ナツ編-09 フーの日常
フーに『状態の共有』という固有能力があることが判明して以降、フーは積極的に能力を使いこなすようになった。
あいつが言うには、あの高度な分身の術は本来なら魔力もかなり消耗するらしい。高度な身体強化を駆使して初めてできる技なんだが、フーはどうやら共有状態だと魔力消費がほとんどないみたいなんだ。
あいつの『状態の共有』だから、あいつの状態をそのまま写してるってわけだ。···改めてとんでもねぇなぁ~。
客の評判はとてもいい。
『あら〜!このフーちゃんは本物なのかしら~?』
「ごめんね~!ぶんしんなんだよ~!」
『フーちゃん!今日も頑張ってるなぁ~!おじさんがおこづかいあげよう』
「ごめんね~!ママから『ちっぷはいただきません』っていわれてるの〜!そのぶん、ちゅうもんしてね~!」
『フーちゃん!今日も元気ね~!会いに来たわよ~!』
「いつもありがと〜!フーもがんばるよ~!」
『ハァハァ···、ナツたんもいいけど!フーたんもいい!今日はどっちだ!?どっちに握手を求めれば!?ハァハァ···』
「おじさん、またきたの?ちゅうもんしないならかえって〜!ほかのおきゃくさんがまってるし~!」
『はい!喜んで!!今日もフーたんにののしられるカ・イ・カ・ン!最高に幸せぇ~!!ハァハァ···』
···フーにあんまり教育上よろしくない客もいたが、簡単に追い出してしまったな。
ってか、出禁なのになぜ店にいたんだ!?しかも『今日も』って!?予約の時と入口通った時に俺が確認してるんだけど!?何度記憶消してもいつの間にかやって来るんだよ!どうなってんだよ!?
「バッツ?出禁野郎、入口通ったよな?」
「テイクアウトにかかりっきりで知らないですよ?でも入口は1箇所だけですから、通ってるはずですよ?」
「···明日は気をつけよう」
フーが手伝うようになってからは仕事が非常に楽になった。3歳児とはいえ、分身の術で4人になってるから大人2人分以上の働きになっているな。
でも、このままじゃあいけないよなぁ~。外で遊ばないと友だちもできないしなぁ~。テイクアウトやってる時に子どもたちが遊びに出かけるのを見てしまったから、そう思ってしまったんだけどな。
フーは人懐っこい性格だ。すぐに友だち作りそうだよなぁ~。でも、フーは俺たちのどちらの性格でもないんだよなぁ~。まぁ、いいけど。
よし!休日だけ手伝ってもらって、遊びに行かせるか!
「フー、これから店手伝うのは休みの日だけでいいぞ」
「えっ···!?そ、それってフーは、やくにたててないってこと!?」
「違う違う!大助かりだぞ!ただ、子どもはもっと遊んだほうがいい!友だち作って遊んでこい」
「あそぶってどうするの?」
「どうするって···、そういえば俺も遊んだ事なかったな···。お前は?」
「···鍛える事しかしてなかった。···でも、楽しかったよ?···ナツたちではちょっと教えてあげれないね」
「そうなるなぁ〜。とりあえずお前の兄貴のとこに遊びに行かせるか!」
「···そだね。···モンドなら知ってそう」
「よし!さっそく明日遊びに行ってこい」
「はーい!」
翌日。
「モンドく〜ん!あ〜そ〜ぼ〜!」
「おっ!?フーじゃん!おはよう!あそぶったってなにするんだ?」
「しらな〜い!ママとパパがあそんでこいっていってた!」
「そうか!じゃあ、おいかけっこするか!?」
「なにそれ〜?」
「フーがにげておれがおいかける!つかまえたらおれのかちだ!」
「わかったよ〜!じゃあ、どうじょうのしゅうへんだけでいいかな〜?」
「いいぜ!10かぞえたらおいかけるからな!」
「わ〜い!にっげろ〜!」
「1.2.3.4.5.6.7.8.9.10!いっくぞー!」
フーは逃げ出したんだが、ゆっくりと逃げていたんだ。身体強化自体はフーはまだ倍率が低いんだ。
モンドはニヤリ!として、身体強化をかけて一気に追いかけ始めた!
「わ〜!?はやい〜!!」
「パパにきたえられてるからな!まだまだはやくなるぜ!」
「じゃあフーも···、『ほんき』だす!!」
次の瞬間!フーの姿がモンドの前から消えた!
「えっ!?きえた!どこにいった!?」
「こっちだよ!」
「えっ!?うしろ!?いつのまに!?ってそのすがたは!!」
フーはなんとトランス状態に変身したんだ!ちなみにあいつは教えてないし、トランスを見せてないのにだぞ!?
「はぁ、はぁ。ここまでおいで!!」
「ちょっとまて!そのままだとまずいぞ!!」
「どんどんしんどくなってきた···!いまのうちに!はなれる!」
「まて!このままだとたおれるぞ!はやくへんしんをとけ!」
「はぁ、はぁ!へんしん?とくってどうやって?」
「しらずにへんしんしたのか!?だったらおれがとめてやる!うぉおおおお!!」
そう言ってモンドもトランス状態になった!あっという間にフーに追いついて抱きついた!
「フー!ちからをぬけ!きもちをおさえるんだ!」
「はぁっ!はあっ!こ、こうするの?」
「そうだ!···よし!これでへんしんがとけたぞ!」
「な、なんだかつかれちゃった···」
「はぁっ!はあっ!お、おい!?だいじょうぶか!?しっかりしろ!これはまずい!パパのところへつれていこう!」
気を失ってしまったフーを担いで、モンドは道場にいるフユのところへ行ったんだ。
「パパ!フーがトランスしちゃって!たおれちゃった!」
「なんだって!?···うん、大丈夫そうだ。少し休んだらすぐに目を覚ますよ。どうしてこうなったの?」
「おいかけっこしようとしたら『ほんきだす』っていってトランスしちゃったんだ···。ときかたをしらなかったから、おれがおしえたんだけど···」
「そうか···。みんな!自主練していてね。ちょっと席を外すよ!」
「「「「はい!師範!!」」」」
フユはフーを担いでベッドに寝かせてやったあと、ナツにちーむッス!で連絡した。俺が状況を知ったのはこの時だったな。
『···そう。心配かけてごめんね、お兄ちゃん』
「ナツはトランスを教えた?」
『···ううん。···教えてないし見せてもいない。···どうしてできたのかわからない』
「だから解除の仕方がわからなかったのかぁ〜。よければおれが教えておこうか?」
『···そうしてくれる?』
「いいよ!ナツはものすごく忙しいのは知ってるからね!」
『···ありがと、お兄ちゃん。···今度道場の人たちと食べに来て。···ごちそうするよ』
「ムリしなくてもいいけど···。楽しみにしておくよ!」
1時間後、フーは起きてみんなに謝った。次からはこうならないようにフユに教えてもらう!と、フーから言い出したみたいだ。苦笑いしながらもフユは了承したようで、今後は定休日の稽古の他にも遊びついでにいろいろ教えてもらえるようだ。
フーちゃんは分身の術(極み)が状態の共有で使えてしまうので、1人なのに4人分の働きができてしまいます。お店としては頼りになる戦力なんですね。愛想もいいし、すとーかーさんに気付いて追い出したりもしています。このすとーかーさんはなぜか予約担当のヨウくんには予約時と入店時に気づかれていません。気づくのはいつもフーちゃんなんですね~。そこで初めてヨウくんが気づくという状況です。いったい何者なんでしょうね?このモブキャラはね。
そしてフーちゃんの『ほんき』はトランスでした!誰にも教えてもらってないのに覚醒しちゃったんですね~。だから解除方法が知らなかったんです。このあたりは今後フユくんに鍛えてもらえるので安心ですね~。
さて次回予告ですが、フユくん一家と一緒にアクロへ帰省するお話です。なんと!この帰省に合わせてケンくん一家も帰省するため、アキくんとリオくんの家は大騒ぎになります!リナちゃん一家はアクロに住んでますので、近場なんですよ。7人もお子さんがいますからね。
それではお楽しみに~!




