第二十一話 ある街の、困り事
街の、困り事
今朝は城の中が騒がしくて目が覚めた。
傭兵たちが皆揃って慌ただしく走り回っている。
そんな情景をあくびをしながら見ていると、その中に見知った顔が通った。
「カレン」
「は、はい!?」
そう、この国の姫である、カレンだ。
俺はカレンを呼び止め、事情を聞き出そうとしたのだが、
「省吾様!? す、すみません! 今はお話はできないんです!」
それだけ言って、カレンはどこかに行ってしまった。
それ程までに忙しいのだろうか?
いや、むしろ避けられている?
だが、なぜ?
……なるほど、そういうことか。
心当たりならある。いや、ありまくりだ。
その中でも特に避けられる理由は、こないだの告白だろう。
しかし、どうして避けているのか。その理由の中身まではわからなかった。
答えを返さなかいから?
言ったはいいけど、今更恥ずかしくなったから?
考えれば考えるほど仮定はできるが、こんなことに頭脳を使ってもしょうがないだろう。
俺は手短な兵士に話を聞き出すことにした。
俺なりに要約すると、街で多大な盗難が起こっているらしい。
盗まれるものは一貫して同じもの、食べ物だ。
しかも、肉ものが多いらしい。
そこで俺は、まさかとは思うがヴリトラじゃないかと全力で思った。
だが、それでは話が合いすぎて面白くないので無視するとして、新たな仮定を模索する。
新手の嫌がらせか、もしくは盗賊だろうか?
いや、そんなことをすれば捕まることは目に見えている。
カレン率いる王族には俺が飼い慣らしているドラゴンが二匹もいるんだぞ?
何が悲しくて最強のドラゴンとタイマンしなくちゃいけないんだ。
なので、この仮定もボツだ。
だが、そうなれば誰がやったのだろうか。
俺は顎に手を当てて考え始める。
「なになにぃ? 省吾、また考え事?」
と、そこに問題のヴリトラが現れた。
「なあ、お前は最後にいつ肉を食った?」
「えぇ!? そ、そんなの覚えていないよ!」
「よし、盗難犯はお前で決まりだ」
「なんで!?」
いや、そんなにあからさまに誤魔化されては困る。
気づくなというのが無理な相談だ。
「俺は悲しいぞ。まさか、お前が犯人だったなんて」
「待って! 私、なにも盗んでないよ!」
「いいんだ。お前はまだ子供だから、わからないこともあるだろう。だがな、お前がやったことは罪なんだ」
「待てって言ってるでしょ! 私は本当に何もしてないの!」
「分かってる。からかっただけだ」
「~~~~~~~っ!!」
子供のように地団駄を踏み荒らしながらヴリトラが怒りを表している。
俺は再び考えを巡らす。
思い当たる節はない。
情報が足りなさすぎる。
俺は思考を止めて、違う視点から再び考えることにした。
盗まれたものは食べ物。
つまり、その盗人は相当腹が減っているか、何かの事情で食べ物を集めなくてはいけないということだ。
しかも、人目に映ってはいけないという条件付きで。
この条件を満たすのはなにも人間だけとは限らない。
ほかの生き物でもこれはありうる可能性。
しかし、相手は相当な頭脳の持ち主のようだ。
なぜなら、この王族たちを欺くくらいだ。
一切の痕跡を残していないのだろうが、完璧はこの世界にはないのだ。
どこかに、何かを置いているはず。見落としている点が確かにあるはずだ。
俺は膨らむ想像を一つずつ潰すため、事件現場に足を運ぶのであった。
何故か、省吾がどSになってしまっている……