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ティダVS両親

「ゲホッ、ゲホッ、急になんだ!」

 眠い目をこすりながら、腹部を押さえて周囲をキョロキョロ見渡すワイダ。そんな彼に、妻のティルルは声を大にして言い放った。

「ヒカルさん、ティダと結婚するんですって!」

「なに! それは本当か! ティダ! 結婚おめでとう!」

 寝起きとは思えないほどの大声で叫んだワイダ。そんな彼に、ティダの凄まじい蹴りが炸裂した。

「結婚しないってば!」

「グハァァッ!」

 ワイダはこめかみを綺麗に蹴り飛ばされ、顔面から壁に突き刺さる。木片が周囲に飛び散り、壁に穴をあけた彼は、そのまま眠りについた。

「グゴゴゴゴゴォ……」

「もう、二度と起きてこないで」

 片足を上げ、いつでももう一撃放てるぞと言いたげな姿勢でティダは言う。どうやら、食器を洗い終えたところらしい。

「お母さんも変なこと言わないで。旅人さんをこれ以上困らせないで」

「もぉ、ティダったらまたそんなこと言って。結婚したくないの?」

「べ、別に結婚したくないってわけじゃないけど。でも、結婚相手くらい私に選ばせてよ。人生でたった一度の大事なことなんだから」

「そうよ、大事なことよ。だからこうして、お父さんもお母さんも相手を必死に探してるんじゃない」

「それが余計なお世話だって言ってるの! 私は私が好きだと思える人と結婚するから。勝手なことしないで!」

「もう、ティダ、それだと心配だから言ってるのよ。私たちに任せて?」

「嫌よ、私もう十四なの。大人なの。自分で決めれることは自分で決めるの!」

「もしかして……」

 ティルルはニヤリと笑みを浮かべて立ち上がり、そっとティダに耳打ちした。

「他に好きな人でも居るの?」

「は?」

 ポカンと口を開けるティダ。

「あら、違ったの? てっきり好きな人が居るから、その人との結婚の邪魔をしないでって言ってるのかと思っちゃった」

「違うわよ! 私はまだ恋とか知らないの! 好きって気持ちが分かるまでは結婚とかしない、それだけ!」

「あらあら、まだ子供だったのね」

「……お母さんのバカ!」

 再び、ティダの凄まじい蹴りが炸裂する。あぁ、今度はお母さんも壁に突き刺さるのか。と思ったが違った。

「まだまだ攻撃が甘いわね」

 ティルルはティダの蹴りを片手でいなすと、優しく微笑んだ。

 そんな二人の間から、新城ウメがひょっこり顔を出す。

「あいえな、ぬーしとるば(なにしてるの)?」

「あ、おばぁ、お風呂上がったんだ」

「やさ」

「風呂上がりにお水飲む?」

 ヒカルが陶器に水を注ぐと、祖母は嬉しそうに彼の傍へ座った。

「だー、いただこうかねぇ」

 ティダは蹴りを放ったままの姿勢で、ヒカルとウメ、そしてティルルに視線を移してから、態勢を元に戻した。

「もぉ! お母さんのバカ! 知らない! 私先にお風呂入って寝るから!」

 十四歳の少女は、母に対して捨て台詞を残すと、そのままお風呂場へ駆けて行った。どこの世界も、母は最強なのかもしれない。

 ティルルはゆっくりと腰を下ろすと、何事もなかったかのようにヒカルと向き直った。

「お見苦しいところを見せてごめんなさいね」

「いえ、とっても仲がいい家族だなって思って、羨ましかったです」

「うふふ、あの子、若い頃の私にそっくりなの」

「お母さん、今も十分お若いですから。姉妹って言っても信じますよ」

「あら、嬉しい。ところで、お婆さんはかなり独特な訛りをしてるけれど、やっぱり遠くからいらしたんですか?」

 ティルルの問いに、祖母はきょとんとする。

「わったーね(私たちですか)? わったーは、うちなぁ――」

「あー。ストップストップ!」

 ヒカルは慌てて祖母を止めた。沖縄方言の何が魔法のトリガーになるのか分からない今、祖母に話をされるのは困る。ヒカルは祖母に代わって答えることにした。なるべく嘘はつかないように。

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