子どもたち、合同結婚式を挙げる 後編
さあ、今日は子どもたちの合同結婚式だ!
昨日はミルちゃんはアブルさんと、コルくんはコランさんと、ユキちゃんはフブキさんとヒサメさんと同じ部屋で寝てもらったよ。
ヨウくんはチパさんと再会して近況報告していたね。
「···立派になったね。外の世界でしっかり学んでるようだね」
「いえ、俺なんてまだまだです。整調者の力を得たにも関わらず、ハルさんやあいつにも勝てませんでしたし···」
「···確かにまだまだのようだね。···いい加減、勝ち負けに拘るのは辞めにしたらどうだい?」
「···どういうことですか?」
「言葉の通りさ。···勝つ事に何の意味があるんだい?勝ったらどう変わるんだい?」
「そ、それは···」
「···答えが出ないということはその程度さね。自分自身が満足して、それだけさ。その先がないのさ···。あんたはこれから結婚して、家族を支えなくちゃいけない。これから求められるのは『守る強さ』さ。···その事をよく考えな」
「···ありがとうございます、師匠」
「ふふふっ!辛気臭い顔すんじゃないよ!明日は晴れの舞台だ。幸せそうな顔をするんだよ!」
「···はいっ!」
やっぱりチパさんは師匠と言われるだけの事はあるね。ヨウくんの顔は今まで以上にスッキリとしていたよ。
一方、パスさん一家はイスピさんと会談したんだって。政治の話は少しだけで親睦を深めたようだね。
そして、結婚式の時間が近づいたので、全員教会へ向かった。先にエレさんが準備を終えて待っててくれた。カーネさんたちと新世代組はエレさんが神父を務めると知って驚いてたね!
エレさんは『ぴったりじゃね?』って言ってみんな呆れてたよ。
さて、結婚式が始まった!フユとユキちゃん、ナツとヨウくん、リナとコルくん、ケンとミルちゃんの4組が入場してきたよ。
そして、エレさんの前に横1列で並んだ。エレさんはフユとナツを見て、少し目に涙が出ていたよ。うちの子たちは初代神狼族の子にそっくりだったみたいだから、なおさらなのかな?
気を取り直したエレさんから祝詞が読み上げられた。
「今日、ここに新たに4組の夫婦が誕生します。これから長い人生において、幾多の困難が皆さんの前に立ちはだかるでしょう。
しかし!あなたたちは1人ではないのです。夫婦互いに協力し、幸せな家庭を築く事を期待しております。
では、はじめにフユくん、ユキさん。お二人はお互いに助け合ってこれからの人生を歩むことになります。お二人の誓いを、ここで述べましょう」
「はい!おれ、星川冬樹はユキを幸せにしてみせます!そして、幸せな家庭を築き、夫婦協力して持てる技術を後世に伝えてみせます!」
「私、ユキ・リムはフユを幸せにします。お互いが幸せになるよう、日々の生活を楽しんで過ごしたいと思います」
「大変素晴らしい誓いでした···。うぅっ···。し、失礼···。では続いてヨウくん、ナツさん。お二人の誓いを、ここで述べましょう」
やっぱりエレさんはフユに初代神狼族のレオさんを重ねちゃって泣いちゃったね。エレさん自身もわかってるんだろうけど、頭はそう思っても心は重ねちゃうんだ。事情を知らない他の人はフユとユキちゃんの誓いに感動したように見えるけどね。
そうそう、この誓いの時は真名で誓う方がいいらしい。ボクの時はその方が真剣さが神様に伝わるからって思って言ったんだけどね。今回は神父さんが元神様のエレさんだし、その方がいいって、みんなに伝えてるんだ。
ただ、ヨウくんは孤児だったから、真名自体わからないので、そのままなんだ。
さあ!次はヨウくんとナツだね。
「お、おう。俺、ヨウはこいつ···、じゃなかった!ナツを幸せにするぜ。ただ、ナツの方がすごいから、俺は支えるって事ができるかわからねえ。でも、やるだけやってやるぜ!」
「···星川夏美は、ヨウを幸せにできるか『微妙』。···でも、ナツが幸せにはなるから、おすそ分けしてあげる」
「ひでえ!まぁ、それでもいいか···。よろしく頼むぜ!」
「変わった形での愛の誓いでした。続いてコルくん、リナさん、お二人の誓いを、ここで述べましょう」
「はい!僕、コルタはリナを幸せにしてみせます!たくさんのお子さんに囲まれた幸せな家庭を築いてみせます!」
「そうね!コルの言う通りよ!わたし、リナル・ハンティングは、コルと幸せな家庭を築くわ!子どもは、5人以上欲しいわね~!」
「ちょっと、リナ!?気が早すぎるよぉ〜!」
「何よ!?目標は大きい方がいいに決まってるじゃない!一緒に頑張っていい家庭にしましょうね!」
「リナ···、うん!」
「大変熱烈な誓いでしたね~!では最後にケンくんとミルさん、お二人の誓いを、ここで述べましょう」
「はい!ぼく、ケント・ハンティングはミルを一生大事にして、幸せな家庭を築きます。明るく楽しい家庭にしようね!」
「はい〜!私、ミルフはケンといつまでも一緒に仲良くしていきます!離れないですよ〜!」
「ぼくだって、離すもんか!よろしくね!」
「熱き誓いでしたね!それでは皆さん、誓いの口づけを!」
そうして、4組一斉に口づけをしたよ。みんな幸せそうな顔をしていたね。そして、最後にエレさんからの言葉で結婚式は終了だよ。
「今ここに新たな夫婦が4組誕生しました。年若き夫婦に(元)神(本人)からの祝福を!」
そう言ったとたん、エレさんの体が淡く光り、4組をその光が包んで消えたんだ!エレさん!?それ大丈夫なの!?
心配するボクをよそに、他の参列者は感動していたよ。まぁ、エレさんの正体を知ってる人は『おいおい···』って顔をしてたけどね。
さあ、結婚式は終わったので、このあとは役所に行って婚姻届を提出して、昼からは披露宴だ!貸し切りの温泉宿で大宴会が始まったよ!
今回の料理は、なんとナツが全部作ったんだよ!昨日までうちのキッチンで調理して、無限収納ポシェットに入れてあったんだ。とんでもない量の料理が、テーブルに乗り切らないぐらいに用意されたよ!もちろん、ウェディングケーキも4つあるよ。
ちなみにエレさんも参加してるよ。···どうせ食いだめ狙ってるんだろうなぁ〜。
さあ、準備も整ったので、開会のあいさつだ!ボクがやることになってるからね!
「お集まりの皆さん!今日はボクとハル、リオとナナの子どもたちの結婚式に参列いただき、誠にありがとうございました!成人してすぐという幼さではありますが、4組全員が将来の展望をすでに描いてます。今後、子どもたちが困難に直面しても、ボクたちにも頼ってもらえればと思います。それでは、グラスを持ってくださ〜い!4組の幸せを祈念しまして、かんぱ〜い!!」
「「「「かんぱ〜い!!!」」」」
それはそれは、とても楽しいひと時だったよ!ウェディングケーキ入刀は魔力剣で入刀だった。キレイに真っ二つになったね。
ボクたちの子どもたちが、無事に元気よく巣立ってくれたよ。親としての勤めはこれでいったん終了だね。
明日からはうちの中が静かになっちゃうなぁ~。でも、寂しくなっても転移で王都にはすぐ行けるからね!あんまり邪魔するつもりはないけど、孫が生まれたらお世話しに行くことにしよう。
その日が待ち遠しいなぁ~!
本作では執筆当初から親・子・孫の3世代を書く、いわゆる大河構想でした。
しかし、あんまり本編が長いのも読むほうがしんどいよなぁ~と思い、本編はきりのいいところで完結させて番外編、さらには現在執筆中の続編に分けています。本編では親と子、番外編では子と孫、現在執筆中の続編では親と孫でのお話にしてますよ。
今回、子どもたちが結婚して独立しました。ここからのお話は子供たちが独立したあとのお話のご紹介となります。アキくんたちも多少は出ますからね!
さて次回予告ですが、まずはナツちゃんのエピソードをお届けします。現時点で全24話なんですが、前半の20話を先に投稿して、ほかのエピソードののちに残り4話を投稿します。子どもたちのエピソードの中では最も書いてて楽しかったので、思った以上にお話が長くなりましたね!
ヨウくんの視点で書いておりまして、まずは結婚前段階のお話です。ヨウくんはナツちゃんのお店の前準備として王都の外壁の外側の荒れ地の開墾を行い、お店に出す食材の畑づくりに勤しむ様子をお届けしますよ~。
それではお楽しみに~!




