第四話
黒髪の女はいつもの通り、主人がよく好んで飲む紅茶と共に、あの若者に渡した金の鈴をそっとテーブルの上に置いた。
そして、事務報告をするかのようにたんたんと今朝見つかったという若い男の死について話した。
金髪の主人は音を立てずに紅茶をすすりながらその報告を静かに聞いた。
「そうですか、やはり、死は避けられませんでしたか」
「はい」
「残念です」
主人はさして残念だと感じている風には聞こえなかった。彼らの日常に、その若者の死はなんら波音さえも立てる要素はなかったからだ。
黒髪の女はふと疑問に思ったことを尋ねてみた。
「何故、あの男に鈴を渡したのです?」
主人は小さく微笑んだ。そのときようやく黒髪の女は、主人が若者の死を本当に残念に思っていることに気付いた。
「少し、素質があるように感じたのですよ」
「素質ですか?」
「ええ、あの道を見つけることはたやすくはありませんからね。まして、それを許されていない者ならなおのこと、希少だと感じたのです」
主人はそう言って、若者が最期まで握りしめて離さなかったという鈴を手に取り、軽く揺らした。チリンという音が悲しげに鳴り響いた。