理想の社会
世の中は苦悩であふれている。富める者、貧しい者、それぞれに苦しみがあり嫌なことがある。とある聖職者が言った。
「神の下では全てが平等である。現世での試練を受けた者のみが死後神の下に行けるのである。」
その言葉で信者は増えたが問題の根本的な解決にはなっていなかった。また、とある成り上がりが言った。
「貧しい者の価値観を持ちながら富裕になれば幸せになれる。」
しかしそう言った本人が富裕な者の価値観を持ち過去のように苦悩するようになった。
人々は悟った、救世主は居ないのだと。しかし成り上がり者の言うことに光明を見出した。現世に楽園が存在しないのなら現世を楽園と思おう、と。
人々は科学力を総動員し人間の価値観を変更することに成功した。これによって人々は自分の姿が好きになり妻や夫が最も好みのタイプになり日々の食事を最高の美食に感じるようになった。しかし問題が残った。人口爆発で増えた人を受け入れるには地球は小さすぎた。科学者が言った。
「子供を産まなくても幸せになれるようにしよう。」
そのようになった。
しかし事故や病により親しい者が亡くなった者は苦しんだ。ある人が言った。
「人が亡くなっても幸せになれるようにしよう。」
そのようになった。
世の中は空前の人口減少期になった。このまま行けば人類は絶滅してしまうだろう。しかし誰も問題に感じなかった。だって、今が幸せだから。