ナツ編-04 『ハンティング・アイ』オープン!
本日2話目は仕事終わりに六甲アイランドから商船三井さんふらわあ様の『さんふらわあごーるど』に乗船して神戸港沖から投稿しています!これからおいしい料理を食べに行ってきますよ~!
このお話からナツちゃんのお店が本格的に動き出します。ナツちゃんが作る極上の料理を作者も食べてみたいですね~!
プレオープンの翌日。今日が正式な開店日だ。営業時間は今のところ午前11時〜午後8時。ラストオーダーは午後7時だ。週2日は休日にしてある。あいつとオレだけだし、仕入れもあるからな。
あとは裏の仕事だ。こちらはテリーの兄貴がうちを紹介してくれたおかげで情報屋とのコネができた。まぁ、営業時間中にやってくるから常連になってくれるし、こっちとしても大助かりだ。
入口には昨日アキさんとかが持ってきた『祝 開店』と書かれた花の台が飾ってあった。なんでもアキさんがいた世界ではこうする風習があるらしい。
この世界ではそんな事をしないもんだから、思いっきり目立ってるな···。これも作戦か?
慣れない手つきで開店準備をしていたら、あっという間に開店時間となった!
「おい?初日なんだから店の前であいさつでもしておくか?」
「···もち。···パパもやっておいた方がいいって言ってた」
そうして俺とナツが外に出ると···!?とんでもない人数が並んでるぅ~!?
ざっと見た限り50人以上いるぞ!?宣伝すらしてないのになんで!?
「おい···?これは大変だぞ?」
「···腕が鳴るね。···みんなおなかも鳴ってるだろうからさっさと始めるよ」
「···おう。じゃあ、あいさつしろよ」
「···皆さん、ナツのお店『ハンティング・アイ』にようこそ。···心ゆくまで料理を楽しんで。···それでは、開店します!!」
「何名だ?4名なら奥のテーブルで!次は!?2名だな!?手前のテーブルで!1人だったらカウンターだぜ!···悪い!満席なんだ!待ってる間にこの看板見て何を頼むか考えておいてくれ!」
「すいませ〜ん!注文いいですかぁ~?」
「おう!今行くぜ~!」
「こっちも注文頼むよ!」
「こっち終わったら行くぜ~!」
···ヤバい!!俺一人じゃ間に合わないぞ!?分身の術で対応するしかないのか!?厳しすぎるぞ!?
初日の営業が終了した···。俺はクタクタに疲れ切っていた···。
「キツすぎる〜!1人じゃムリダナ〜!」
「···ナツのように分身したらいい」
「それができるなら苦労しねえよ!」
「···じゃあ、やり方を工夫する?」
「工夫って?」
「···オーダーはお客さんに紙に書いてもらうとか?」
「おっ!?それいいな!それだったら俺は紙を回収するだけで済むな!」
「···あとは自分で水を汲んでもらうとか?」
「それもいいな!毎回水を入れるのが大変だったんだよ。···っていうか、なんでそんなアイデアがポンポン出るんだよ?」
「···パパの世界のやり方」
「事前に知ってるならやれよ!?」
「···どうなるか、やってみないとわからないから」
···ウソだな!俺がヒーヒー言うのを待ってたんだろ!?顔がニヤけてるから本音が丸わかりだぞ!
次の日。
「オーダーはテーブルにある紙に書いて渡してくれ!書けなかったら俺が書くからな~!水はテーブルにあるコップに備え付けのビンから注いでくれ!」
昨日よりはマシになったが、それでもキツいぞ!?まだ何か改善案あるだろ!?小出しにしてるな!?
1週間後···。
混雑は悪化の一途だった!最初は物珍しさからお試しで来ていた客が、味と値段に満足してしまい、口コミで勝手に宣伝されてしまったんだよ···。ここって王都からシヴ湖までの散歩道の途中で人通り少ないのになぁ~。
いや、この立地だからこそ、この程度の混雑で済んでるんだろう。それでも最大2時間待ちになるけどな···。
幸いな事に、近くに湖岸沿いの遊歩道があったり東屋があってのんびりできるから、番号札渡しておいて列に立ちっぱなしで並ぶってのは回避できた。···これもアキさんの世界での知恵らしいぜ。まだあるだろ!?
開店から昼のピークが過ぎれば一息つけたが、そんな余裕はなくなってしまった···。里での修行よりもハードなんだけど!?
しかし、あいつはずっと分身の術を展開して平気な顔して黙々と調理してやがった。手が空けば明日の分の仕込みまでしてやがるぞ!?やっぱバケモンだわ···。
「なあ?待ち時間がすごいことになってきたし、早朝から店の前で並んでる常連まで出てきてるぞ?どうするよ?」
「···完全予約制と時間制限付きにするしかないね」
「気軽に来れる飲食店じゃなくなるな」
「···ヘタに店を大きくしたら潰れるって、パパが言ってた。···味や質が落ちたらすぐ潰れるって」
「だろうなぁ~。せっかく常連さんまでできたんだから、今のままを維持するなら制限するしかないな」
「···テイクアウトもやってみようかな?」
「前にそう言ってたな?何だそりゃ?」
「···店の外に持ち帰れるようにする方式」
「おっ!?それなら座席数関係ないな!」
「···ただし、周辺の清掃をこまめにしなきゃいけない」
「は···?関係あるのか?」
「···パパの世界だとポイ捨てが問題になった。···放置してたら苦情が来て評判が悪くなる」
「じゃあ、後回しだ!今はそんな余裕ねえよ」
「···じゃ、来週から予約制で」
次の日から看板に『来週から事前予約制です。キャンセルが出たら予約なしでも入れます』って書いておいた。すると、常連はさっそく予約入れてきたぞ!?そんなに気に入ったのかよ···。
翌週···。
客からは好意的な意見ばかりだった。
『予約制だから並ばなくて済むのはありがたいのぉ~!』
『仕事サボって早くから並ばなくて済むなぁ~!』
『ここって散歩ついでにいいわね~。明日も予約しておくわ!』
『ここが美味しすぎて、嫁に『メシがマズい!』って言ったら強烈なボディブロー食らって吐いたわ···。でも後悔してないぞ!美味すぎる!!』
『ハァハァ···。ナツたん···!かわいいよぉ~!ハァハァ···』
仕事も楽になったわ。ちなみに最後のヤツは出入り禁止にして追い出したぞ!次来たら記憶消してやる!
こうして、俺とナツの表向きの店は順調になった。次は裏のお仕事だな!
ヨウくんはナツちゃんのような分身の術を極めてないために一人でヒーヒーいいながら注文とって料理を提供し、レジ打ちをして皿を片付けつつテーブルを拭いてます。里の修行よりもキツイ!との事で、作者は飲食店でバイトはしたことありませんが、大変な仕事だなぁ~と客目線で見てますよ。お疲れ様です。
あと、下手に規模を大きくしたら店が潰れるというのは作者の経験則です。いつもなじみの個人店が急に大きくなると、味が変わっちゃうんですよね。仕込みの仕方や料理人が複数になるので、複雑なオペレーションができなくなってしまうんだと思います。
ですので、大きくして味が変わらないようにしているお店はチェーン店として成功しているのかな?とも思いますね。某北九州のうどん屋さんを見ているとそう思います。買収されてしまいましたが、味はそのままでいてほしいものですよ。
さて次回予告ですが、ナツちゃんの飲食店は『表の顔』で、裏のお仕事もちゃんとあるんですよ。今回は前後編2分割で裏のお仕事の様子をお届けしますよ~。
まずは王都で最近大問題になっている盗賊団のお話です。どうも王都の兵士の警備計画が漏れているようで、盗賊団がなかなかつかまらず、兵士長は毎日警務大臣に呼び出されてお説教されているようです。大臣が怪しいとにらんだナツちゃんたちはお城に忍び込もうとします。
明日も朝と夜に『洋上から』1話ずつ投稿します。お楽しみに~!




