表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/35

33.ありがとう



 間に合わせの隠れ家は十分ほどで完成した。

 大人二人が辛うじて入れる程度の小さな穴。

 作業の途中、頻繁に息を整えていた海吏は、穴を掘り終えると同時に地面に腰を下ろした。


「太陽が真上にある、昼の十二時あたりか」


 手をかざしながら日の光を見つめる。

 眩しそうに目を細めながら空を見上げる采加と、真っ直ぐに太陽を見つめる日咲。


「主、俺ともう一度、会話をしてくれるか?」


 突然の問いに日咲、そして采加も海吏の方を向く。

 海吏は天を仰いだまま話を続けた。


「機人となった俺が感情をうまく出せず、人間らしい会話ができなくなっていることは理解している。でも、主を傷つけたいわけじゃない。俺のせいで主が苦しむなら改善したい、もう一度話をしてくれ」

「会話って……あ、洞窟にいたときの」

「会話もまともに出来ない俺はいらない、と言われた」

「いや、あれは……酷いこと言ってごめんね」

「酷いのは俺だろう? 主は悪くない。俺の最優先プログラムは主の命を守ることだが、必要なら他のことにも手を貸すと言っただろう。主のためになるならば俺は、自身の性格だって改善する」

「海吏……ありがとう」


 微笑む日咲。

 そして二人の様子を見つめていた采加が、日咲の左手を掴んだ。


「私だって、日咲のためなら何だってする」

「采加……」

「その弱い頭で何かを成せるのか? おまえが?」

「弱いのは頭じゃなくて力って言ってるよね!」


 日咲を挟んで口論する采加と海吏。日咲は思わず笑い、二人の手をぎゅっと握った。


「時間の無駄だな、早く隠れて寝てろ」


 海吏に押し込まれ、日咲と采加は身を寄せ合うようにして地下の穴に入り込む。


「そうだ、おまえにも言っておくことがあった」


 天井を封じる前に、ひょこっと顔だけ出した海吏が采加に目をやる。


「な、なに……?」

「囮りというのは勇気がいる。恐怖心もあっただろうに、長時間耐えたことは称賛に値する。なにが言いたいかというとつまり、あの時は助かった、ありがとう」


 捲し立てて喋り、話が終わるとすぐに海吏は天井を塞いだ。


「…………い、今それ言う?」


 顔を真っ赤にした采加が天井を叩く。


「ちょっと、ねぇ! あけて! 言い逃げなんてずるいよ!」


 しかし頭上からは何の反応もなく。

「あははっ」と声を上げて笑う日咲の声が、地下に響いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ