第21話 謁見そして
王都到着から10日、ヴァルマ達のドレスも準備も終わり謁見の準備が整ったとの連絡を受けてこれから謁見に向かう。
「シ、シロウ、変じゃないか?」
「ふふ、シロ、可愛い?」
「どう?シー君。」
「うふふ、皆さんお似合いですよ。」
そして4人がドレスを披露してくれた。
ヴァルマのドレスは背中部分が肩甲骨の所まで空いている桜色のイブニングドレスで、普段とは違う淑やかで大人びた印象を受ける。
手には肘まであるレースの手袋をしていて、肩にはレース編みの黒いショールをかけてドレスの印象を柔らかいものにしている。
アクセサリーは3つの赤い宝石が縦に並んだネックレスを付けている。
「ああ、綺麗だよ、ヴァルマ。」
「そ、そうか、それなら、良い。」
スヴィは、白藍色のシンプルなノースリーブのイブニングドレスで幼さを残しながらも大人になる直前の様な清楚な印象を受ける。
手袋は手首までの物で、アクセサリーは青い宝石が1つのネックレスだ。
「おお、スヴィは可愛いな。」
「可愛い。ふふ。」
「シー君、あたしは?」
エルシュラのドレスは百緑色のカクテルドレスで裾が膝下までの長さの為に白く綺麗な足が露わになっていて、活発で健康的な印象を受ける。
手袋はしておらず、アクセサリーは翠の宝石が1つのネックレスだ。
「おお、良いじゃないか、けど、ちょっと足を出し過ぎじゃないか?」
「むふふ、ムラムラする?」
「いや、しないが?」
「なっ、酷くない?」
「シロウさん、わたくしは如何ですか?」
キスティは紅紫色のオフショルダーのイブニングドレスで露出されたれた肩とロングスリットから綺麗な足が見えていて妖艶な装いになっている。
アクセサリーは赤い宝石が5つ並んだネックレスと、同じく赤い宝石の付いたイヤリングを付けている。
「流石、キスティさん、貴族の淑女って感じと大人の女性の色気があるね。」
「うふふ、ありがとう御座います。」
「なんか、あたしだけ酷くない?」
「別にエルが可愛くないと言う訳じゃない、ムラムラはしないと言っただけで、エルだって可愛いぞ?」
「そ、そか、ん、なら良い。」
「どうした?」
「な、何でも無い。」
「うふふ、シロウさんも礼服が良くお似合いですよ。」
「・・・そうか?それに、タキシードとあんまり変わらない様に思うんだが。」
「ダンス用のタキシードは動きやすいように、少々ゆとりを持って作られていますが、この礼服は男性の魅力を引き出す為に、ぴったりとした作りになっているんですよ。」
「あぁ、だからこんなに窮屈なのか。」
「うふふ、それは仕方がありません。ですが、凛々しいですよ。」
「そ、そうか。そう言われると俺も嬉しいよ。」
「コホン、準備はできたかい?」
「あ、ああ、できてるぞ。」
「お兄様達も準備できたようですね。」
「あ、姉上、お綺麗です。」
「はぁ、エルネス。もう少し優雅に女性を褒めないとモテませんよ?」
「うぐっ、善処します。」
「ははは、エルネスもキスティに言われるとはね。」
「お兄様。何か?」
「・・・いや、何でも、ないよ?」
(・・・うん、俺も気を付けよう。)
「さ、さあ、行こうか。」
謁見に向かうのは、俺たちホウライが4人とヘリスト家からキスティとマルスティとエルネスの計7人だ。
人数が多いので馬車2台での登城になる、1台目にヘリスト家の3人が乗り、2台目に俺たちホウライが乗る。
今回の謁見はヘリスト家が最後に謁見の間に入るので、王城に向かうのも最後になる。
そして、複合スキルカードの献上の義はマルスティが行い、俺たちはその後ろに並んでいるだけで良いそうだ。
並びは前列にヘリスト家の3人が左からキスティ・マルスティ・エルネスの順に並び、その後ろにホウライがヴァルマ・俺・スヴィ・エルシュラの順に並ぶように言われた。
「シ、シ、ロウ。」
「うぅ。」
「ヴァルマ、スヴィ、大丈夫か?」
「ちょっと、ダメかも?」
「む、む。」
「2人とも、呼吸だ、訓練でいつもしているだろ?呼吸を整えて身体の力を抜くだ。」
「お、おう。ふぅ、すぅ、はぁ。・・・ふぅ、すぅ、はぁ。」
「うん。ふぅ、すぅ、はぁ。・・・ふぅ、すぅ、はぁ。」
「シー君、それ何?」
「え?何って呼吸法だが?」
「呼吸法?聞いた事が無いよ?」
「・・・他の人は緊張を解したりする時はどうしてるんだ?」
「ん、肩を回したり、腕を”ぷらぷら”させたり?」
「そ、そうか。まぁ、それもリラックスではあるな。」
(・・・呼吸法とかは無いのか?)
「ふぅ、少しは落ち着いた。」
「うん。」
「俺たちはマルスティさん達の後ろにいれば良いだけだ、声をかけられる事も無いんだから大人しくしていればそれで良い。」
「おう。」「うん。」「お~。」
馬車を降りるとマルスティ達と共に謁見の間の近くにある控えの間に通された。
「ここで、どのくらい待つんだ?」
「その時にもよるけど、そこまで待たされないはずだよ、此処は登城して身支度を整える為の場所だからね。」
「へぇ、そうなのか。エルネスさんも来た事が?」
「いえ、僕はまだ学生ですからね。そんな機会はありませんよ。」
「そうか、随分と落ち着いているから、何度も来ているのかと思ったよ。」
「そう見えているのであれば、僕も成長したと言う事ですね。」
「なるほど、十分立派に見える。」
「はは、ありがとう御座います。」
暫く雑談をしていると、扉をノックして1人の侍従が入って来た。
「お待たせ致しました。準備が整いましたので謁見の間へお越しください。」
「分かりました。シロウ、行こう。」
「ああ、分かった。」
それから、謁見の間の大扉の前に着くと、侍従が扉の脇にいる騎士に扉を開けるように伝えた。
扉が開かれると左右に貴族達が立ち並んで迎えていた。
(・・・本当に眩しい人達だ。金・銀・白金、煌びやかなことで。)
そして、玉座の前に着くと片膝をついて国王の入城を待つ。
「サンアーロ・ヴァロ・エクルース国王陛下、並びにビルティナ・ディラ・エクルース王女殿下、ご入来!」
サンアーロ国王が玉座に着くとビルティナ王女殿下は少し離れた場所にある椅子に座った。
(・・・王女殿下?)
「皆の者、面を上げよ。」
そして、顔を上げると満足げな笑みを浮かべた国王がいた。
「此度のダンジョン争奪戦において我がヘリスト家の者が複合スキルカードを発見した事を国王陛下にご報告申し上げます。」
「良かろう、我が名においてヘリスト家の勝利を認めよう。」
「つきましては、複合スキルカードを国王陛下に献上致したく存じます。」
「うむ、大儀である。」
マルスティが渡しておいた複合スキルカードを侍従が恭しく国王に差し出す。
「ほう、これが複合スキルカードか。何階層で見つけたのだ?」
「29階層にて発見されました。」
「ほう、29階層とな。良くぞ其処まで潜れたものだ。」
「優秀な冒険者の協力があってこそに御座います。」
「後ろにいるのが、その冒険者達か。」
「その通りで御座います。」
「良かろう、では、その冒険者達に追って褒美を取らす。」
「はは~。恐悦至極に存じます。」
「ヘリスト家には褒美としてビルティナを降嫁させる事とする。」
『・・・は?』
「な!何を仰いますか、国王陛下。ビルティナ王女殿下は息子サロドルフの婚約者ではありませんか!」
「・・・そうであったな。だが、その婚約者は我が娘には相応しくないと、我が判断した。」
「な、な、何を仰います。サロドルフの何処が相応しくないと!」
「ふむ、ベリザリオはサロドルフが我が娘に相応しいと?」
「当然では御座いませんか!サロドルフ以上に王女殿下に相応しい男がおりましょうか!」
「そうか、残念だ。我が娘があの様な男に相応しいなどと思われるとは。」
「い、一体、陛下は何を仰っておられるのでしょうか?」
「我が知らぬと、本気で思っているのか?」
「い、いえ、心当たりは御座いませんが?」
「ふっ、ふっ、はっはっはっ、痴れ者が!宰相、教えてやれ。」
「はい、畏まりました。」
そして宰相がベリザリオ侯爵家とサロドルフの所業を読み上げた。
まず始めにキスティがダンジョンに潜った事でヘリスト家が複合スキルカードを発見した可能性を考慮し、ヘリスト家の馬車を盗賊に襲わせた。
それに失敗すると今度は宿に侵入して複合スキルカードの奪取を目論んだ。
次に舞踏会でキスティのエスコートをイルルトにさせて2人の婚姻を確実にする為に、魔集薬を使いアンティラに魔物を集め、軍部に所属しているエスコート役を王都から離れさせた。
そして、ダンジョン争奪戦では、ニクライネン家と共謀して魔集薬を使い有力な冒険者や貴族達を潰し、更には争奪戦参加者以外の冒険者をダンジョンに潜ませ利用した。
「な、一体、何の証拠があってその様な事を!」
「え、ええ、父上の言う通りです。我が侯爵家がその様な事をしたと、何の証拠があって仰られるのか。」
「そ、そうです。ニクライネン家はその様な事は致しません。そもそも、我が息子イルルトも争奪戦で亡くなってしまったのですよ?」
「証拠でしたら、こちらに映像が残っていますよ。」
宰相がそう言うと、ダンジョン内で撮影した映像を周囲の貴族達にも見える様に映し出した。
「な、な、何故。こんな物が。」
それを見た貴族達は自分達の送り出した家族がベリザリオとニクライネンに殺された事を知った。
「ち、違う。わ、儂は、儂は知らん、儂は何も知らん!そうだ、全てはサロドルフのした事だ!」
「ち、父上、何を!」
「ぐっ、イルルトめが。」
「魔集薬に強化薬でしたか、これらの製造方法と現物もベリザリオ侯爵領にある領主邸から押収してあります。」
「な、いつの間に!?」
「国が動けば、貴様らとて気付くであろう。だから、我が娘ビルティナがSランクに依頼したのだ。」
「へ、陛下。」
「ビ、ビルティナ、一体どう言う事だ、君は私を愛していたじゃないか!」
「うふふ、サロドルフ様、私は女性を犯して殺すような殿方を愛する事などできませんわ。・・・まるで悪鬼種のようではありませんか?」
「な、何故。」
「あら、婚約者になる方の素行を調べるのは、当然ではありませんか?」
ビルティナ王女の発言は、ニクライネン子爵家がベリザリオ侯爵家に便宜を図って貰う為にスラムや村から集めた女性を献上していた事と、それらの女性を犯して殺すサロドルフの犯行の証拠を得ての物だった。
「そう言う事だ。それを知ったからこそ、貴様らを詳しく調査するように依頼したのだ。」
「ぐっ、貴様の所為で!」
「ち、父上だって!」
「・・・見苦しい。」
「陛下、御裁断を。」
「ベリザリオ侯爵家を改易に処す、当主ラーフタヴィ・ベリザリオ並びに子息サロドルフ・ベリザリオは犯罪奴隷とし、鉱山での採掘刑に処す。」
「へ、陛下!何卒、何卒!」
「そ、そんな、私は。」
「更に、共謀したニクライネン子爵家も改易に処し、当主イルリオ・ニクライネンも同様の刑に処す。」
「ぐっ、・・・何故、私まで。」
「衛兵!連れて行け!」
『は!』
「本日の謁見はこれまでとする、ヘリスト家と冒険者は会議室で待て、褒美の詳細を説明する。」
『はは~。』
(ベリザリオとニクライネンは終わったが、こっちはまだ終わらないのか。)




