表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/33

16.自称天才プログラマー



 つまり、簡単に言うとこうなる。

 あの時たしかに、海吏は死んだ。しかし海吏の身体にあったある仕掛けのおかげで、彼は再び立ち上がる事が出来た。

 その仕掛けというのが、


 心臓が止まると同時に、身体の細胞を新しいより強靭なものに作り替える。


 というもの。

 より強靭な細胞に作り替えられた結果、機人と同等の能力を手に入れてしまったとのこと。


「あのー、質問いいですか?」


 ランタンを囲い座っていたところへ、采加が手を上げる。

 日咲と海吏は同時に采加に目を向けた。


「首ぶっ飛んでたけど、どうやって復活したんですか?」

「拾って繋げた」

「繋げ……」

「頭を探す作業が一番苦労した、どこにあるのか分からなくて」

「首無しで動いたってこと? 嘘でしょ?  いくら機人でもそんなこと」

「普段なら不可能だが、人間から機人に切り替わるあの時だけはそれが可能だった。そうプログラムされていた」

「……プログラムって便利な言葉ですね。何でもプログラムされていた、それで片付きますね」

「ねぇ海吏、あの時だけって、もしまたあんな事になったら」

「死ぬだろうな」


 素っ気ない返答に日咲は息を飲む。


「機人といっても、能力以外は人間と同じだから、怪我はするし食事も摂る」

「え、じゃあご飯いるの?」

「食べないと餓死するだろうな」

「そっか、じゃあ三人分用意しないとだね」


 両手の拳を握りしめ、気合を入れるポーズを見せる日咲。

 昨晩と別人だ、と思いながら采加はため息をついた。


「で、日咲のことを主って呼んでるのは?」

「さっき説明したはずだが? 俺の守るべき主人とプログラムされているから」

「だから、そのプログラムってなんですか?」

「何って……機人一つ一つに備え付けられてる絶対命令? 使命みたいなものだ」

「使命?」

「機人がなぜ人を襲うかわかるか?」


 日咲と采加は互いの顔を見合わせる。

 二人とも答えは知らなかった。

 構わず、海吏は説明を続ける。


「全ての機人の脳には【プログラム】が付随されている。生きるために必要な絶対条件だ、そのプログラムを守らないと生命を存続させることができない。いま地上にいる機人のプログラムの殆どが、《人間を殺せ》になっている。故に本人の意思とは関係なく、機人は人間を見つけたら殺害行為を始める」

「……そ、んなの初めて聞いたけど」

「私も、地下でそんな事、教わらなかった」

「そりゃそうだろ。機人の思考回路なんて人間が知る由もない」

「え、でも海吏は」

「俺の場合、《人間を殺せ》というプログラムが別のものに書き換えられている。《主である日咲を守れ》と」

「私を、守る?」

「だからそれが俺の使命、生きる術だ。日咲を守ることが俺の生命維持に繋がる」

「……あ、うん、そっか」


 ぱっと、日咲の方から視線を逸らした。それは恐怖からではなく真逆の感情。

 嬉しい、海吏が私のために生きてくれることが嬉しい、と。


「ちょ、ちょっと待って」


 口を挟んだ采加に視線が集まる。


「プログラムを書き換えたって、誰が? ていうか、海吏さんの死と同時に機人になるように仕掛けを施していたって、それ、誰がやったんですか?」

「ミオ姉」

「みおねぇ?」

「……海吏の、お姉さん」


 答えたのは日咲だった。

 明らかな動揺の色を映した瞳が揺れる。


「自称天才プログラマー。本気出したら凄いんだぞって自慢してた。ミオちゃん……海吏のお姉さん」

「プログラマー?」

「機械を弄るのが得意って、よくいろんなもの発明してた。本当にミオちゃんが、海吏をそんな風にしたの?」

「記憶領域にあるデータにはそうなってるな」

「ちょ、ちょっと待って!」


 采加は頭を抱え、二人の話を理解しようとする。しかしどう考えても、そんな事があり得るはずがない。


「それって、海吏さんのお姉さんが、機人を造る技術を有していたってこと?」

「そうなるな」

「簡単に言ってるけど……それって大変なことって、わかってます?」


 おずおずと見上げる采加だが、海吏は何を言っているのかと首を傾げる。


「わかっているが? それに何の問題がある?」

「問題っていうか……だってそんな事、人間の為せる技じゃない」

「なに言ってんだ、機人を造り出したのは人間だろ? 罪人などで人体実験を行い、機械と人間を融合させた機械人間を造り出し、世間に流通させた。それが機人の始まり」

「そんなことは知ってます。それが二十年前、バグを起こして人間を惨殺するように」

「バグ……もともと、人間の生活を助ける為に造られた機人が、人を殺すように」


 確かめるように声を出す日咲の言葉に、海吏が頷いて同調する。


「《家事を手伝え》《荷物を運べ》《自宅の警備をしろ》、もともと備えられていたプログラムが二十年前、一斉に書き換えられた」

「そんなの、誰が……」

「そこまでの情報はない。ただ、それをやったやつはミオ姉を凌ぐ天才だろうな」


 深いため息をつく日咲と海吏。

 会話に入り損ねていた采加は二人を交互に見渡し、やがて窺うように話を切り出した。


「海吏さんのお姉さんは、機人を造る技術を有してたんですか?」

「さぁ? 主、知ってるか?」

「私も知らない。でも、ミオちゃんなら出来るかもしれない、とは思う」

「動物の身体弄ってたもんな」

「弄ってた?」

「飛べない鳥の羽に枝を組み込ませて羽ばたけるようにしたり、前足がない犬に義足つけたり。身体を機械に変えるって行為は頻繁にやっていた」

「人間相手にやってるのは見たことないけど。そういえば、怪我してるクマを助けたこともあったよね」

「あれは驚いた。やめろって思いながら見てた」

「動けるようになった途端、海吏に襲いかかってきたもんね」


 ケラケラと笑う日咲と、無表情で淡々と返す海吏。

 思い出話に花を咲かせる二人を尻目に、采加は頭を抱えた。

 いろいろ……考える事がたくさんあり過ぎて、理解が追いつかない。


「……なんかもう、今日一日でどっと疲れた」


 意識を空に投げ、洞窟の隅にある時計を見た。

 短い針が9を過ぎたところ。

 日落ちまでまだまだ先だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ