閑話
今回は無駄話です!
人生に生きる意味はない。
その人がこれまで生きた証こそが生きた証だと言う者がいる。
だが、それは本当にそうだろうか。
かの天才、アインシュタインでさえこう言った。
『一見して人生には何の意味もない。 しかし一つの意味もないということはあり得ない』
だが、俺はこうは思わない。
なぜなら、それでは異世界に飛ばされたことが説明できないからだ。
元いた世界から出れば、俺は自然とその世界で死んだということになる。
そうなれば、俺は生きた証とやらを残すには残せたが、残し尽くしたかと聞かれればそうでもなかった。
人生に意味がなければ、俺がこの世界に呼ばれたことが説明がつく。
それはなぜか。
そんなものは簡単だ、俺は自分のいた世界に嫌気が差していたからだ。
いつまでも同じことを繰り返して、新しいものを作って、みんなからお前は天才だと言われるのが嫌だからだ。
つまりだ、俺が言いたいのは、人生には生きる意味も、生まれた意味さえもない。ただ、自動的にそこに生まれただけだ。
俺には女がいるからとか、来週のゲームがあるからとか、そんなことで生きる意味を言う輩がいるが、それは存在証明のためだ。
人間というものは俺が見てきた限りでは、そうやって自分という個人の存在を表明し、他の人達に存在を確実にしなければ生きていけない。
だが、存在証明=生きる意味とはならないだろう。
存在が確実だとしても、その人そのものがダメであれば周りからは邪険にされる。
そこで、人が創り出した言葉はコミュニケーションだ。
周りに合わせて、自分は我慢しろという命令語だ。
それでは本末転倒という事さえも分からずに、人達は皆揃ってポーカーフェイスだ。
俺から言わせれば、馬鹿としか言いようがない。
自分を縛ってまで、どうして人と一緒にいたがる?
自由に生きたいとは思わないのかね。
「まあ、こんな考えだから、俺にはあの世界は苦しかったんだろうな」
「さて、前フリが長かったんじゃないか?」
ナミナが怒ったように腰に手を当てて言う。
俺は肩を竦めて言った。
「俺がたどり着いた結論は、世界にとっての邪魔者を異世界に飛ばしたということなんだがな」
その邪魔者というのはもちろん俺だ。
俺みたいなひねくれものはいたらそれなりの歴史に関与してしまうだろう。
だから、俺を弾き出した。
まあ、これが本当なら俺の立てたもう一つの仮説も立証されるんだけどな。
俺が立てたもう一つの仮説とは、世界は最初から決められた方向に進んでいるということだ。
例えば、地球がいずれなくなる事や、太陽がなくなること、それらは最初から決められていたことでそれが当たり前ということだ。
簡単に言えば、世界というゲームがあって、存在する全てのものというプログラムが組まれていて、それがまるでプレイされているような感じだ。
俺は、そのゲームの一種のバグだったのかもしれない、ということだ。
一つのプログラムがゲームそのものを変えてはいけない。
否、変えることはできない。どうしても一部は残ってしまう。
だが、俺はどうやら修正できないくらいのバグだったらしい。何せ、異世界に飛ばされるくらいだからな。
世界というのは理不尽だ。
勝手な押しつけを無理やりやらせやがる。
拒否しようが逃げようが、運命というものは、人生というものは何からも逃げさせてはくれない。
だからこそ、戦う? ふざけるな。
一度でも逃げようとした奴を否定するつもりは全くない。
いや、俺にはできない。なんたって俺だって逃げたからだ。そして、逃げ切った。
だから、俺からいうことはただ一つ。
逃げようとした奴は逃げ続けろ。逃げて逃げて逃げて、逃げまくれ。嫌なことをしたところで得るものなんて何もない。なら、逃げて、自分がしたいことをすればいい。
逃げたら弱いと、誰が決めた? 逃げたら臆病者だと、誰が決めた?
逃げられないやつこそが弱い。逃げられないものこそが臆病者なんだ。
逃げる勇気すらないやつに、差し伸べる手は何もない。
世界に適して、普通に生きて、普通に死んで、何が楽しい?
自分を曲げたまで生きて、何が楽しい?
わがままに生きろ。融通の利かない世界なんて張り倒せ。
自分が貫き通したものこそが正義だ。
世界を変えるためのバグに、なりたいとは思わないか?
まあ、こんな考えだから、
「勇者に選ばれたのかもな」
「何を言っているのじゃ。ほれ、行くぞ」
そう言って、ナミナは俺の手を引く。
そう、つまりだ。
俺が本当に言いたいのは……。
「なんで俺がお前たちの買い物に付き合わなくちゃいけないんだ?」
ということである。
いやぁ、まさか最後のセリフを言わせたかったから書いたなんて誰にも言えな――(あ……