第23話 キスティの今後
朝食を終えると今後の話しをする為にマルスティの執務室を訪れた。
「マルスティさん。おはよう。・・・どうした?」
「やぁ、おはよう。ふぁ~、・・・すまないね、昨日の家族会議が長引いて少し眠いんだよ。」
「何時までやってたんだ?」
「ん?確か日が変わって・・・、あれ?何時までだっけ?」
「・・・はぁ、随分遅くまでだった様だな。」
「まぁ、今回の事は家にとっては大変な事ばかりだったからね。」
「あぁ、そうだな。・・・マルスティさんに話しがあったんだが、疲れている様だからまた後にするよ。」
「ん?話しなら聞くよ?」
「急ぎじゃないから、後でも構わないんだが?」
「良いさ、話している内に目も覚めるだろうしね。」
「分かった。少し先の事になるが、俺たちは旅に出ようと思っているんだ。ダンジョンの騒動も終わったし、俺がダンジョンに来た目的は果たしたからな。」
「シロウの目的?」
「ああ、修行に加えてスキルカードとマジックバッグを探す事、それと複合スキルの内容を確認する事だな。」
「・・・マジックバッグは見つけて無いよね?」
「まあ、ポーチがあるからどうしても必要って分けじゃない。」
「そうか、シロウには帰りの護衛を頼もうと思っていたんだが。」
「長く待たされないなら引き受けても構わないが?」
「・・・どの程度の間なら待てる?」
「長くて2週間ってとこかな。」
「・・・2週間か。」
「時間がかかりそうなのか?」
「まぁ色々とね。エルネスの事は大事だが王家からの褒美と言う形だから問題は無い。けど、キスティが問題なんだよね。」
「キスティさんの何が問題なんだ?」
「シロウは忘れている様だけど、キスティの婚約者の事だよ。」
「あぁ、けど、イルルト以外に2人いただろ?どちらかに決まらないって事か?」
「いや、多分どちらも選ばないだろうね。」
「ん?何故だ?」
「シロウは陛下の話しを聞いてただろ?王女殿下の婚約者を選定する際にベリザリオが関わっていた可能性があると。」
「ああ、それがあったから手が出せなかったって言ってたな。・・・もしかして、キスティさんも?」
「まだそこまでは分かってないが、彼らの家が消極的になったのはイルルトが候補に入ってからだからね。ベリザリオに脅されていた可能性は高い。」
「けど、脅されていただけなら問題は無いんじゃ?」
「仮にインライネン家とスオルサ家が脅されていたとしても婚約に難色を示した。こちらからしたら、そんな家にキスティを嫁がせても腫物扱いされて幸せになれるとは到底思えない。」
「あぁ、確かにそうだな。そうなると始めから選定し直しって事か。」
「それが、それすらも難しいんだよ。」
「は?何故?」
「ははは、シロウは地位とか名誉とかには疎いよね。良いかい?キスティは今回のダンジョン争奪戦でシロウ達を率いて複合スキルカードを発見した言わば”英雄”なんだよ。」
今までは迷宮伯の令嬢としてダンジョンの利権と絡めた婚約にならない様に慎重に婚約者を探していた。
そこに、今度は英雄の称号までついてしまった為に、ダンジョンと名誉に惹かれて婚約を申し込む貴族家や逆に萎縮してしまう貴族などが出る。
これでは、いつ選定が終わるか分からない。
「あまり気乗りはしないが、どこかの側室かもしくは後妻にする必要が出てくるかも知れないんだよ。」
「・・・何でそんな事になるんだ?」
「キスティの影響力を抑える為には条件の悪い所の方が他の貴族を納得させやすいからね。」
「何だか・・・、キスティさんが報われないな。」
「まあ、1つだけ手が無い分けでは無いんだよ。」
「その手とは?」
「それは、キスティをヘリスト家から除籍する事だよ。」
「は?除籍ってどう言う事だ?」
キスティをヘリスト家から除籍する事でダンジョンに関わる影響を排除すれば、あとは”英雄”と言う称号が残る事になる。
その称号だけであれば、その後に結婚したとしてもヘリスト家に影響は出ない。
除籍後は生みの親であるキュオスティ・ヘリストが所属している王宮近衛騎士団の後宮守護隊に入れる事もできる。
”英雄”の称号がありキスティ本人も騎士としての鍛練をしていたので問題は無い。
「キスティさんの母親の事を始めて聞いたんだが、近衛だったんだな。」
「あれ、言って無かった?」
「いや、聞いて無いな」
「まあ、キュオスティさんは年に1度ぐらいしか帰って来ないから、わざわざ話す事も無いんだけどね。」
「それで、キスティさん本人はどうしたいと?」
「それが、”任せる”と言われてしまってね。だから悩んでいるんだよ。」
「ヘリスト家に残して条件の悪い所に嫁がせるか、除籍して騎士団に入れるか。どっちが幸せになれるんだろうな。」
「ああ、もう1つあったか。」
「もう1つ?」
「そう、シロウ達みたいに冒険者になるのも良いかも知れないね。」
「いや、冒険者って。」
「そうかな?シロウを見ていると冒険者も悪くないと思うけど?」
「まあ、そう思うなら好きにすれば良い。」
「もし、キスティを冒険者にするならシロウはパーティに入れてくれるかい?」
「キスティさんをか?」
キスティさんの実力は冒険者で言えばCランクはあるが、ヴァルマやスヴィと比べると弱い、だが仙境の事を知っているから行動の邪魔になるような事はない。
「・・・それは、本人次第だな。」
「まあ、それでも妹を預けるなら能力かあって信頼できる所が良いからね。」
「はぁ、過分な評価をありがとう。」
「ははは、複合スキルカードを発見した”英雄”なんだからもっと自信を持っても良いと思うけどね。」
「英雄、ねぇ。まあ良い、決まったら教えてくれ。」
「ああ、分かった。」
マルスティとの話しを終えて部屋に戻るとヴァルマとスヴィにエルシュラがいた。
「皆、揃ってたんだな。」
「シロウ、する事が無くて暇だぞ。」
「うん。」
「そだね、此処にはダンジョンも無いし。」
「マルスティさんに話しをして来たんだが、まだ時間がかかりそうなんだ。」
「何かあったのか?」
それから、マルスティと話したキスティの今後についてを3人にも聞かせた。
「う~ん。変な奴と結婚するぐらいなら、騎士とか冒険者で良いんじゃないか?」
「まぁ、ヴァルマがそう思うのは分かるけど、キスティさんは貴族の考え方をするから、どう言う結果になるかは分からないな。」
「そか、貴族って面倒だね。」
「まあ、そこは俺たちが踏み込む所じゃないさ。」
「そだね。」
「それより俺たちの今後を決めておきたい。」
『バン!』
「シロウさん!」
「キスティさん、前にも言ったけど、いきなり扉を開けるのは淑女としてどうなんです?」
「うっ、ですが。シロウさんは気付いていたでしょう?」
「ええ、まあ。それで、どうしたんです?」
「シロウさん、わたくし冒険者になります!」
「は?」「え?」「ん?」「ほ?」
「シロウさん、わたくし冒険者になります!」
「いや、二度も言わなくて大丈夫です。どうしてそんな結果に?」
「シロウさんについて行けば強くなれるかな、と思いまして、その、・・・ダンジョンでは全く役に立てませんでしたし。それに、何より冒険者として旅をするのは楽しそうではありませんか?」
「は?・・・楽し、そう?」
この世界に来て、始めは森の中で食べ物を探しながら町に向かって、ヴァーラの町に着いたらお金が無くて冒険者を始めた。
それからラヴィネンでヴァルマと出会って修行をした。
ヘリストに来てからはヴァルマと2人でダンジョンに潜って、それからCランクに上がって、その後スヴィに出会った。
それから、ダンジョンでキスティを助けたら護衛の依頼をされて、王都に行けば今度はエスコートを頼まれ、挙句の果てにはダンジョン争奪戦。
お金が無くて忙しかったり、巻き込まれて忙しかったりで、忘れていた。
「・・・・・・ふ、ふは、ははは。ああ、そうか、楽しそうか。」
「シロウ?」「シロ?」「シー君?」
「・・・シロウさん。駄目でしたか?」
キスティの話しを聞いて、この世界に来た時に”折角だから旅をしよう”そう思った事を思い出した。
「ああ、良いじゃないか、楽しく旅をするのも良いじゃないか!」




