秋おたふろ 2023 ハル プロフ文
「VJ君、私と付き合ってくれませんか?」
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「はぁ、どんどん点数が下がってる。どうしよう…」
高校に入学して2度目の桜が散るころ、僕は深いため息をついた。
2年生になって初めての中間テストで全科目で平均点を大幅に下回った。毎日勉強をしているはずなのに、どうしてなんだろう?このままじゃいけないことは分かっているのに、どうしたら良いか分からない。
「うぃーっす。おはようVJ!今日もしけた面してんな!!どしたん?話きこか?」
「おはよう。相変わらず朝から元気だね…..」
こいつは友人のユウ・ジン。小学校からの付き合いで、なんと11年間連続で同じクラスである。昔から勉強も運動もできて、そりゃ異性からモテるやつだ。
「実はテストの点数が1年の途中からどんどん下がってて、勉強はしてるはずなのに……..最近は部活の方でも調子が出なくて、何をやってもうまく行かないよ」
(とりあえず相談してみたけど、なんでもできるコイツには共感できないんだろうなぁ)
ぼんやりと考えていたが、ユウ・ジンらしい勢いのある返事が聞こえた。
「そりゃお前、独学で勉強してるからじゃね?」
「いや、まぁそうだけど、塾にでも行けと?」家にそんなお金はない
「いやいや、そう早まるなって。お前、VIRTUAL DJ PROって知ってる?」
「ヴァーチャルディージェープロ?」
何それ?と聞き返す前にユウ・ジンは女子グループに呼ばれて行った。流石、人気者は違うな。
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キーコンカーコン、下校時間を知らせる鐘が鳴る。今日は部活がオフのため、真っ直ぐ帰ろうと下駄箱に向かっていた。その時、馴染みの光景を目撃した。
「マ・ドンナさん!ずっと前から好きでした!俺と付き合ってください!!」
「ごめんなさい。好きな人がいるので…」
またか、と思いながら靴をはく。彼女はうちの学校のマドンナである、マ・ドンナさんだ。なんでも入学以降100人以上から告白されたらしい。クラスメイトということもあって、見慣れた光景にもはや驚きはしないが、好きな人がいるという点は初耳だった。
「マドンナ様の好きな人とか、一体何者なんだよ、まさかユウ・ジンか?それにしても下駄箱で告白はないだろ….」と思わず呟く。確かにあいつとならパワーカップルにでもなれそうだと思い帰宅した。
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「ただいま〜」
「あ、おかえりお兄ちゃん」
帰宅後、顔があまり似ていない妹が出迎えてくれる。
「最近元気ないけど、どしたの?」心配そうな顔をしながら妹が訪ねてくるものだから、最近の悩みを伝えた後に、ふと思い出して聞いてみた。
「そーいや、ヴァーチャルディージェープロって知ってる?ユウ・ジンから勧められたんだけど….」
「もちろん知ってる!ってか、私も同じやつおすすめしようとしてたよ!」
「そうなんだ。分かった。ありがとう。調べてみるよ」
そう答え、しばらく雑談していたら夕食の時間になったので、家族皆でご飯を食べた。
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入浴後、自室で「ヴァーチャルディージェープロ」と検索したら謎のソフトを見つけた。
どうやら学校の勉強のサポート等をしてくれるソフトらしい。音楽や映像を流す機能もついているらしいが、あまり使わないだろう。
恐る恐るソフトをダウンロードしてみた。
CUE?SYNC?Zone to copy?さっぱり分からない……..
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翌日の授業中、教師から目が合ったとの理由で指名され、黒板の問題を解くよう指示された。かなりの難問と言われ皆の前で解くことに緊張していたが、僕はすぐあることに気がついた。
「あっこれ、昨晩VIRTUAL DJ PROでやったところだ」
問題をさらっと解いたからなのか、教師もクラスメイトも驚いている。唯一驚いていなかったのは、僕にVIRTUAL DJ PROを教えてくれたユウ・ジンだけだ。
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休み時間になると
「「お前さっき、「これVIRTUAL DJ PROでやったところだ」って思っただろ笑」」と元気な声でユウ・ジンが話しかけてきた。
「うん、そうだよ。めっちゃびっくりし」と僕が言い切る前に
「実はこのソフト、定期テスト対策もバッチリなんだぜ!他にも……..」しばらく熱く語っていたが、僕はもうVIRTUAL DJ PROの良さが分かっているので話半分で聞いていた。
やがてユウ・ジンの話が落ち着いてきた時
「VJ君、さっきの問題があんなにすらすら解けるのすごいね!」と声が聞こえた。振り返ってみると、なんとあのマ・ドンナが話しかけてきた。
「あ、ありがとう。そんなことないよ」
「またまた〜普段どんな勉強してるの?」
学校のマドンナが告白以外で異性と2人で話してる姿は物珍しいらしく、クラスメイトの視線が突き刺さる。
「recordbox 5.8.6を使ってるよ」
居た堪れなかったので、そう答え足早に教室を出た。
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数ヶ月後
VIRTUAL DJ PROを使い始めてから、成績が飛躍的に上がった。部活の方もスランプに陥っていたというのに、レギュラー奪取まで調子を上げることができた。
前はあんなに落ち込んだのに、人生とはわからないものだ。そんなことを考えながら学校に着くと、下駄箱にピンク色の手紙が入っていた。
【放課後、屋上に来てください】
正直、面倒くさい。今日は部活がオフだから、家に帰って最近ダウンロードしたresolume というソフトをいじる予定があった。ここ数日、顔が似ていない妹が僕を見る目が変わったように感じ、ユウ・ジンに相談したらresolume というソフトをおすすめされたのだ。
「resolume で妹との関係構築を勉強しようとしたのに….」と悪態をつきながらも、ユウ・ジンから行けと言われたので、放課後の現在、屋上への階段を登っている。
ドアを開けると、そこにはマ・ドンナがいた。
(まさか、前適当にrecordbox 5.8.6と言ったのがバレたか!?)不安になりながらも
「どうしたの?マ・ドンナさん?」と尋ねると、彼女はおもむろに答えた。
「VJ君、私と付き合ってくれませんか?」
続く?
参考資料(進◯蝉)