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破滅  作者: 桂歌桂
3/4

異変

深夜、のどの渇きを覚え目が覚めた。

なんとなく炭酸飲料が飲みたくなったが、冷蔵庫にその類の物はない。

妻を起こさないように注意深くジャージに着替え、小銭入れと鍵とタバコを持って外にでる。

マンション一階の自動販売機にそれなりの品ぞろえはあるが、500mlのペットボトルの炭酸飲料はない。

徒歩5分程度のところにあるコンビニに行く事にした。

タバコに火をつけのんびりと歩く。

途中の自動車販売会社の角を曲がったところでいきなり警察官に声を掛けられた。

物腰は柔らかく、申し訳なさそうな口調ではあるが、こんな時間にどこへ行くのか、自宅はどこかと質問をしてくる。

まったく臆する事はないのだが、やはり警察官に夜中にいきなり声を掛けられるのは気持ちのいいものではない。

寝起きと言う事もあり、少々不機嫌そうな受け答えになっていたようで、警察官も「何か身分の証明できるようなものを出してください」をきっぱりと言った。

小銭入れ、タバコ、鍵しか持っていない事を伝えると、いい大人が・・・と小ばかにするような態度。

最初の物腰の柔らかさはどこへやら。やはり権力者と勘違いをしている若いお巡りさんなどこんなものか。

基本的に話をしているのは20代後半の警察官。少し後ろで相槌を打ちながら半笑いで見ているのが40代~5代の警察官。

なんとなくその態度が気に入らない俺は、「いったいなんなんですか。夜中にのどが渇いたから近所のコンビニにジュースを買いに行くのに、いちいち免許証や保険証を持たなきゃいけないんですか」と語気を荒めて言った。

すると若い方の警察官が「何もやましい所が無ければ、こんなことで怒ることはないでしょう」と。

「職務質問に不機嫌になっているんじゃなくて、あんたたちの態度が頭くるから腹が立ってんでしょうが。いったい何がしたいの?何が知りたいの?どうしたら何を納得するの?」と少々芝居がかってはいるがキレたふりをしてみる。

「なんならこれから署に行きますか」

・・・なんだそれ。あきれてものも言えない。

職務質問自体は悪い事ではない。しかしそれ自体が何もやましい事が無く、何も問題ない市民にとっては迷惑千万な行為だと気付いているのだろうか。

こんなやつが警察官かと思うと・・・死ねばいいんだ。


死ねばいいんだ

死んじゃえよ

死ね


年長者の警察官が、相変わらずの半笑いでこう言った。

「すいませんね。まだ若いんで正義感に燃えちゃって。もういいですよ」と。


一体なんなんだ。

単に俺を不愉快にさせるだけの職務質問か?


死ねばいいんだ。二人とも。


コンビニに行く気も失せてしまった俺はそのまま自宅マンションに引き返した。


早朝、出勤のため駅まで行く途中の交番に人だかりが。

なにか事件があったようだ。

野次馬は交番を覗きこんでいる。俺も興味本位で覗いてみた。

血のような跡。

交番の中が血の海になっているようだ。


夕方のニュースを見て愕然とした。

昨夜俺を職務質問した警察官の二人の顔写真が写っている。

どうやら、若い方の警察官が年長の警察官を撃ち殺したらしい。

若い警察官はその拳銃で、自分の頭を撃ち抜いての自殺。


ニュースを見る限り速報レベルなので、原因などは何もわからない。


ふと昨夜の職務質問を思い出す。俺、「死ねばいい」って思ったよな。

本当に死んだよ。


驚くと同時に、何か嬉しさがこみ上げてきた。

念じると死ぬ。

念じれば死ぬ。


もしかして・・・。

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