第二十三話 ある事件の、意外な犯人
ある事件の、意外な犯人
今日は町の事件の真相を調べるべく、城からカレン、ナミナ、ヴリトラその他多くの兵士が送り込まれた。
その中に、俺も含まれている。
だが、俺にはやらなくちゃいけないことがあった。
そのためには、まず、カレンの思いに答えなくてはいけなかった。
それも、最悪の答えを。
それに戸惑って、俺は話を切り出せないでいると、
「省吾様? どうかなさいましたか?」
何も知らないカレンは俺に普通に話しかけてくる。
俺は涼しい顔でカレンを見る。
可愛らしい容姿、透き通るような声。
こんなにも可愛く、儚けで、それでいて大きな野望を持っている少女。
これは、カレンのためだ。
俺はそう割り切って、話を切り出そうとすると、
「おう、勇者じゃねぇか」
最悪のタイミングで笑顔の青年が現れた。
アガレスだ。
「お、おう。久しぶりだな」
俺は言葉につまりながらも返事をする。
「ああ、ホントだな。そういやぁ、あの勇者モドキはどうなったんだ?」
「あの駄勇者な牢屋だ」
頼む、消えてくれ。
そう願いながら俺は笑顔で会話を続ける。
「そうか、まあ、あれだけの騒ぎをすればそうはなるわな」
だが、アガレスはそんなことお構いなしに話を続ける。
「では、私は演説の方に行ってきます」
そんなことをしていると、カレンは演説のため席を外してしまった。
クソッ、なんでこういう時ばかり冷静にならないんだ。
俺は腹の中で怒りを蓄積しながらアガレスをみる。
すると、
「なあ、こっからはマジな話だけどさ」
アガレスの顔がいつになく真面目な顔つきになった。
俺もそれに反応していつもの顔に戻る。
「お前、なにか重大なことを起こそうとしてないか?」
ギクリっと肩が震えそうになる。
だが、俺はまるで動じないと言いたげな顔でアガレスを見て、
「重大ってどういうことだ?」
「いや、そこまではわからねぇよ。だけどさ、今日のお前を見てるとなんかさ……ああもう! 訳分かんねぇよ!! とにかくだ! 自分は大切にしろよ!! いいな!?」
……すまん。その願いは叶えられそうにないな。
俺はいつものようにすかしたような笑顔を見せてから、
「ああ、善処するよ」
そう言った。
言って、俺はその場を後にする。
いいんだ。どうせ俺は――。
ゆっくりと、街の中心に近づいていく。
それと同時にカレンの演説の声が大きくなる。
『皆さん! 今こそ協力してこの事件を解決するのです!』
カレンは今日も街の守り神、姫をしている。
俺は、そんなカレンを見て、微笑む。
あいつなら大丈夫だ。あいつなら一人でも、もう十分道を歩いていける。
短いあいだだった。本当に短かった。
だが、これでお別れだ。
俺は演説台に近づいていき、カレンのマイクを奪って観衆の視線の注目を浴びる。
「省吾様!? な、何をするんですか!」
「すまん。少しだけ貸してくれ」
俺は観衆たちの方を向き、一回深呼吸する。
そして、
「今回の事件、食べ物が無くなることだが……犯人は俺なんだ」
二ヤッと笑って、罪の告白をしたのだった。
クライマックスまで残り二話!!