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癒しの花よ

作者: 空川 億里

 22世紀の未来。地球人の乗る宇宙探査艦が、未知の惑星を訪れた。そこは自然に恵まれた土地が広がっている。昆虫はいたが、哺乳類や両生類、爬虫類等の動物や、人類のように高度な文明を持った先住民はいなかった。

 様々な花が惑星の大地を彩っている。その中でも、特に気になった花がある。黄色く麗しい花だ。見るだけで他の花よりなぜかとても癒されたので、探査艦の艦長は持ち帰ると決めた。艦長は、花に『やすらぎ草』と名づける。

 やすらぎ草は地球に運ばれ、栽培された。観た目も美しいし、寒冷地でも砂漠でも場所を選ばず育つので、世界中に植えられたのだ。

 花はやがて実をつけたが、この実も美味しく栄養価が高いので、全世界の果物売り場に並ぶようになった。やすらぎ草の癒し効果の原因は、地球の最高の科学者達が研究してもわからなかったが、観る者のストレスを大幅に減らす効果があるため自殺や犯罪が激減する。

 まさに夢の花だったが、予想外の副作用があった。他の植物に比べ地中の養分を多く必要とするため土地が枯れ、他の作物や草木が育たなくなったのだ。やすらぎ草の繁殖力は強く、人の手を借りなくてもどんどん繁茂していった。代わりに他の植物は、バタバタと枯死したのだ。

 事態を重く見た地球統一政府はやすらぎ草の栽培地を限定し、他の場所に根づいた物は刈り取ったり、焼却すると決定する。早速刈り取りや焼却、除草剤を使った作業が開始されたが、思わぬ展開が起きたのだ。

 それまで黄色く鮮やかな花を咲かせていたやすらぎ草が突然墨でも塗ったかのように漆黒になり、周囲にまるで闇から生まれたかのような黒い花粉を撒き散らしたのだ。その花粉を浴びた人間や動物は次々と倒れて亡くなった。

 何しろやすらぎ草は今や地球上のあちらこちらにあったから、人類も動物もどんどん死んでいったのだ。科学者達はやすらぎ草の花粉に含まれた毒を研究しようとしたが、その結果が出る前に人類の半数以上が亡くなった。

 黒い花粉には金属やゴムを劣化させる成分も含まれてたのが発覚する。自動車やバイクや自転車はパンクして動かなくなり、電車も線路が劣化して走れなくなった。流通は停止した。

 飛行機やヘリコプターも故障して動かなくなり、工場は機械が故障して、生産ラインが止まってしまった。22世紀の地球上で活躍していたロボット達も壊れて動かなくなったのだ。宇宙船の推進装置もいかれてしまい、地球から人類を逃がす事もできなくなる。

田畑の作物が全て枯死し、家畜も全部死んでしまい、地球にいた人類は全員が死亡したのだ。最初に未知の惑星でやすらぎ草を発見した艦長は、宇宙からそんな地球の有り様を見て、戦慄に慄いていた。

 大方この花は兵器として開発されたのではなかろうか? それが何らかの原因であの惑星全体に拡散し、花を作った惑星の住人を滅ぼしたのだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 衝撃的な展開にドキドキしながら読ませて頂きました。 綺麗な花にはトゲがあるということですね。 そのネーミングとは正反対の結果を招いてしまったこの花ですが、変貌を遂げる様が劇的で、何だか映画で…
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