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やる気のない召喚勇者  作者: 七詩のなめ
第二章 二人の勇者の分岐点
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第十五話 ある勇者と、最強のドラゴンと

ナミナパートから省吾パートに移行!!

ある勇者と、最強のドラゴンと


「のぅ、省吾」

ドアから声が聞こえた。

それは聞き慣れた声で、俺の最初のパートナーの声だった。

「……なんだ?」

俺はワンテンポ遅れて返事を返す。

「省吾、お主はまだわからんのか?」

そんなことを言ってくる。

何が、わからないんだ?

言っちゃなんだが俺はコイツより世間を理解しているつもりだ。

「省吾はヴリトラのことを悔やんでなどいない。そうだな?」

「ああ、あいつはあんなことで死にはしないからな。そのことに関して、俺は何も思っちゃいない」

当たり前だ。

俺はあいつが死ぬなんて思考は皆無だ。

あいつにはまだやってもらわなきゃいけないことがある。

その前に死なれちゃ困るんだよ。

「省吾は卍廼というやつを倒す方法を探して、見つからないんだろう?」

「よくわかったな。少しは勉強したのか?」

「やはりお主、我を馬鹿にしているだろう?」

オット、これはまずいことをした。

バレないようにするのが楽しいのに。

「まあ、よい。そんな事より、気づかぬのか? お主はとうの昔にやつに勝つ方法を持っているのだぞ?」

……なんだ、それは?

俺はあいつに勝つ方法を持っている?

そんなはずはない。

俺は、俺が持っている駒は全てあいつには通用しない。

この状況でどうやって勝つって言うんだ?

「まだ、分からぬようじゃな。お前の大嫌いな、信じるという感情じゃよ」

信じる?

そんな不確かなものがやつに叶うとでも言うのか?

「ありえない」

俺は気づけば言っていた。

そうだ。ありえない。

人を信じる?

信じてどうする。

何を考えているかわからない奴らのことを信じてどうするって言うんだ。

俺はそれで、痛い目に遭っているっていうのに。

「省吾の世界では確かにそうだったかもしれない。じゃが、今は違う世界じゃ。お主には新たなこみゅにてぃーができ、新たな関係ができたのじゃろう?」

横文字が苦手なのは変わらなかったが、なるほど確かにそうかもしれない。

だが、話はそこじゃない。

「無理だ。俺は信じることはできない」

「それが我だとしてもか?」

「……たぶんな」

「そうか」

ナミナは少し悲しそうな声色で言う。

ドアを挟んで俺たちの会話は途切れる。

俺は誰も信用してない。

信用をしたところで、俺に利はないからだ。

裏切られて、そこでおしまいだ。

一度、そういう経験をしたからよくわかる。

俺は、人を信用することができない。

「まだ、迷っているのか?」

ふと、ナミナの声色が変わった。

怒りに満ちている。

この怒りは俺に向けたものじゃないことはすぐにわかった。

「我は悔しいのだ。同胞を傷つけられ、それに何もできなかった我が」

怒りは悔しさに変わり、涙がにじむ。

悔しい。

そうか、他の人はそうなるのか。

しかし、俺はそうじゃない。

何も感じない。

いつだって冷静というのは、裏を返せば無感情なのだ。

「お主にはわからないだろうな」

「ああ」

「お主は何も感じないだろうな」

「ああ」

「お主はこのままでいいと思っているのか!!」

「……」

いいとは思わない。

だが、どうしようもない。

俺には力はない。

だから……。

「お前は、俺を信用できるのか?」

俺はベットに寝ながら問う。

出来るわけない。

悲しみをわかってやれない人を信用なんて、

「信用? ふん、何を今更」

信用なんて、するわけが、

「するに決まっているだろうが!」

な、に?

信用するのか、こんな俺を?

「我はお主の、省吾のパートナーじゃ! それくらいできなくてどうする!!」

たったそれだけで?

そんな理由で信用するのか?

会って間もない、二人。

利用されていたと知ったばかりなのに。

理解さえされてないのに。

それでも、信用できるって言うのか?

「我は馬鹿じゃ! お主みたいに斜め上みたいな考えはできん! じゃが、お主より強い! 我を使え、それで勝ってみよ。理解など求めぬ。利用されてもかまわぬ。我はお前について行くときめたのじゃ! だから、信用するし、理解などしてやらん」

こいつはまた……褒めたいのか、馬鹿にしたいのか。どっちなんだ?

だけどまあ……面白い。

「ククク、クハハハ!!」

「やっと、わろうたの」

「ああ、そうだな」

やっと、笑えた。

俺の世界は息苦しいばかりだった。

毎日が朽ちて行く世界だった。

だけど、ここは違う。俺を信用してくれるやつがいる。

俺が、信用できるやつがいる。

なら、この世界は俺に適応しているのではないか?

そう思えた。

人生はいつだって振り返れない。

振り返ったつもりで、実は振り返ってなどいない。

人は皆、いつだって前を向いて、あるいは下を向いて歩いている。

立ち止まることは許されない。

振り返ることも許されてなどいない。

なら、仕方ない。

前を向いて歩こうか。

俺とナミナを挟んでいたドアが今、開かれようとされていた。

躊躇いなどしない。

一度でだって猶予なんて与えない。

俺は、前を進む。

ドアを開け放ち、一日ぶりのナミナを見る。

「さて、何から謝ろうか」

「ふん。本気で謝る気か?」

「まあ、ありえないだろうけどな」

ドヤ顔の俺に、ナミナはため息を着き、

「やっと、いつもの省吾になったか」

「いやいや、俺はいつだって霧凪省吾ですよ。立ち止れると勘違いしただけだ。安心しろ、卍廼は俺たちで倒すぞ。俺の駒を総動員してな」

俺は歩き出した。

今度は前をちゃんと向いて。

全ての人を信用することはまだできない。

けど、このおバカなドラゴンなら、あるいは……

次回、勇者たちの戦い……?

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