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悪役令嬢がやってくる

スパダリ化する浮気者に「お前を一生愛さない」と言われる婚約者に(以下略)

作者: まい

 中身は雑だし、勢いだけのナニカです。


 それでも良いと言って下さる方はどうぞ。

 洋館の部屋としか言えない場所の窓から外を眺めれば、そこも(写真とか絵とかでしか見たことないけど)古いヨーロッパの町並み。


 そう。 (わたくし)は古いヨーロッパっぽい文化を持つ国がある剣と魔法のファンタジーな異世界に転生してしまった様で。


 あ、もちろん前世の私はワタクシなんて言いませんでしたよ?


 でも私はこの世界のとある王国の、貴族の中でもそこそこ良い所に産まれたので、淑女(しゅくじょ)の振る舞いを教育された結果ですので。


 をほほほほほ。




 そしてその結果として、今日。


 私は19と言うこの世界では行き遅れ少し手前位の年齢で、婚約者との婚姻を行いました。


 この婚姻相手は、実は前世から知っています。


「この部屋は眺めが素晴らしいですわね、ダイク様」


 ダイク。 ダイキャシトウル・モディール。


 ダイキャストモデルをもじった名前だコレ!!? と、気づいた時には思わず絶叫してしまった、雑な名付けをされたスパダリ旦那。


 絵に描いたような美丈夫な貴公子で、懐に入れたヒロインを圧倒的なスパダリ(ちから)でデロデロに甘やかして骨抜きにする、作者の欲望がダダ漏れな人物。


 ぶっちゃけ書籍化された、とあるベタベタなファンタジー夢恋愛小説のヒーロー役。



 ええ。 そんな世界に転生してしまったのです。


「デリー。 君に言いたいことがある」


 来た。 この呼びかけに応え、声の主たるダイクへ向き直る。


 あの作品でデリーことデリリウムである私は、婚約者を盗られたくないとヒロインにやり過ぎなほどやり過ぎる排斥運動を行い、ダイクから見限られて、結婚はしたものの「お前を一生愛することはない」と飼い殺しにされる罰を受けて終わる役。


 美しいけれどキツめな顔で、真面目な顔をすると相手にビビられる、そんな損な容姿をしている。


 なおデリリウムってなんだと調べたら、オランダ語だって出ました。


 ダイキャストモデルは英語だろうに、同じ国で違う国の言葉を使うなよと怒りたくなりましたが、そもそもデリリウムってアルコール依存症って意味らしく、それを知ってしまえば悲しみしか湧かなくなりました。



 話を戻すと現在、ちょうどその「一生お前を……」を宣言するシーンです。


 口をギュッと引き締め、何を言われようが泣くまいと、身も心も構える。


 私だって色々やってきましたよ?


 ここがあの世界で私がデリーだと気づいた瞬間に、この世界のヒロインを通じて起きた出来事を思い出せるだけノートに書き出して対策を考え、ヒロインほどではなくともこのダイクから愛さないと言われない立場の努力をしてきました。


 あとこの世界でどういった知識チートが使えるかの草案や、出すと社会が崩壊して沢山の人が不幸になりかねない封印すべき知識の書き出し等もノートに書き出しました。


 他にもさまざまにやってきましたが、ダイクはスパダリになってくれないし、この読んだ記憶があるセリフも言われてしまいました。


 ああ、私は駄目だったのでしょう。


 ダイクに愛されないのでしょう。


 前世の情報が無くとも、最初はまだ幼かった頃に顔を合わせていても、顔立ちの良さに()れ、私へのさりげない気遣いに惚れ、やはりヒーローに相応(ふさわ)しい心を持つ人なのだなと惚れ。


 そんな人と婚約者でソレに相応しく()ろうと努力してきても、ヒロインの魅力や努力には勝てないのでしょう。


 ダイクのお付きから日々の素行を()いたり、シナリオの先回りで問題を解決したりしてヒロインとダイクとの接点を極力減らそうとしても、やはり物語の世界なのかダイクとヒロインは知り合ってしまったし。




 (あきら)め半分で覚悟し、ダイクに向けていた目を伏せる。



 伏せてから少し。 ダイクの声が耳に届きました。




「一生キミを愛し抜こう」




 …………………。


 …………。


 ……。



「は?」


 思わず。 そんな感じの、気の抜けた音が私の口から転がり出てしまいました。


 反射的に“かっ(ぴら)いた”目には、私に少しだけ呆れを()ぜた笑顔を見せる。


「理解できてない顔だね。 じゃあ説明しよう」


 なんか……なんか理由(わけ)が分からない。


 だってこの人が誰かを愛する時はスパダリになるはずで。


「まずキミの能力からして、(わたし)の領地経営に無くてはならないほど頼りになる。

 特産品や名物料理なんかも作ってくれて、この地はさらに繁栄(はんえい)した」


 いや、それはただの人材として有用ってだけ。


「キミがふと気を抜いた時に見せる愛らしい仕草は、私を含めて見る者を笑顔にしてくれる。

 貴族なんてやっていると、それが大切な(いや)しになるんだ。

 そんな所も、デリーの良い所なんだ」


 え? いや、(わたくし)は完璧な淑女ですよ?


 そんな表情を(ゆる)める愚なんて見せてないはずです。


 と言うかなんでこうなった?


 スパダリは愛する人をデロデロに甘やかすんでしょ?


 そんなのを見せてくれてないのに……。


「キミは勘違いしている様だが、(わたし)は本当に愛する者に対して、(とろ)けそうになるほど甘やかさないよ」


 は? だって作中ではあれほど。


「気は使うよ?愛する人だから。 でもそこまで甘やかすことは、まるで人形に愛を(そそ)いでいるみたいで一方的すぎて、私は好きになれない」


 だったら作中のアレはなんなの?


 ヒロインをお姫様扱いで、まるで宝石箱にしまうかの様に丁寧(ていねい)に丁寧に扱ってたのは。


「アレでは対等ではないだろ。 私は愛したいけど、愛されたいんだ。 ひたすらに愛を示すだけなんて不毛だと思ってる」


 ………………は?


「もしかしたらクリスを甘やかしていたのは、デリーに嫉妬してほしかったのかも知れない。 嫉妬させて、デリーを愛を感じたかったのかもな」


 クリスとは、作品のヒロイン。


 クリスティティンアンドロニュス・ネムジークのこと。


 あまりにも長い名前から、挨拶の(たび)にクリス自らクリスと呼んでと言う。


 ネムジークは孤児院の名前らしくて、ネムジーク孤児院出身だと示すだけの意味しか無いようです。


 名前の元ネタはなさそうなので、おそらく作者が一生懸命になって、オリジナルの名前をひねり出そうとして、こんなのになってしまったのでしょう。



「あ」


 ……………………いや、それはいい。


 それより。



「だだ、だだだ」


 ダイク?


 ダイク。 なぜ貴男(あなた)に何も伝えていないはずの、作中の貴男とクリスの様子を知っているの?


 だってダイクの行動を聞いているけど、あのクリスとは極めて貴族的な対応をしていたと。


 いやまあ、ダイクから口止めされている事があって、その止められたのが……とか考えもしたけど。



「デリーが隠していた、よく分からない単語もあったけど……予言書かな? それも役に立ったね。

 あんなのを隠し持っている君に驚いたけど、(わたし)達の為にはとても有益な情報源だったし、君の正体もなんとなく理解できた」


 !?!?


「なななな、なななななな……!!」


 なんであのノートの存在がバレた!


「君につけていた我が家の侍女が、バレバレな場所に隠されているのを見つけて、子供かっ! って思わず叫んだそうだよ。

 それと侍女は悪いとは思ったみたいだけど、読めない文字で書かれている物なんて不穏な物だから、私に報告が来たんだ。 すまない」


「いやーーーー!!?」


 あの場所は男子のベッドの下並の隠し場所だったの!?


 それと日本語で書いたアレはこの国の人にとっては難しすぎる暗号みたいに見られて、読めないはずなのに!!


「たしかに解読の魔法をかけても効果はなかったけど、翻訳(ほんやく)の魔法をかけたら読めるようになったからね。

 それでどこかの国……いや、別の世界の言葉なんだろうとは理解できたよ」


 あああああ、そうだった!!


 ここは魔法がある世界じゃん!!


 しかも結構ご都合主義的な魔法がありふれてる世界!!


 なにかの拍子にノートがバレて、コピーをとられて、翻訳されたんか!!


「予言書を読んで分かったんだ。 君の知識をこの世に出しても良い形になるよう気を遣ってくれたことも」


 そりゃあね!

 王政で階級社会のこの国で、王がいなくても国ができる民主主義とか唱えたら、それだけで命が危ないからね!

 そりゃあ出す知識は選びますよ!


「あの書にあった、我が国で起きる災難をあらかじめ国王陛下へ奏上(そうじょう)し、事前に対処できた功績は大きい」


 えっ!? あの最後の盛り上がりのために無理矢理取りつけたようなポッと出情報の、王都の地下に封印された強力な悪魔が目覚めるイベントとそれを実行する悪魔崇拝者達は、事前に対処できたの!!?


 うわー、見たかった!!


「悪魔の対処に同行させたクリスにはその功績で爵位が与えられ、婚姻相手は陛下が考えて下さるだろうから、私がクリスと婚姻する未来は絶対に無いだろう」


「ま、まままま!?」


 マジで!?


 なんかわたし(わーし)のノートが、ひとりでに大活躍してた!!!


「だから、君は何も心配はいらないよ」


「まっ! まっ! まっ!」


 待って待って待って待って!


「な!? な!? な!?」


 なんでわーしにゆっくり寄ってくるの!?


「ち! ちちちちち!!」


 近い近い近い近い近い!


 なんか(うる)んでて情熱的な目でまっすぐ見られてる!!


「わわわわ!!! わー!」


 わーし、前世も含めてこんなの経験無いし!


 貴族の娘は純潔がーとかうるさくて、そんな(つや)っぽい顔への耐性が無くなってるし!


「つつ!!」


 つーか今はお昼!! こんな時間から変な空気を作ろうとするな!!



「ははは。 夫婦になったんだし、その初日なんだから、変な空気になっても良いんじゃないかな?」


「なん!? なん!? なん!?」


 なんで!?


 なんでわーしがパニクってまともに喋れてないはずなのに、何事もなく会話ができてるの!?


「君が慌てだしてから、言葉が全部口から出てるよ?」



 いやーーーーーーーーー!!!!?



「それに、言ってなくても何が言いたいのかがなんとなく分かる時もある位には君を見つめているから、隠し事は出来るだけしないでね」



 ぎゃーーーーーーーーーーーー!?!?




 主人公が苦労したのに失敗した……と見せかけて幸せ乱発でパニックの局地。

 ……ってだけを目的としたブツなので、なにも考えてません。 


 あとモノローグの口調が変わるのは、前世からの地が出てきている表現です。

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ、お幸せに(笑)。
[良い点] 色々と画策して意中の男を手に入れるライバルキャラ。しかしその結末は空しいものだった。 というキャラのIF物語とは、なんとも捻ったお話。 ライバル転生で勝って結ばれてハイ終わりではなく、夫…
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