勘違いをしているらしいな。俺はドラゴンを使役してお前たちを襲ってなんかいない」
俺は平然とした口調で言う。
さあ、どう返ってくる?
「嘘を言うな! ドラゴンを使って姫様の場所を聞いていたじゃないか!」
そうきたか。
なら、
「だから、それが勘違いだと言っている。俺は一度もドラゴンを使って人を脅してなんていない。みんなドラゴンを見て襲われると勘違いして教えただけだ」
嘘ではない。
俺は一度だって――
「嘘だ! そいつは私にドラゴンに殺されたくなかったら姫様の場所を吐けと言われたんだ!」
一度だって……言ってないよな?
俺はロボのような動きでダ・カーポを見る。
ダ・カーポはやれやれと頭を振っていた。
マジか。言ってた? 言った! 言ったよ。てか、よく見たらあの人牢屋で寝てた憲兵じゃん。
「貴様! 我々に嘘を言ったな!」
メンドくせぇ状況になっている気がするのは俺だけだろうか。
「貴様みたいな男がいるから世界が汚くなるんだ! 分をわきまえろ!」
と、大人の女性が叫んでいる。
ああ、そうかもしれないな。
「これだから男は不潔なのよ!」
と、叫ぶ声。
なるほど、ここにいる女性たちはみんな男子が嫌いなんだな?
と、分析していると隣から紐が擦り切れるような音が上がる。
見るとダ・カーポがドラゴン化しかかっていた。
「おい、ダ・カーポ。落ち着け」
「これが落ち着いていられるか! 主人を馬鹿にされているんだぞ!」
ほほう。こいつは俺のために怒っているのか。嬉しいねぇ。
「俺をそこまで溺愛してたとは、会ってまだ十二時間三十四分五十四秒だぞ?」
「うるさい! 溺愛などしてないわ!」
「冗談は置いておいて、頭は冷えたか?」
「……」
ダ・カーポは少しムスっとした顔でそっぽを向いてしまった。
よし、頭は冷えたようだな。
「さて、ここから打開するには……」
「貴様、まだそんなことを考えていたのか」
当たり前だ。このまま引き下がったら男の名折れだ。
考えろ。この状況下でも道は残されているはずだ。決定的な道が。
「……お前ら」
「クッ、男が話すでない!」
「ドラゴンを使役した初めての人間を殺すのか? せっかくのドラゴンを何もせずに殺すのか?」
「な、なに?」
よし、ヒットした。
「こうは考えられないか? ドラゴンを使役した人間を使役すればどんな勢力にだって勝てると」
俺は熱演兼言い訳を始めた。
「無論、ただで使役させるわけには行かない。まず、姫様に合わせてもらおうか」
「な、なぜだ!」
この動揺っぷりはもしや、
「別にいいだろう? だって、これは姫様が決めた死刑なのだから」
「だだだ、ダメだ!」
ヒットだ。
これで俺の仮定に補強がついた。
こいつらは姫に内緒でこの死刑をしている。
「どうしてだ? ほら、みんなの前で言ってみろよ」
たぶんだが、このことはこの女騎士の独壇場で出来上がった死刑だ。つまり、他に人物は知りえない事実。
「く、クソが! さっさと死刑を執行しろ!」
女騎士が叫ぶ。
同時にダ・カーポも動き出そうとするが俺が静止させる。
「よせ、お前が動いたら負の連鎖だ。ここは耐えろ」
「だが、このままではお前が悪者だ!」
俺はため息を漏らす。
別にいいんだよ。時間は稼いだし。
「何をしているのですか? こんな夜遅くに勇者様を壇上に縛り上げて」
そこには姫様が少しばかり怒った風な声色で現れる。
「ひ、姫様!」
女騎士は驚いたように体を震わせ地面に膝をつく。
「まさか、この状況を見越していたのか?」
ダ・カーポが今更な質問をしてくる。
「ん? ああ、見越してたより信じてたって方が強いな。リアルは俺を裏切らないってな」
「……やはり、貴様馬鹿だろう? まあ、そんなところも面白くていいのだが」
そう言ってダ・カーポが笑っている。
俺は安否のため息を着くとやがて縛られていたロープが切られて体が自由になる。
「さて、お姫様。俺の質問にちゃんと答えてもらうぞ?」
「……はい。私もそれを覚悟で来ました」
よし、気合は十分だな。
「だが、まず風呂に入りたい。風呂場を教えてくれ」
牢屋から外に出されて埃まみれ、泥まみれになった体はとてつもなく居心地が悪い。
と、姫様もそれを感づいたのか顔を赤らめ小さな声で言う。
「は、はい。メイドのものについて行かせます……」
そして、俺とドラゴン、姫様の物語はゆっくりと進んでいく。