ハル過去編-04 ハル、魔獣を討伐しまくる!
ランスに言われた通り、宿で1泊してみた。里よりふかふかなベッドで寝心地は良かったね。しばらくはここに泊まるか。そう思って申し込んだ窓口で伝えておいて宿泊代を払っておいた。これでいいのかな?ニコニコ顔だったからいいんだろうね。
さて、昨日教えてもらった掲示板とやらに行ってみる。私ができそうなのは魔獣退治かな?里での知識と技術が活かせそうだ。
魔獣の名前はよくわからないけど、適当に持っていこう。どんな魔獣でも相手にするから。
「あら、おはよう!早速請けるのね?」
(コクン)
「どれどれ〜?···えっ!?コレを倒すの!?大丈夫なの!?」
「···?」
「この2体は誰も討伐できてないし、何人も返り討ちにされてるのよ!新人のあなたにはムリよ!」
「···だいじょぶ。···どこにいる?」
「ここから東に行った平原か森にいるけど···。悪いことは言わないから、これだけはやめときなさい」
「···別にだいじょぶだけど?···ダメそうなら戻るから」
「···死んでも知らないわよ?」
これで魔獣討伐依頼を請けたことになるのか。わかりやすいね。
さて、今回討伐する2体は『レッドフォックス』と『グリーンプロキオニデス』というヤツらしい。
どちらも凶暴で、人を見かけたら襲って3〜5分で息の根を確実に止めて、おいしく食べられてしまうらしい。
この2体の魔獣が住み着いて、国の東側では去年から畑が作れなくなってしまったらしいね。
ま、私の敵じゃないね。逆にこっちがおいしくいただいてあげるよ。気配を消してゆっくりと平原を進んでいく。
雪が積もってるので、道を外れた雪原にはいろんな足跡がついていた。どれが目標の魔獣かはわからないね。
雪原にはいないようなので、森に入ってみた。雪の降り始めなので、森の中の積雪は平原ほどではない。
···いた。まずはグリーンプロキオニデスだ。私より大きな体格で薄暗い森の中でカモフラージュできるよう深緑の毛皮のタヌキだ。時折立ち上がって周囲に獲物がいないか探してるね。
···かなり警戒心が強い。気配を消してるけど、これ以上は近づけないね。じゃあ、狙撃するか。
師匠からもらった特殊な短剣は柄の部分が魔法銃になっている。これで狙撃してみよう。
···背中を見せた!今がチャンスだ。私は両手に持った魔法銃で共に2発ずつ撃った。
···当たったものの、致命傷にはならなかった!グリーンプロキオニデスがこっちに振り向いた。こちらも構わず続けて撃ち込んだ。
銃弾を避けもせずに突っ込んできた!どうも毛皮が分厚くて弾を弾いてしまうようだね。どうりで討伐できないわけだ。
そして、目の前まで迫った!鋭い爪の手を思いっきり振り上げて、私に向けて振り下ろした!
「···残念。···ハズレだよ」
師匠の得意技だった暗殺技の『空蝉』。相手の正面に幻惑を出して気を引きつけておいて背後から襲撃する奇襲技だ。私は背後からヤツの背中と首を刺した!
「グギャアアアア!!」
師匠の武器は非常に切れ味が鋭い。魔法銃の弾丸すら弾いた毛皮を、いともたやすく貫いてしまった。
···まずは1匹。
続いてレッドフォックスだ。こちらも私より大型の魔獣で、名前の通り赤い色のキツネだ。夜行性だから出てくるのはおそらく夜だろう。
今倒したグリーンプロキオニデスの死体をそのままにしておいて、エサ代わりにしよう。ここからは長期戦になりそうだね。
その日の深夜。
···来た。予想通りだ。その前にも何体か魔獣がエサを求めてやって来たけども、もちろん始末している。
私は木の上で気配を隠して待機していた。レッドフォックスが一心不乱にエサに食いついている。完全にスキだらけだね。
そうして新たにかぶりついたその瞬間!私は音もなく飛び降りてレッドフォックスの胴に突き刺した!
痛みで気づいたレッドフォックスが後ろを振り向いたその勢いも利用して、もう一本の剣で首を切り落とした。
···うん、任務完了。こんなところかな?
思った以上に時間かかっちゃったけど、最初の仕事としては上出来だろう。一応血抜きして魔法カバンに入れておいた。里のものなら誰でも持っているカバンだけど、容量はそんなに多くないから、依頼の2体だけでいっぱいになってしまった。
戻ったら夜明け前になってしまった。冒険者ギルドも閉まっていた。
夜通し警戒していたので疲れたから、宿に戻って寝ることにした。受付の人にはビックリされた。私が帰ってこないので心配してくれたようだ。ま、こんなに時間かかるとは思ってなかったから仕方ない。
部屋に戻ったら下着に着替えてそのままベッドで寝てしまった。本当はベッドの脇に武器を置いて、寝込みを襲われても大丈夫なようにしないといけないのに···。
次に起きたのは昼頃だった。ちょうどおなかも空いてきたので、完了手続きをしつつ食事にしよう。
そう思ってギルドに入った。この時間はほとんど窓口に並んでおらず、酒場の方でのんびり食事にしている人が数人いるだけだった。
まずは窓口に行こう。すると、昨日対応した受付の人が私に気づいた。
「無事だったのね!?良かったわ~。依頼を請けた事にしてないからペナルティーは今回なしにしておいたけど、次は特別扱いしないわよ?」
「···?討伐した。これが証拠」
そう言って私は倒した2体をそのまま出した。ちゃんと血抜きはしてあるから床が汚れることはない。
「えっ!?ほ、本当に討伐してしまったのぉ〜!?」
「···?これであってる?」
「あってるわ···。スゴイじゃない!初依頼が高難度依頼達成なんてほとんどないのよ!?」
「···?じゃ、達成って事で」
「そ、そうね···。ちょっと手続きに時間かかるけどいいかしら?」
「(コクン)···ご飯食べてるね」
そうして食べ終わった頃に受付の人がテーブルに来た。ここで手続きするらしい。
「待たせたわね。ここに受取のサインをちょうだいね。報酬として120万ジールを支払うわね」
「···?···高くない?」
「キレイに倒してくれたから良質な毛皮が手に入ったの。高値で売れるから、その取り分が加算されてるわ。しっかし、あなた強いのね~!見た目かわいい女の子なのにスゴイわ」
「···ありがと」
「そこでね?他の魔獣もお願いできないかしら?」
(コクン)
「期限はないから、いつでもいいわよ。じゃあ、よろしくね~!」
もう次の仕事も決まってしまった。ま、いっか。
そして、私は請けた魔獣討伐15件42体を1週間ですべて片付けた。
「···ええっ!?も、もう達成しちゃったの〜!?」
「···?見ての通り」
「ハルちゃん···。凄腕だったのね···。ま、まぁ!おかげで溜まってた依頼を一掃できたわ!ありがとう!」
「···そろそろ別の町にも行ってみようと思うけど、どこがいい?」
「出ていっちゃうかぁ~。まぁ、もう目ぼしい依頼がないから仕方ないか···。ここから南に行くとレオナード王国の王都、さらに南にエイテ帝国やジスタ3国とかあるわね。王都は兵士が全部片付けちゃうから外したほうが無難ね」
「···ありがと。行ってみるね」
ここでの仕事を終えて、私は南へ向かうことにした。
この先に後に相棒となる者との出会いがあるとは知らずに···。
ネタバレ集を作ったんですが、そんなに紹介するものが少なかったので、ここで紹介しますね!
『レッドフォックス』と『グリーンプロキオニデス』
元ネタは東洋水産様のインスタント食品である『赤いきつねと緑のたぬき』ですね。
レッドフォックスはそのまま英訳しましたが、たぬきの英語は『ラクーンドッグ』なんですよ。
ただ、ラクーンがアライグマなので、ちょっと誤解されるなぁ~?と思って『学名』から取りました。かっこいいでしょ?
魔獣の名前を考えつつスーパーで買い物してる時にカップラーメンコーナーでこの製品を見て思いつきました!何がきっかけになるかわからんものですわ。
ハルちゃんは神狼族なので狩りは種族上得意なんですね。だから冒険者として魔獣を狩るのは天職と言っても差し支えないんですよ。このように溜まりまくった高難易度の討伐クエストを全部達成してしまったので『凄腕』という異名もついてしまったんですね~。ちなみに討伐以外のクエストは基本受けません。人並程度しかできないので、誰もやりたがらない高難易度のクエストばかり受けちゃうんですよ。
さて次回予告ですが、あてもなく街道を進んで森を抜けようとした時に空から青いドラゴンが降ってきました!何も食べていなくて墜落した青竜にハルちゃんが持っていた保存食をあげると全部食べつくしてしまい、困ったハルちゃんは保存食代を請求しますが···。
明日から3連休ですね!もちろん連休中は朝と夜に1話ずつ投稿しますよ~。日曜の投稿でハルちゃん編は完結します。それではお楽しみに~!




