アキの神様生活-10 勘弁してくれ···
レオが差し出した紙幣に描かれていた肖像画は思いっきり美化されたボクだった!!って言うか、これ本当に人?ってぐらいな顔だよ···。目が少女マンガチックにキラキラしてるんだけど···。
「おー、よく見たらアキなんだけど、全然違うなー」
「人には見えないわね···。まぁ、アキはこの世界では本当に神様なんだから問題ないんじゃない?」
「ちょっとリオ、ナナ!そういう問題じゃないって!なんでボクこんなにされちゃってるの!?」
「そりゃ、みんなアキの姿なんて見たことないから、ほんのわずかな情報から想像するしかないしな!だからバレないって言っただろ?」
「それでもボクとしては恥ずかしいよぉ〜!」
「あ〜、この程度で恥ずかしいと思ってたらこの先キツイかもなぁ〜」
レオが物騒な事を言ってるよ···。まぁ、気を取り直して、ボクたちは宿へ向かった。
「いらっしゃい!今日は降臨祭だからちょっと値段高いがいいか?」
「ああ。5人なんだが1泊いけるか?」
「大部屋でよければ空いてるよ?それでいいかい?」
「それでいいぜ!」
「では宿帳の記入と代金8万円円いただきますね〜!」
レオが手続きしてくれたよ。そして大部屋に行くと、なんと畳の部屋だった!思いっきり和室だよ!?
「へぇ~!畳のい草ではなさそうだけど、これもなかなか風情があっていいねぇ〜!」
「アキが最初にリフォームした世界だから、思いっきりアキの記憶が反映されてるんだよ」
「なるほどね〜!これはボクにとっては居心地良さそうだよ〜!」
まずは部屋でのんびりだ。お茶請けがあったから、ボクがお茶を淹れたよ。思いっきり緑茶だったね。
「にがっ!?アキー!苦いぞー!?」
「これがお茶なんだよ。この渋さがまたいいんだよ〜。甘いもの大好きなリオには厳しかったかな?」
「砂糖入れちゃダメかー?」
「え?砂糖入れるの?まぁ、元の世界のお隣のところはそういう文化だったけど···。好きにしたら?」
「おう!じゃあ···。うん!いけるぞー!」
そうしてのんびりしていたら夕方になり、外は大勢の人が祭りに繰り出して賑やかになってきたよ。
「じゃあ、そろそろ祭りを見に行こうか。夕食は屋台で買い食いでいこう!」
外に出ると、ちょうちんに灯りが点いて、幻想的な雰囲気だったよ。いろんな出店が出ているね。ただ···、
「···アキ?···神様の仮面が売ってるね」
「うわぁ···。これはひどい···」
少女マンガっぽいキラキラした目のお面がズラリと並んでたよ···。しかも子どもたちはみんな買って頭に付け出していたよ···。
いや、わかってるんだよ?みんな神様を信仰して感謝してるってね。でも···、それを間近で見るのはかなり精神的にくるぞ!!
「アキー?なんかあっちの方で演劇をやってるぞー」
「祭りの中で劇···。なんか嫌な予感が···」
「···行ってみよっか」
嫌な予感がする中、ハルが舞台の方へ行っちゃったので、ボクも仕方なく向かった。
そこでは···!?
「お願いだ!キミたちの力を貸してくれ!別の世界が侵略されてピンチに陥っているんだ!」
「わかりました!神様のおかげでこの世界は平和になったのです。神様からの要請であれば我々はたとえ困難な状況でも助けに向かいましょう!」
「ありがとう!平和はこの世界だけじゃいけないんだ。他の世界も平和であることが必要なんだ!」
『異世界救援隊は別の世界の部隊と共に、何の罪もなく蹂躙されようとしていた世界を救うべく、立ち向かった!
その先頭には我らの世界の神、アキ様が立ち、金色の鎧をまとって我々を指揮してくださった!
その姿はまさに伝説に伝わる『その者、青き髪をまといて金色の鎧を着て、救世の地に降り立つべし』の通りであった!!
戦いは厳しく3日3晩もかかったものの、犠牲者もなく侵略者を追い返すことに成功したのだ!』
「みんな、ありがとう!みんなの勇気で異世界の平和を守ることができたんだ!今後も平和活動に力を貸してくれ!」
『偉大なキトニアの神、アキ様は平和を愛する神。そして我らの平和を温かく見守り、苦しい時には助言をなさり、我らの心を癒してくれるのです。アキ様がいる限り、この世界は他の世界が羨むであろう理想郷であり続けるのです!』
『これにて神教演劇隊による『アキ神様の軌跡 〜平和への追求〜』を終了しま〜す。次回は1時間後に上演しま〜す!』
「おー、アキが神様としての活躍の物語かー」
「結構面白かったわね!アキってこんな事をしていたのね〜!」
「···アキ、すごいね」
「これって先日のエレの世界を救いに行った時の話だな。コピーアキが大暴れした···」
「············」
ボクはあまりの恥ずかしさで顔が真っ赤になっていた!···と思うよ。
なんじゃこりゃーー!?確かにコピーアキが大暴れしたのは録画映像で見たけどさ!?あれだけでも超恥ずかしいのにキトニアの皆さんにはこういう風に見えちゃってたの!?それともさらに美化しちゃったの!?
それになんだよ!?伝説って!!その伝説って世界崩壊後を描いた有名監督の某アニメ映画のまんまじゃないかよ!?
明らかに嫌味などではなく、信仰が行き過ぎちゃって強烈に脚色しちゃってるんだわ···。いや、エレさんみたいに神様を罵倒するのが当たり前な世界よりかはいいけどさ!それでも限度超えてるわ!!
「勘弁してくれ···」
「アキ?これだけ神を信用して信仰してくれる世界なんてそうないんだぜ?この世界はもう完成して手を出せることはほとんどないけど、みんな笑顔で幸せそうに暮らしてるんだ。これが、アキがこの世界を完成させた実績なんだぞ?もっと胸を張れって!」
「···うん、レオの言う通り。···みんなアキに感謝してるんだよ。···素直に受け取っておこう」
「ハル···、そうだね。ボクがした苦労が、こうやってこの世界の人々の幸せに繋がってるんだからね」
それからもボクたちはのんびりと祭りを楽しんだよ。この祭りはボクに感謝するための祭りだから、ボクが楽しまないといけないよね!
そうして見て回っていると···、
ドンッ!!
誰かが後ろからボクにぶつかってきちゃったよ。
「イテテ···、あっ!ごめんなさい!よそ見してました···」
「あぁ、別にいいよ。大丈夫?」
「はい!大丈夫です!ホント、ごめんなさい···」
「ははは。まぁ、人通り多いからね。気をつけるんだよ。キミは一人なのかい?」
「いや、父ちゃんと母ちゃんと来てます!今日は思いっきり楽しもうと思ってきたのではしゃぎすぎました···」
「祭りは楽しいからね〜」
「はい!今回は神様も来てくれてるって思ってるので、いつもより楽しみだったんです!」
「えっ!?神様が来てるのかい?」
「はい!ぼく、神様に感謝の気持ちを手紙書いて神社に置いていたら、いつの間にか無くなってたんです!神様が読んでくれたんだと思うから、来てると思うんです!」
「そうだったんだね。じゃあ、思いっきり楽しんでね!」
「はい!ありがとうございました!」
そう言って少年は両親のところへ走っていったよ。走ったらぶつかるぞ···。
「アキー?もしかして、さっきの子が手紙書いたんだろうなー」
「そうだね、リオ···。うん、楽しんでるようで良かったよ。そうだ、レオ!エレさんみたいにGP使ってちょっとした演出をしようか!」
「おっ!?いいぜ!何するよ?」
祭りはクライマックスになり、神輿が神社に入った。そしてボクっぽい神様の像に感謝の言葉を述べた直後!ボクはGPを使って像を光らせ、周囲に蛍っぽい光を漂わせてみたよ。
「きれい···」
「神様···!感謝いたします!」
「神様!本当に手紙を見て来てくれてたんだ!ありがとう!!」
ふふふっ!みんなびっくりしてるね!ボクも楽しかったよ!また遊びに来ようっと!
こうして、ボクたちは祭りを楽しんで1泊してからエーレタニアに戻ってきた。今度の休みは別の世界にも行ってみようかな〜?
そう思ってたら、ハルがとんでもないものを持って帰っていた!!
「ハルさん!?それは何よ!?」
「···?···アキの神様グッズ」
なんと!?ハルはボクが知らないうちに祭りで売っていた神様グッズを買いまくっていたんだ!!
もうやめて!(恥ずかしさで)ボクの精神力はとっくにゼロよ〜!!
みんな悪意がなくて感謝の気持ちなので怒るに怒れないアキくんでした。まぁ、ここで怒ったら正体ばれちゃいますからね~。
ちなみに緑茶で砂糖入りは台湾では当たり前なんですよ。めっちゃ甘いので、皆さんも台湾へ行った際は『無糖』と書かれたお茶か日本メーカーのお茶を買いましょうね~!
台湾はお茶の産地でして、ウーロン茶はいつも台北の某お店で買って帰ります。作者は台湾南部のめっちゃ甘いレモンティーがお気に入りですよ。
劇中であった、『その者、青き髪をまといて金色の鎧を着て、救世の地に降り立つべし』の元ネタはジブリ映画の『風の谷のナウシカ』の伝承である、『その者、青き衣を纏いて金色の野に降り立つべし』からですね。衣じゃなくて髪の色でしたし、金色なのは鎧でしたが(笑)。バックコーラスは劇中ではありませんでしたね。これ、本人じゃなくてコピーアキくんのやらかしなんですよね。
これにてアキくんの神様生活のお話は終了です。ぶっ飛んだネタばかり仕込んで、作者はノリノリで楽しくかけましたよ~。
さて次回予告ですが、時は一気に流れてリナちゃん編後編を7話お届けしますよ~!
お子さんのスウくん、カークくん、ルメちゃんが8歳になった時のお話です。白銀竜の集落であるレジストからアクロへギアくん、ジンくん、ティガくんたち兄弟がリオくんを訪ねてやってきます。しかし!リオくんは学園でお仕事で不在だったのでリナちゃんの家に押しかけてきますよ~!またもやなにかに巻き込まれる予感が···?
それではお楽しみに~!