10話「新たなる日常」
あれから数年。
ウェッジもモルフィアもいなくなった平穏そのものな世界で私は生きている――そう、夫となった男性アドミッドと共に。
子にも恵まれ、今は、忙しくも楽しい日常の中にある。
「アイリスさん! おむつチェンジしたよ!」
「えっ、本当に!?」
「前に教えてもらった通りにやってみたらできたんだ」
「ええっ、助かるわ、ありがとうアドミッド」
「いえいえー」
まだ幼い子、自力では何もできぬ小さな命。それを守るために日々世話をするというのはなかなか簡単なことでない。が、それでも、子を愛おしく思う心に変わりはない。あれこれ騒いでいても、愚痴をこぼしていても、だ。
ちなみに、わが家は幸い夫が色々協力してくれるので、これはまだかなり幸運な方だろう。
何とか日常が回っている。
アドミッドが手のかかる幼子のいる生活に理解を示してくれる人で良かった……もしそうでなかったらきっともっと大変な目に遭っていたことだろう、板挟みになったりして。
「食事どうする?」
「私が作るわ! でももう少し待って」
「オッケー。じゃ、待ってるね。その間に掃除でもしてくるよ」
「助かる!」
私たちは今家族だ。
だからこそ互いを支え互いを大事に思って行動しなくてはならない。
それができなければ、多分家庭は崩壊する。
「アドミッド! 料理できたわ!」
「え、もう!?」
「ええ、さくっと作れるように昨日の夜準備しておいたのよ。他には一品」
「備えが凄い!!」
「ふふ、なかなかやるでしょ?」
「やるやる! 最強だよもう!」
「いつもそう言ってくれてありがとう、アドミッド」
彼とならきっと希望を見つけながら一歩一歩進んでゆける――結婚した今ですらそう思っているのだから、縁とは実に面白いものだと思う。
私たちが巡り会えたのはある意味奇跡ではないだろうか。
こんな仲良しでいられるなんて、夢でもみているかのよう。
「あ! これ! 好きなやつ!」
「前に言っていたから、思い出して、それにしてみようかなって」
「えー! 嬉しいー!」
「まだあるからおかわりもできるわ」
「やった! じゃあ、いただきます」
「どんどん食べて」
「アイリスさんは?」
「私はちょっとあの子を見てくるから」
「はーい」
◆終わり◆