短期留学編-20.極限の状況で···
「ベルノくん!」
「···え?」
「まじゅう!起きて!!」
「えっ!?どこに!?」
昨日はまずい夕食を食べた直後に寝ちゃったんだ···。あたりは暗いままなので深夜なんだろう。
体中が痛い···。いつもふかふかのベッドではなくて石ころだらけの川原だからものすごくしんどい···。
そんな中、ソラの叫び声だ。ぼくは慌てて起きたんだけど、状況がつかめてなかったんだ。
そして、起きた直後!
ガブッ!!
「え···!?うぎゃーーー!!」
「ベルノくーーーん!!」
なにかの気配を感じてとっさに動いたんだ!そしたら···、右腕を噛まれた!!
少ししてからものすごい鈍い痛みが襲ってきた!!すさまじい激痛で叫んでしまったんだ!
「ひぎ!もみじ!!」
ソラがぼくに噛みついた魔獣の頭の上半分をきれいに斬った!ぼくには斬撃が当たらないようにしながら!
力を失った魔獣の口が開かれて、牙がぼくの腕から抜けた···。見たことのない量の血が出てる!?慌ててぼくは回復魔法をかけた!でも···、
「うっ!?ま、まりょくが···」
「ソラもかいふくまほうかけるよ!」
ぼくの回復魔法では血が止まらなかったので、慌ててソラが回復魔法をかけてくれた。おかげで痛みはなくなったよ···。でも···。
「···ひっく、···ひっく。ど···、どうして···?どうして···?」
「ベルノくん···」
今はもう痛まないけど、初めての激痛だった。いつもとうちゃんと稽古してる時も痛い思いはしたんだ。
でも···、実際の戦闘での痛みは想像以上だった!これが···、魔獣との戦いなんだ···。
初めて狩りに行った時はうまくいったんだ。でも···、今考えたら最初からうまくいき過ぎたんだ···。たぶん、とうちゃんとじーちゃんが、ぼくが狩りやすいように準備してくれたんだろう。それがよくわかったんだよ···。
いい気になってたんだ···。だから、さっきやられちゃったんだ。今さっきの痛みでそれを思い知ったよ···。
「···おちついた?ベルノくん?」
「···うん。ゴメンね。それと、ありがとう」
「···このままだとソラたち、たべられちゃうのかな?」
「···わかんない。でも、おそってきたらやっつけないと!」
「そだね···」
とうちゃんは言っていた。神狼族は魔獣を狩るために神様が創った種族だって。
さっきはぼくが狩られそうになっちゃったよ···。でも···、今度はぼくが狩ってやるんだ!こんなところでやられてたまるか!!
まだ夜明け前の薄暗い中、ぼくとソラでさっき襲いかかってきた魔獣を解体した。お肉は···、思ってた以上に少なかったよ。こいつもよっぽどおなかを空かせてたのかもしれない。
しかも···、
「うげっ!?マズイ···」
「これはたべれないね···」
どうしよう···?ほとんど寝れてないし、おなか空いたし、魔力もほとんど回復してない···。
さっきはソラが倒してくれたけど、ぼくとソラの剣術だと、そう多くの魔獣は倒せない。同時にかかられたらまず勝てない!
「ここをはなれよう。どうくつとかあればいいんだけど···」
今度は山の方に向かった。今度は慎重にゆっくりと歩く。魔獣がいたら離れる。極力戦闘は避けるようにして進んだんだ。
この時、とうちゃんが教えてくれた暗殺技が役に立った。周りの風景に溶け込むように気配を殺していると、近づかない限り魔獣が襲ってくることはなかったよ。
そうして歩いていると···、あった!!洞窟だ!
滝つぼって言う滝の流れ落ちた池があったんだけど、その滝の裏に洞窟があったんだ!ここならお水も確保できるし、近くに木があるから薪にもできるぞ〜!
ぼくたちは洞窟に入った。ちょっと湿気が多いけど、地面は濡れてない。気配を探ってみると···、どうやら魔獣がいるようだ。
しかし、だいぶ奥の方にいるようなので、こっちから仕掛けなければ襲ってくることはなさそうだ。注意は必要だけどね。
そう思い、安心した途端···!
「あ···、あれ···?」
「ベルノくん!?」
ぼくはひざに力が入らなくなって倒れてしまったんだ···。一気に疲れが襲ってきたような感覚だった···。
「ソラ···、ごめん。つかれちゃっただけだから···」
「よかった···。じゃあソラもちょっとやすむね」
ソラの言葉を聞いた直後、ぼくは意識を手放して眠っちゃったんだ···。
···何時間寝たんだろう?ふいに目が覚めたんだ。
体が痛い···。そりゃ地面は岩だからね。でも、気分はだいぶ良くなった。魔力も···、うん!回復してる!全快とまではいかないけど、多少の戦闘はできる!···って思うよ。
でも、ムリしたらすぐに魔力が尽きちゃうだろうなぁ〜。節約しながら戦闘しないと···。
安心して休めるってだけでこんなに違うんだ···。これもいい勉強なのかな?
「···ん」
「ソラ?だいじょうぶ?」
「···うん。ちょっとましになったかな?」
「そう、よかった···。これからどうしよう?」
「おなか···、すいたね」
「そうだね···。とりあえずここでやすめるから、まじゅうかってみようか?」
「そだね!いまならやれるかも!」
多少余裕あるならやっておこう!でないと、このままだったらおなか空きすぎて動けなくなっちゃうよ。
ぼくとソラは滝つぼから出た。外はだいぶ明るかった。そのせいか、周りには魔獣の気配がしてきた。
群れではなさそうだ···。だったらなんとかなるかもね!
まずは最も近い場所にいる魔獣を探し出すと···、いた!
2足歩行する翼のある魔獣だ。翼があるってことは胸の筋肉が発達してるって、とうちゃんが言ってたね。
ぼくたちには気づいていない。翼があるから、飛び立たれたら終わりだ。となると、遠距離攻撃だね!
「(ソラ、まりょくしゅりけんでいける?)」
「(うん!)」
「(にげそうになったらぼくがやる!)」
「(わかった!)」
ソラはここから狙撃するようだ。真剣な表情をして集中し、右手に魔力手裏剣を生成してから···、放った!!
「ギェエエエーーー!!」
翼のあたりに刺さった!痛みで暴れてるよ!でも致命傷にはなってなかったので、飛んで逃げようとした!そうはさせるか!
「ひぎ!げんげつざん!!」
ぼくの剣技、弦月斬を飛ばして首を切り落とした!
「「やったーーー!!」」
よし!今度こそうまくいった!
これでお肉は確保できた!···って思ってたのはこの時までだったんだ···。
ベルノくんもソラちゃんも実戦経験がほとんどありません。
実戦は訓練とはまったく異なります。今回のように不意打ちからのスタートもありますし、気づいた時にはすでに命がなくなってるなんて理不尽な事も普通にあるんです。
今回、極限状態まで追い込まれてしまいましたが、なんとか生き延びよう!と必死に対応して安心できる場所を探し当てたりと、頑張ってます!
これも貴重な経験です。『実戦に勝る訓練はない』と言いますが、それを実際に感じ取ってくれてると思いますよ。
さて次回予告ですが、狩りに成功したものの、その獲物を横取りしようとする別の魔獣集団がやって来ました!対峙することになったベルノくんとソラちゃんは、立ち向かおうと決意します!トランスはできるようになるのでしょうか?
それではお楽しみに〜!




