4話「新たなる縁」
あれから数ヶ月が経った。
私はというと、実家で暮らしながらたまたま友人の誘いで参加したパーティーにて良家の子息であるアドミッドと知り合いになった。
そして今、彼とは、定期的に二人で顔を合わせるような関係となっている。
パーティーで声をかけられてから、もう何度も二人で会った。ちなみに具体的な内容としては、お茶を飲める店へ行って語らうことが多い。それほど深い関係に急激に発展したわけではないけれど、でも、だからこそ信頼できるし穏やかな心で向き合えている。
「またお会いできて嬉しいです、アドミッドさん」
「こちらこそ。今日も色々お話しできればとそう思っています」
黒い髪から落ち着いた雰囲気を漂わせる青年だ、アドミッドは。
こうして向かい合って席についているだけでも何となくほっこりできるようなそんな気がする。
「この店、僕の好きな店なんですよ」
「そうなんですか」
今日入ったのは初めての店だ。
どことなく数十年前を想わせるような装飾が懐かしさを感じさせる店である。
「紅茶が結構良い味で。昔から家族でよく来ていて、それで、貴女ともそろそろ来られたらなと思いまして」
「それで誘ってくださったのですね」
「ええ、そうなのです。しかし……好きな店を紹介するというのは少々緊張してしまいますね」
それからも私たちは色々語り合った。
彼といる時、話を聞くことはそれほど苦痛ではない。むしろもっと聞きたいとすら思うほどだ。それは多分、彼が私にとって愛しい人で、また、彼の喋り方も嫌みがなく面白いものだからだろう。
向かい合って喋る。
ただそれだけ。
なのに時間はあっという間に過ぎていってしまうのだ。
「今日もありがとうございました! 色々お話しできて楽しかったです」
「僕もです」
もう夕方になってしまった。
どこか切なげな夕陽が二人の背を照らしている。
「本当ですか……! なら良かった、退屈させてしまっていないか少し気になっていたので……」
「いつも楽しく過ごさせてもらっていますよ」
「また、今度会いません?」
「良いですね! そろそろ少し遠出なんて……そんなのも、どうでしょう?」
アドミッドは少し気まずそうな顔をしつつ提案してきた。
その頬が微かに赤らんで見えるのが照れゆえなのか夕陽のせいかは定かでない。
「ぜひ!」
軽く、そう答えた。
「少し遠出って、たとえばどういったところへ行くものでしょう?」
いざ考えてみると案外何も思いつかない。
「具体的にはまだあまり考えていないのですが……」
「日帰り旅行とかですか?」
「ああ、そうですね、そういうのも良いですね」
アドミッドの顔に光が生まれる。
「良さそうなところを探しておきましょうか?」
「え」
「ピックアップしてみて、それから、アドミッドさんに相談してみますよ? それでも大丈夫でしたら、ですけど」
今は気を遣い過ぎずわりと気楽に話せる。
歩いているからなおさら。
「本当ですか!」
「大丈夫ですか?」
「え、ええ! もちろん! そして、詳しいところは後から相談しましょう!」
肩の力を抜いて関われる相手というのも良いものだ。
「ではそうしてみますね」
「アイリスさん、ありがとうございます! ああ、もう楽しみになってきてしまいました」
彼は意外にもワクワクを隠さない。
「……ふふ、気が早いですね」
思わずそんなことを言ってしまって――それから二人で笑った。