14.再会
二人は必死で走り、何とか洞窟の中にたどり着いた。
電気をつけた采加が、日咲を睨む。
「日咲、どうしたの? どうしてすぐ逃げなかったの?」
「……一瞬、顔が見えたの」
日咲は突っ立ったまま、出入り口の穴を見つめていた。
じっと、まるで幽霊でも見たかのような顔で。
「あの白フードの機人、海吏だった」
「……え?」
「海吏と同じ顔してたの」
「同じ顔って、そんなわけ……」
「身長や体格も海吏と同じもので……采加、あれ、海吏だよ」
「な、なにいってるの、日咲。海吏さんじゃないよ。だって海吏さんは」
「わたし、海吏の死体見てない」
歩み進もうとする日咲の腕を、采加は押さえつけるように掴む。
「死んだでしょ、海吏さんは! 日咲も見たでしょ、首が飛んで生きてられる人間なんていない!」
「あれ、本当に海吏だったのかな? 遠くて、見間違えたんじゃないかな?」
虚ろに喋る日咲の頬を、采加が引っ叩いた。
日咲はよろけ、頬を押さえて采加を睨みつける。
「なにする……」
「日咲がそれ言っちゃダメだよ!」
「それって……」
「見たんでしょ、海吏さんの最後を。『ありがとう』って言って笑ってくれたんでしょ? あの海吏さんは偽物なの? 日咲の見た海吏さんは見間違えだったの?」
「……ごめん」
日咲は俯き、拳を握って唇を噛んだ。
「バカなこと言った。……死んだ人間が、機人になるってことは?」
「そんなことあり得るの?」
「いや、ない。お父さんとお母さんが死んだ時、三日後には腐敗して、すぐに骨だけになった」
「…………」
そんなに長いこと死体と暮らしていたのかと思ったが、そのことには触れず采加は日咲の手を握りしめた。
「明日、海吏のとこ行ってもいい?」
「……うん」
「もう機人が処理してるかもしれないけど、ちゃんと葬ってあげたい」
「うん、付いていく。一緒に行くよ、日咲」
手を握りしめたまま微笑むと、日咲も同じように笑みを返した。
「じゃあ今日はもう寝よう」
しかし日咲の肩越しに見えた顔に、采加は顔を強張らせて日咲の身体に覆いかぶさる。何事かと采加の視線の先を追うと、出入り口の穴に人の顔があった。
長い髪の女性型の機人。
なぜ機人と判断が付いたかというと、左目が人間のそれではなく、ビー玉のように透けているものだったから。
互いの身体を抱きしめ、後退する日咲と采加。機人はずりずりと這い、穴から出てこようとする。
逃げ場はない。
洞窟の奥の壁に背をつき、機人の動きを見守るしかなかった。
ギィギィと音を立てる機人の胴体が抜け、あとは下半身だけという段階になったところで、唸り声が鳴った。
恐る恐る目を開けた日咲が見たものは、地面に突っ伏している女の機人と、白いフード。
「…………かいり」
日咲が呟いた言葉に、采加も目を開く。
「海吏、さん?」
二人の目の前には、白フードを被った海吏の姿があった。




