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世界でただ一人の種族はチートだった  作者: どんぺった
第1章 不如意なる人生
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第8話 初仕事

「まぁ、そんなに落ち込むなよ!どうせこのあと依頼を受けるんだろ?」


「うぅ、そうなんだけどもさぁ~。何というかこの無駄な事をしていたのが、何とも・・・なぁ。」


「はぁ、・・・分からなくもないが、そんなんじゃ仕事にならんぞ!」


「・・・・・・そうだな、・・・うっしゃ!ここは切り替えて仕事をしよう!」


「そうしろ。それでどの依頼をこなすんだ?採取か?それとも討伐?」


「う~ん・・・、まずはフォレストリザードの討伐かな?肉の分もあるから金額も高めだしな。薬草は見つけたらついでに採取してくるさ。」


「そうだな、1体銅貨1枚だから割も良いし、シロウなら大丈夫だろ。頑張れよ。」


「おう!いっぱい狩ってくるさ!じゃ行ってくるな、ごっそさん!」




ようやく食事ができて仕事も得られたのだ、あとは働けば良い。





ギルドを出てから町の北にある森に行く、この森は”リザードの森”と呼ばれリザード種が多く住んでいる。


また熊や猪などは山側の森に住んでいて、森の浅瀬にはフォレストリザードぐらいしかやって来ない。


そのため森の浅瀬は新人冒険者が採取や討伐にやってくる場所になっていて、山や森の奥に進むにつれてランクが上がる。



「さてと、始めますか周辺感知!・・・う~ん、何匹かいるけど、近くに人の反応もあるな、冒険者か?」



普通は痕跡を探したり待ち伏せしたりで苦労するのだろうが、周辺感知を使えば見つける事は簡単なので、それならばと見つけた冒険者が狩りをするところを見学させてもらおうと冒険者の方に向かった。





(お!見つけた!)



若い男性2人組の冒険者で剣士と弓士の様だ。


すでに獲物を捉えているらしく音を立てないよう慎重に、ゆっくりと挟み込む様に移動している。態勢が整ったようで弓士が矢を構えた。



(まずは弓で攻撃、外れたら剣士の方に追いやる・・・かな?)



放たれた矢は手前の地面に突き刺さり驚いたフォレストリザードは逃げ出した、そしてすかさず弓士は威嚇しながら追いかけ剣士の方へ追いやる。


待ち構えていた剣士は近づいて来たタイミングで剣を突いたが、フォレストリザードは一瞬速く進路を左に変えた、剣士は慌てて横薙ぎを放ったが、そのまま逃げられてしまった。



「あぁ!すまん!逃げられた!」



剣士の男性はそう言って謝った。



「はは、仕方ないさ。・・・俺も外したしな。落ち込んでないで、次を探すぞ!あと1匹は狩らないと!」



苦笑いしながら弓士の男性は応え、その後荷物を持って2人はその場を後にした。



(う~ん。なかなか難しいみたいだな。前に戦った時は向こうから襲ってきたから返り討ちにしたが、群れだったから襲って来たんだろう。足は速かったから追いかけるより襲ってもらった方が手っ取り早いか?そうすると単体より群れを探した方がいいな。)



その後、群れを見つけたが3匹程度だとすぐに逃げてしまう事が分かったので、逃走する分も含めて5匹以上10匹以下の群れを探す事にした。




なかなか条件に合う群れが見つからなかったが、1時間ぐらい探してやっと発見した。



(おぉ!いるな。・・・全部で8匹か。これなら襲って来るだろう。)



それから荷袋を置いて、剣を片手にゆっくりと慎重に近づいていく、変に奇襲をして逃げられたら面倒だ、襲ってもらうのが目的なので隠れずに気付かれやすい様に移動する。


全てのフォレストリザードがこちらに気付いたが、まだ逃げ出さない。


頭を下げてこちらの様子を窺っている、そして少しづつ囲む様に広がって行った。



(よし!ここまでは目論み通りだ。)



フォレストリザードは少しづつ包囲を縮めてくる。


そして後にいる1匹が「クァ!」と鳴いた、それを合図に前後2匹ずつ計4匹が一斉に襲ってきた。


シロウは周辺感知を使ってその様子を確認し、バックステップから振り返り後方から来た2匹の首を横一線で同時に断ち切ると、即座に反転し前方から来た2匹の首も同様に切り落とした。


そして勝てないと悟ったのか、他の個体はそのまま逃げ出し戦闘は終了した。



「ふぅ、・・・よし!身体強化が無くても問題は無いな。」



戦闘終了後に周辺感知で他の敵がいないかを確認してから脱力した。


身体強化を使わないのは修行の一環で、今は技術向上に努めているのだ、ただしスキル自体の強化も必要なので移動時のみ使用している。



「これで、銅貨4枚・・・か、それなりの成果だな。」



その後血抜きをしてから獲物の足を紐で縛り、そこら辺にあった木の棒に吊るして持ち帰るのだった。






「よう!パーヴォいるか?獲物狩ってきたぞ!」


「シロウ!?随分と速かったな!」


「そうか?結構時間かかったと思うんだが・・・。」


「フォレストリザードは逃げ足が速いからな、見つけるのも狩るのも難しいんだよ。」



戦闘は数分で終わったが、探しては逃げられを繰り返し4時間かかった。


探索に時間がかかるのが普通なのだろうが、周辺感知を使えば探すのはそれほど苦労しない。


今回時間がかかったのは何匹いれば襲い掛かかってくるか確認する必要があったので時間がかかったのだ。



「あぁ、確かに何度も逃げられたが何とか仕留めたよ。じゃ解体してくれ。」


「おう、4匹か。解体料金は1匹2青銅貨で全部で8青銅貨になるが良いか?それとも自分で解体してみるか?」


「そうだな、何事も経験・・・か。ん!やるよ、教えてくれるんだろ?」


「ああ、これも研修だからな!」




解体作業は午前中に説明されていたので手順は把握している。


ただ実際に作業すると刃の立て方が少し違うだけでずれてしまったり、綺麗に切れなかったりで最初の1匹目は酷いものだったが、何とか解体が終わる頃には綺麗に解体できるまでに上達した。



「ふぅ、何とかできたな、最初の1匹は・・・。」


「はっはっはっ!初めはこんなもんだぞ、一応でも解体の経験があったから、まだましな方だ。最初のは授業料だと思って諦めな!」



そう言ってパーヴォはまた頭をポンポンと叩いた。



「そうだな。それで、あとはどうすればいいんだ?」


「ああ、ちょっと待ってろ。」



パーヴォはカウンターに行って何やら紙に書き込み、その紙を持って戻ってきた。



「これを受付に渡せば支払いをしてくれるぞ。」



その紙は受領書で”引き取り済:フォレストリザード:4匹:銅貨3・青銅貨5”と書かれていた。



「そうか、ありがとな。じゃぁまたな。」


「おう!今日はちゃんとメシ喰えよ!」


「ぶはっ!?一言余計だ!」



ギルドの受付にパーヴォに渡された受領書を提出して、この世界で初めてのお金を手に入れた。


そして食事をしてから隣の宿泊所に行き今日は休む。


今後を考えればなるべくお金を使いたくないが、この世界の常識に疎い状態での集団部屋は、何が起こるか分からないので個室を借りる事にした。



「お部屋は7号室で、こちらが鍵になります。」


「あぁ、それで明日の昼までに部屋を空ければいいんだよな?」


「はい、その通りです。」



受付の男性に話を聞いたところ、宿は基本的に連泊ができないと言われた。


毎日昼前には宿を出て宿泊も午後3時にならないと入る事もできないらしい。


冒険者は朝から夕方まで働く人がほとんどなので、この間に掃除などを行うからだそうだ。


ただし怪我や病気で動けない場合は連泊できるとの事だ。




部屋に入ると左側にベッドがあり正面に小さな机と椅子があった、2畳程度の広さだが何と言っても”ベッド”である。


転移してからずっと地面で寝ていたのに比べれば、薄い布団と毛布でもベッドがあるだけ天国だ。


荷袋を下ろしてマントと剣と防具を外して椅子に座り、ふと窓から空を見る。





「月は1つ・・・か、2つあったりはしないんだな。・・・でも綺麗だ。」





この世界に来てからずっと気を張っていたので気にもしていなかったが、ようやく落ち着ける場所に来て景色を見る余裕が出た。


周囲は自然が多く夜には月と星が良く見える、都会育ちには感動するほどだ。






「さてと、手持ちは残り銅貨2枚に青銅貨3枚か。」


1食が青銅貨2枚で1泊が銅貨1枚、つまり1日に必要なのは”銅貨1枚・青銅貨6枚”という事だ。


今日の仕事で稼いだのが”銅貨3枚・青銅貨5枚”、町に入るのに銀貨1枚とギルドの正式登録にも銀貨1枚の合計銀貨2枚が必要だ、他にもお金がかかるので可能なら金貨1枚は欲しい。



(明日からは午前と午後に分けて2回にすれば倍は稼げるか?しかしそうなると解体している暇がないな、その分は数で補うか。)



そして、ベッドに入り冒険者としての初日を終えた。


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