武者修行編-2.冒険者登録するぜ!
「じゃあパパ!ママ!行ってくるぜ!」
「フユに~ちゃん!ユキママ~!行ってきま〜す!」
「気をつけて行ってくるんだよ!何かあったらすぐに連絡するんだよ〜!」
「気をつけてね~!」
フーが日の出前の早朝に道場へやって来たので、冒険者ギルドが業務開始するまでの間、うちで休んでもらった。
朝食はナツママがおれの分まで用意してくれたので、ありがたくいただいたぜ!めっちゃうまかった!ママには悪いけどな···。
パパとママに見送ってもらって、おれとフーは道場を後にした。さっきパパが『連絡するように』って言ってたけど、実はおれとフーには『キッズスマホ』なる神器が渡されてたんだ。
これはこの世界の神だったエレさんが、おれたち二人が成人したお祝いとして贈ってくれたものなんだぜ。しかも無限収納ポシェットや魔力をたくさん蓄えられる蓄魔の腕輪までもらったんだぜ!
ちゃんとお礼の手紙は書いたぜ!それを見たエレさんはとても喜んでいたそうだ。
とりあえずパパからはお小遣いを少しだけもらってるけど、今回の旅は冒険者として自分で稼いで生活する事も目的らしい。手っ取り早く魔獣退治の依頼があったら問題ねえな。
「モンドくん、ギルドって行ったことある?」
「ああ、パパと一緒に行った事あるぜ。うちの道場が定期的にやってる魔獣退治演習の打ち合わせとかでな」
「どんなところ〜?」
「どんなって···。町の人から依頼を受けて張り出す掲示板があるな。そこで請ける依頼を見つけて紙をはがして受付へ持っていくんだ。魔獣退治は紙ないこともあるけどな。終わったら受付で報告して報酬をもらうんだよ」
「へぇ~!そうなんだね〜!」
「あとは武器屋や酒場、それに魔獣の素材買取りもあるな。場所によっては訓練場もあるんだぜ。王都は結構デカイからあるぞ」
「そっちは用事なさそう〜」
「まあな。今のおれたちなら、普通のスタンピードくらいはどうとでもできるしな!」
「疲れるけどね〜」
「まだまだ鍛錬しなきゃいけねえって事だな。おっと!着いたぞ」
「おぉ〜!ここがギルド〜!」
王都の王城に近い公園のある広場の近くに4階建ての大きな建物がある。ここが冒険者ギルドの王都本部だ。王城と近いのは王国軍と共闘したり、城からの依頼が多いからだ。魔獣退治はほぼ城からのオーダーだな。
ただいま午前9時。受付自体は午前7時開始なんだが、その時間は依頼の受付でごった返してるから、新人登録は受付けてもらえないんだよ。この時間なら混雑は落ち着いてるからな。
おれたちはギルドの中に入った。向かって左は酒場だ。朝から酒飲んで泥酔してテーブルに突っ伏してる連中もいるな。おそらく夜間の依頼を達成したんだろうな。ヤケ酒してなかったからそうだろう。
向かって右には依頼掲示板のボードがたくさんあったが、残ってる依頼は少なかったな。残ってるのは人気がないか難易度が極端に高いかだ。
依頼には掲示されてる以外にも指名依頼なんてのもあるんだぜ。ばーちゃんはほぼこの指名依頼なんだ!凄腕冒険者としてこの大陸では名前を知らない冒険者はいないぐらい有名なんだ。
素材買取りカウンターと武器屋は誰もいねえな。夕方が忙しいんだろうな。
ギルドの受付カウンターは10個窓口があるけど、今開いてるのは1つだけだった。誰も並んでないけどな。
さて!それじゃあ冒険者登録するぜ〜!受付に行くと、知ってる人だったな。
「あら?モンドくん、おはよう!今日はかわいい彼女連れでどうしたの?」
「ちょ!?彼女じゃねえよ!いとこだ!」
「えっ!?そうなの!?」
「そうだよ〜!フーはモンドくんのいとこだよ〜!身内だから結婚はムリってママも言ってたね〜!」
「そうなのね···。ごめんなさいね。それで、今日はどうしたの?師範はいらっしゃらないし、魔獣討伐は先週だったけど?」
「はぁ~···。今日はおれとフーの冒険者登録しに来たんだよ」
「あら!そうなのね!じゃあ、この登録用紙に必要事項を記入したら、また持ってきてくれるかしら?」
「ああ。わかったぜ」
登録用紙を2枚もらって、近くのテーブルに座って書いた。こんなもんでいいか?
フーも書けたので、受付に持っていった。これから冒険者証を作るそうで、昼前にはできるそうだ。
その間に冒険者としての心得と腕っぷしの調査があるそうだ。
心得は言ってしまえば一般常識だったな。犯罪ダメゼッタイ、おれのものはおれのもので他人のものは他人のもの、あとは依頼受注方法と達成した際の報告義務、素材買取コーナーの使い方だったな。
次は腕っぷしの試験だけど···、
「············」
「やっべ!やり過ぎた!」
「フーも···。この人形、そんなに固くなかったね」
簡単に言えば魔道具の人形に攻撃するものなんだが、さすがに魔力剣はマズイと思って、手持ちのナイフでおれもフーもやったんだが···。
おれの一撃は人形の首を真っ二つに切って頭と胴体が分離し、フーの一撃は人形を縦に真っ二つにしちまった···。
ナイフでここまでの威力が出るとは受付嬢も思わなかったらしく、口を開けて呆然としちまってたんだ···。まぁ、ちょっとワケアリなナイフではあるけどな。これ、失格じゃねえよな?
パパだったら容赦なく失格扱いだろうなぁ〜。『力があり過ぎてやり過ぎてしまってはいけない。相手を見て力をコントロールできて、やっと半人前だ』って言ってたからなぁ〜。そもそも人形だから相手の力なんて見れねえけどさ···。
「え〜っと···。これって失格か?」
「···はっ!?い、いえ···。大丈夫ですよ···」
受付嬢が我に返って、大丈夫とお墨付きをいただいたぜ。これなら大丈夫だな!
訓練場から戻ったら、おれたちの冒険者証ができあがっていた!
「うわ〜!これがフーの冒険者証なんだね〜!」
「これがおれの冒険者証···」
冒険者証には大きくおれの名前が書いてあった。あとは出身地であるリスタの名前だな。
基本的にはどこのギルドでも受注ができるが、町が変わる際には手続きをしておく必要があるんだ。どういった依頼を達成したか?という情報を引き継ぐためらしい。
こうしておれたちは冒険者になった。手続きを終えたらちょうどお昼になってたので、酒場で食事をする事にしたんだ。
この時間の酒場はそこそこ空いてる。
って、満席だけどな。フーの家の飲食店は、空席が出れば相席になっても即埋まり、店の外には大行列ができてるのが日常だ。入店の列じゃねえぜ?持ち帰りのテイクアウトってやつだな。あの光景が日常だったから、感覚がおかしくなっちまってるんだよなぁ〜。
ギルドの酒場自体は一般開放されてるので、ここで食事する人も結構いるようだ。『本日のオススメランチはコレ!』って看板が入口にあったな。
どうもここは注文を入口のカウンターでやって食券を厨房に出して料理をもらう方式のようだな。
「フー。おれ席とっとくわ。注文してこい」
「モンドくんは何にする〜?」
「オススメ定食。できるんだったら特盛りで」
「承り〜!」
こういう場所ではフーは慣れてるからな。ちっこい体をうまく駆使して人をスイスイ避けて食券カウンターの列に並んで注文してた。
5分後···。
「お待たせしました〜!」
フーはトレイを片手で持って二人分の料理を持ってきた。トレイに載ってる料理を見ると···。
「うおっ!?すげえ量だな···」
「冒険者さんって体を動かすからじゃない〜?」
「あ〜、そういう事か」
「じゃあ、いただきま〜す!」
「よし!いただくぜ〜!」
味は···、正直『どうでもいい!』ってかんじだったな。とにかく量が多かった!油っこくて塩辛いなぁ〜。
フーも普通の量を食べてたが、おいしそうに食べてたぞ。家だととんでもなくおいしい料理だってのに、特に気にしてない様子だった。
モンドくんとフーちゃんが冒険者になりました。
ご想像のとおりやり過ぎてしまいますが、これもご愛敬のテンプレということで(笑)。
モンドくんたちにもエレさんが神器を追加でプレゼントしました。ホント、エレさんは神狼族に対して溺愛がすさまじいですなぁ~。
体力勝負な冒険者の酒場は量で勝負です!味は···、まぁね~(笑)。
ちなみにこの酒場で出た料理はアメリカ旅行で食べたものを思い出して書きました。向こうは体格がすんごい人が多いので、『味よりも量!』ってところが多いんですよ。某ファストフード店のドリンクも飲みきれない量でしたし···。
ですが、こういったメニューもたまには食べたくなってしまうんですよね。油っこいのは最近胃が受け付けにくくなってきました···。年取るとねぇ~、あっさりしたものがおいしく感じるようになっちゃうんですよ。
さて次回予告ですが、モンドくんとフーちゃんはさっそく依頼を請けます!おつかいから討伐系まで依頼があるので、まずは討伐系にチャレンジしますよ~!どんな活躍をするのでしょうか?
それではお楽しみに~!




