ナツ編-08 子どもが生まれた!!
あいつのおなかに赤ちゃんができちゃったと聞いてから8か月後、無事に赤ちゃんは生まれた!
事前にあいつから聞いていたとおり、生まれてきたのは神狼族だった。しかも女の子だ。あいつの髪の色に俺の緑目だったな。···俺が親になるのかぁ~。なんか実感が湧かないが、こうして赤子を抱いていると、少しそんな気がしてきたな。
ちなみに名前は『フォト』と名付けた。アキさんの世界の言葉で『光』を意味するらしい。明るく輝く元気な子になってほしいって気持ちを込めた名前だ。いいだろ!?
店は妊娠中はテイクアウトのみにした。あいつの仕事量を制限しないといけないし、分身が作る料理は単純なものしか出せないからな。
そして、フォトが生まれたという話はあいつのちーむッスで全員に報告したから、次の日はお祝いラッシュになった!
「ナツ!ヨウくん!おめでとう!これから子育てが大変だと思うけど、何かあったらすぐに相談するんだよ」
「···ナツ、おめでと。元気そうなお子さんで良かったよ」
「···パパ、ママ。ありがと」
「ナツ!おめでとう!フォトちゃん、うちのモンドとも仲良くなってね」
「あうあうあ~!」
ちなみに今しゃべったモンドってのはフユのユキのお子さんだ。神狼族の男の子だな。
あとはリオさん一家も来たな。いきなり大勢やってきたものだから、料理の提供があんまりできずに軽食のみになってしまった。
ちなみに軽食を作ったのはバッツさんだ。このバッツさん、ハルさんとも知り合いだったようだ。
「やあ、ハルちゃん。元気そうだね~。まさかナツちゃんがハルちゃんの娘さんとは思わなかったよ!」
「···そっちは相変わらず軽いね。···ナツの店を手伝ってくれてるようだし、ありがと」
その後にエイルやイピム、デジアもお祝いに来て、極めつけは女王様からもお祝いを頂いてしまったぞ!?さらにはピムエム皇国のパスティー皇帝からもだ!···とんでもない人脈だなぁ~。
ちなみに子育ては本人がやり、分身が調理をしていた。ただ、本人じゃないので味がどうしても落ちてしまうから、メニューは一部制限させてもらったぜ。それでも常連客は満足してくれていて、
『子育てがひと段落するまでの楽しみ!』
『おめでたなんだってな!客の事なんか気にすんな!···俺の胃袋が寂しがってるけど』
『ムリしちゃダメよ!私たちも我慢するからね!』
『ハァハァ···、赤ちゃん背負ってるナツたんもかわいい!ハァハァ···!さぞかしかわいいかわいい〜!赤ちゃんなんだろうなぁ~!触ってみたい!ハァハァ···』
···なぜか記憶を毎度毎度消してる出禁野郎もいたな。俺の技が弱いのか!?いつも最強で記憶消してるんだけどな!
ちなみに裏の仕事は俺とバッツでこなしていたぞ。まぁ、最初みたいな巨悪はそうそうなかったから問題なかったけどな!
そして3年が過ぎた···。
「おまたせしました~!」
「あら〜!今日はフーちゃんが持ってきてくれたわ!ありがとね〜!」
「ごゆっくりどうぞ~!」
店をやってるから、フーは自然と接客技術が身につき、物心ついてからは自分から手伝いを始めた。
『フー』ってのは愛称だ。フォトって言いづらい人が多いようなので、常連客が勝手に『フーちゃん』って呼び始めたんだ。
フォトもフーって呼ばれて喜んでたし、まぁそれでいいけどな。ちなみに真名はフォトじゃなくて、もっと長いからな。
そんなある日の事。この日は王国の休日だったので、テイクアウトにとんでもない人が押し寄せてきた!
どうもシヴ湖で何かイベントがあるらしいな···。そんなのがあるってのは事前に知ってたけど、想定以上の客がやってきてしまった!
その時だ!なんとフーが4人に分身したんだ!そして2人が外でごみ清掃、2人が店内で給仕を始めたんだ!
「おまたせしました~!」
「ちゅうもんありがと~!ちょっとまっててね~!」
「まぁまぁ!フーちゃんが2人!?どうなってるのかしら!?」
「「えへへ~!『ぶんしんのじゅつ』ってママのわざなんだ~!やってみたらできちゃった~!」」
「おぉ~!かわいいフーちゃんが4人になってるのかぁ~!すごいね~!」
「「ありがと~!おじちゃん!」」
いつも以上に愛想を振りまいて常連客をメロメロにしてしまっていたんだ!
「···なんで俺ができない高度な分身の術ができるんだ?」
「これはこれは···。ナツちゃんのお子さんとはいえ、この幼さでナツちゃんレベルの高度の分身の術を難なく駆使できるとは···、将来が楽しみですね~!」
「言いたいことはあるが、この混雑を捌くのが先だな!バッツ!店内はフーに任せよう!テイクアウト手伝ってくれ!」
「それが良さそうですね!3番の番号札の方~!お待たせしました~!」
こうして開店以来、最大級の混雑を乗り切ることができたんだ。フーが分身の術使えてなかったらパンクしてたわ···。
その日の夜。
「···フー?···今、分身の術できる?」
「やってみるね、ママ!ん~···。できないね~。どうしてかなぁ~?」
「···じゃ、ナツが分身の術を使うから、フーもやってごらん?」
「うん!あれっ!?」、「「「「できちゃった!!」」」」
「···なるほど。···そういう事か」
「おい?どういうことだよ?」
「···フーはナツの分身の術を共有したんだよ」
「それって···、神狼族の固有能力ってヤツだよな?」
「···そう。···ナツはお兄ちゃんと『意識の共有』って能力があるし、リナとケンにも共有ができる。···おそらくフーは『状態の共有』ができるんだと思う」
「って事は、俺とお前でステルスになれば?」
「···フーもステルス状態になる。···試しにやってみよう」
そうすると、俺かあいつでステルス状態になったらフーもできたんだ!···これはとんでもない能力だぞ!?
「···フー?···これからちょっとずついろんな魔法や技を覚えていこうか?」
「おもしろそ~!やる~!」
「···剣術はお兄ちゃんに任せるか。···休みの日にモンドと一緒に稽古する?」
「モンドくんと!?それもたのしそ~!」
こうして、フーは店をやってる時は手伝うことで体力を鍛え、夜にはあいつの技を、休みの日はあいつの兄貴の道場で鍛えるという生活を始めることになったんだ。
ナツちゃんとヨウくんのお子さん、フーちゃんが誕生しました!最初はフォトと名付けたものの、本人から『いいにくい~!フーでいいよ~!』って怒られてしまい、フーちゃん呼びになってしまいました···。ちなみにフォトという名の元ネタは時雨沢恵一先生の『キノの旅』で登場する準レギュラーの女性です。夏、陽とくれば明るいよね!ってつけた名前だったのですが、本人には不評でした···。
ちなみにフユくんとユキちゃんのお子さんのモンドくんの元ネタはダイヤモンドダストです。雪にちなんだもので考えた時に、男の子だとモンドかダストだったのですが、モンドはアニメ『六門天外モンコレナイト』の主人公の大矢門斗くんがいたので、モンドにしました。こっちは怒られなかったのでそのままです(笑)!
状態の共有は店員の仕事をする際には非常に有用でした!ただ、これにはデメリットもあるというのがのちに判明します。実は神狼族としてのフーちゃんの潜在能力は歴代最強クラスなんですよ。その理由もこの後で登場します。
さて次回予告ですが、フーちゃんの日常風景をお届けします。幼いうちからバリバリ店員としてお手伝いをしている様を見て、ヨウくんは『子どもは遊んで来い!』と言ってモンドくんのところへ遊びに行かせます。すると、フーちゃんは遊びに対して『ほんき』を出してしまい、大変なことになってしまいます。何をしてしまったんでしょうか?
それではお楽しみに~!




