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32.主に対する脅威の排除、完了

 あの時より身体が軽い。自動修復プログラムが機能しているんだろう。

 走りすぎていつショートしてもおかしくないが。

 カチ、カチと鳴る音を無視し、海吏は日本刀の鎬を指で撫でる。


「俺の攻撃が地味だと揶揄していたな。訂正してくれ」


 途端、バチィと火花が散り、日本刀に電流の筋が走り始めた。


「…………え?」

「導電体というより、蓄電器だな。おまえが発した電流を、鎬の中に閉じ込めておいた」

「蓄電……?」

「あとは簡単、刃の中で堰き止めた電流を解放してやればいい。おまえにぶつける形で」


 ほとばしる電気の波を茫然と見つめるレイラ。やがて海吏が空に飛び上がり、日本刀を振り下ろした。


「ちょ……ちょっと待って!」

「まぁ、考えたのは主だがな」


 レイラがレイピアを掲げる。日本刀の刃とレイピアの先端がぶつかったとき、パァンっと火花が散った。

 バチバチィッと激しい音を立て、レイピアを伝ってレイラの身体に電流が流れる。

 叫び声を上げることも出来ず、レイラは身体を痙攣させ地面に膝をついた。

 どさっと、顔面から地面に倒れ込むレイラ。傷は見当たらない、相変わらず綺麗な身体。

 金色の髪がふわりと風に寄れ、身体にそって地面を這った。


「主に対する脅威の排除、完了」


 日本刀を地面に突き刺し、海吏は地面に膝をつく。

 漆黒の刃、未だピリピリと電流が走っていた。

 視線をずらすと、目を開いたまま倒れているレイラがいて、海吏はそっとその瞳を閉じてやる。


「海吏!」


 そうこうしていると、決着がついた事を確信した日咲と采加が駆け寄ってきた。

 海吏は突き刺した日本刀で身体を支えながら、日咲たちの方を向く。


「勝った……勝ったよね?」

「よかった……」


 海吏に合わせて屈み込む日咲と采加。

 それぞれが焦りと安堵の表情を浮かべていた。


「ありがとう、海吏」

「……問題ない。無事でよかった」


 日咲の差し出した右手が海吏の頬を撫でた。

 海吏は身を預け、手のひらの体温を感じる。


「いちおうお礼言っとく、ありがとう」


 ツンとした態度の采加。

 海吏は采加を見上げ、ふっと鼻で笑った。


「おまえの為に何かを成したわけじゃない」

「言い方……」

「まだ日が高い。主たちは何処かに隠れておくべきだ」


 海吏は立ち上がり、日本刀を変形させて黒い手錠に変えた。


「特殊な素材で出来てる、成分を分析分解するには時間がかかるだろう」


 レイラの両手を後ろで組み、手錠で繋ぐ。レイラに動きはないが、背中が上下し呼吸はきちんと出来ているようだった。


「悪いが、あまり動けそうにない。この下に穴を掘る」

「穴?」

「こいつは四十八時間経過しないと目を覚さないだろうし、俺が上で見張るから他の機人に見つかることはない。夜になったら俺を退けて、新しい寝床を探しておいてくれ」

 そう言って地面を掘り出す海吏。

 唖然とその様子を眺めていた日咲と采加だが、しばらくして立ち上がり、海吏の盛った土の山を平らにする作業を始めた。


「何している? 手伝う必要はない」

「必要か不要かじゃなくて、やりたいからやってるの」

「早くしないと別の機人が来ちゃうかもでしょ」

「……助かる」


 あまりにも素直な返答に、日咲と采加は顔を見合わせた。



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