第22話 褒美
謁見が終了し侍従に案内されて会議室に移動した。
「これで、今後はあいつ等に煩わされなくて済むな。」
「けど、まさか謁見の間でこんな事になるとは思わなかったよ。」
「俺もだ、それに舞踏会の時の魔物騒動までベリザリオの仕組んだ事だとは思わなかった。」
「ああ、私もだ。流石はSランクだよね。」
「兄上、その騒動では村が壊滅したと聞きました。」
「あぁ、まだ防壁が完成していない村だったらしくてね。村民は魔物の襲撃を恐れてすぐに村から逃げたから人の被害は無かったけど村は作り直す必要がある。」
「なるほど、最悪は免れたと言う事ですか。」
「それでも村民達は苦労して作った村が無くなったのだから、さぞかし無念だろうね。」
「ん?誰かが来るみたいだ。」
周辺感知に反応があったので、立ち上がって迎える。
「よう!待たせたな。」
『陛下!?』
「私もいますよ?」
『ビルティナ王女殿下!』
ノックもせずに扉を押し開けたのはサンアーロ・ヴァロ・エクルース国王だった、それとビルティナ王女殿下も一緒だ。
「まあ、座れ。」
「は、はい。し、失礼します。」
「もう、謁見じゃねぇんだから、そんなに緊張すんな。」
「お父様、その様な言い方は宜しくありませんよ?」
「固い事を言うな、アレは疲れんだよ。」
「ふふ、仕方がありませんね。」
「へ、陛下?」
「ん?まあ、お前達も気にするな。アルマスと話す時も大体こんなもんだ。」
「・・・、父上。」
「はっはっは、アルマスからは何も聞いてねぇか。」
「・・・はい、聞いておりません。」
「俺にも”威厳”って奴が必要だから、黙ってたんだろうよ。」
「そ、そうですね。」
「でだ、今回はお前達のお陰で俺の方も色々と助かった。」
「とんでも御座いません。我々はすべき事をしただけです。しかし、あそこまで分かっていらしたのなら、何故サロドルフを婚約者になさったのですか?」
「あぁ、そりゃ逆だ、婚約者になったから調べたんだよ。元々サロドルフは婚約者の候補に上がってなかったんだが、ベリザリオが押し込んで来やがってな。」
サンアーロ国王の話しでは、ビルティナ王女の婚約者を探している時に5人の候補がいたらしい。
そこにサロドルフは入っていなかったのだが、候補の内2人が自分たちは王女には相応しくないと辞退してしまった。
そこで、ベリザリオがサロドルフは侯爵家の子息であり王女が降嫁するには順当ではないか、と言って来た。
他の候補は伯爵家の次期当主が最上位で、侯爵家の方が爵位が高く順当ではある。
ただ、正妃の娘である長女が別の侯爵家に嫁いでいて、側妃の娘である次女を同格の侯爵に嫁がせると軋轢の元になる可能性もあるので候補から外していたのだ。
その事を説明したがベリザリオは過去にも同格の侯爵家に姉妹が嫁いだ事があり、その際にも問題は起きていなかった事を説いて来た。
確かに可能性の話しでしか無く根拠があるわけでもないので、あまり気は進まなかったが一先ずサロドルフを婚約者候補に入れたのだ。
だが、この事を知った他の貴族子息が相次いで辞退した結果サロドルフが婚約者に決まってしまった。
ここまでであれば”強引”と言う事で済ませられるが、王女の婚約者になれば当然の如く素行調査を行う事になる。
そして、その調査結果がビルティナ王女が言った”女性を犯して殺す”と言う内容だった。
「まあ、その事が分かった時にサロドルフを潰したかったんだが、婚約者の選定で他の候補が辞退した事にもベリザリオが関わっている可能性もあるから、結果が分かるまでは手が出せなくてな。それに幾らイェンナ達でも3人じゃ調べるにも限度があるし。」
「イェンナ?」
「ん?あ、・・・ゴホン、今のは忘れろ、良いな?」
「え、ええ、分かりました。」
(・・・イェンナって彼女達の事か?・・・マジで?)
「お父様、後でお仕置きです。」
「はっ!?す、すまん、・・・勘弁してくれないか?」
「無理です。」
「はぁ~。まぁ、そう言う訳で調べている間に今度はベリザリオが”ダンジョンはサロドルフに任せろ”とか言い出しやがって。しかもあいつの話しは強引だが筋が通る所があるから厄介だったんだ。」
「ええ、ですから私もむざむざ奪われるくらいならと、ダンジョンの争奪戦を提案したのです。」
「ははは、そうだな、あの時のベリザリオの顔は見ものだった、まさかヘリスト家からそんな事を言い出すとは思わなかったんだろうよ。」
「そうですね、私もシロウに提案されなければ打つ手が無い所でした。」
「は?シロウって。」
「あぁ、俺、私です。」
「へえ、なかなか機転がきくじゃねぇか。どうだ、俺の所で働かねぇか?」
「申し訳ありませんが、誰かに仕官するつもりはありません。」
「かぁ~、根っからの冒険者か、まあ、それも悪くねぇか。」
「ええ、気楽な冒険者が性に合ってます。」
「そうかよ。」
「お父様。」
「ん?ああ、そうだった、それじゃ、褒美の話しをするぞ。褒美と言えば金と女と地位だ。どれが欲しい?」
「・・・お父様?」
「っ、そうだったな、女はダメだ。」
「あの、褒美でビスティナ王女殿下をヘリスト家にと仰ってましたが、それは?」
「ああ、エルネスに降嫁させようと思ってな。」
「えっ!?ぼ、僕ですか?」
「ああ、ベリザリオも言ってただろ?”王女と共に”って、だったらヘリスト家に降嫁させても良いだろ?とは言えマルスティは既に正室がいるから、婚約者のいないエルネスに降嫁させる事にしたんだ。」
「で、ですが、僕はまだ学生ですし、次期領主は兄上です。」
「エルネス様は私の事をお嫌いですか?」
「え!?いや、そんな事はありませんよ!ビルティナ先輩は綺麗で優しくて、ですね・・・はっ!?いや、その。」
「はっはっは、これはビルティナと話し合った結果だ。」
「ふふ、学生の頃は楽しかったですよ。」
「は、はい、僕もです。」
(・・・貴族学院で甘酸っぱい青春ドラマでもあったのだろうか?それにしてもこの王女は・・・恐ろしいな。)
「ヘリスト家はそれで良いとして、実際に発見したお前達の望みは?」
「それでは、金銭でお願いします。皆もそれで良いか?」
「おう。」「うん。」「お~。」
「分かった、金なら1人白金貨30枚だ。」
「有難う御座います。」
「あとは、キスティだな、どうする?」
「・・・では、エルネスに爵位を。」
「っ、姉上!?」
「ほぅ、それで良いのか?」
「ええ、ビルティナ王女殿下に降嫁して頂けるなら、エルネスにも爵位が必要ですからね。」
「・・・姉上。」
「・・・キスティさん、ありがとう。」
「エルネス、王女殿下を幸せにして差し上げなさい。」
「はい、姉上。」
「そうだなぁ、・・・エルネスには法衣だが子爵位をやる。」
「子爵ですか。陛下、宜しいのですか?」
「ビルティナを降嫁させるには伯爵の方が良いんだが、流石にそこまではやれんし、男爵じゃ領地を付けねぇと褒美としては足らんからな。」
「陛下、謹んで拝命仕ります。」
「ああ、エルネス。ビルティナを頼むぞ。」
「は、はい!」
「よし、じゃあこれで褒美の話しは終わりだ、ビルティナの降嫁とエルネスの爵位の事は詳細が決まったらヘリスト家に書状にして送る。」
「畏まりました。」
こうして国からの褒美も決まり、ダンジョン争奪戦に関する全てが終わった。
王城から戻るとヘリスト家では家族会議が開かれたが、俺たちは参加する必要がないので着替えを済ませて部屋で休む事にした。
「はぁ~、疲れた。」
「うん、緊張した。」
「はは、2人はずっと固まってたな。」
「普通は王様なんて一生会う事なんて無いんだぞ!」
「まあ、そうだよな、」
「シー君は意外と平気だった?」
「そんな分けが無いだろ、俺だって緊張したよ。」
「そ?でも、ちゃんと受け答えできてたよね?」
「まぁ、・・・何とか、だな。」
「それでも、シロウはすげぇよ。」
「そだね、シー君はかっこ良かったよ。」
「ははは、ありがとう。」
「・・・なあ、シロウ、これからどうするんだ?」
「ん?これから?」
「依頼はこれで終わりだろ?」
「あぁ、そうだなぁ。ダンジョンでの目的は果たしたし資金もできたから、他の国に行くのも良いかもな。」
「それじゃ帝国か?前に帝国に行くって言ってただろ?」
「そのつもりだったが、ダンジョンで複合スキルカードを見つけて内容が確認できたから、帝国に行く必要は無くなったんだよな。」
「複合スキルは”魔法士”だよな?”騎士”じゃ無かったけど良いのか?」
ダンジョンで発見した複合スキルカードは”魔法士”で、内包されているスキルは[集魔・滑舌・的確]の3つだった。
集魔は仲間から魔力を集めるスキルで、滑舌は詠唱速度が上がるスキル、最後の的確は命中精度が上がるスキルだ。
便利ではあるが、これがあるからと言って特別に危険と言う事は無いと思う。
「そう言う訳で、今後はまだ決めて無いんだ。それに、今後を決めるにしても帰りの護衛を依頼されるかもしれないからな。」
「そうか。オレはシロウと一緒なら何処でも良いぞ。」
「うん、わたしも。」
「そだね、あたしも。」
「・・・そうだな、皆で旅をするのも良いかもなぁ。」




