第17話 証拠を掴め
イルルト達のしていた事を知り、証人になるトゥレンニ達をこのままにしておく分けには行かないので、16階層のポータルまで戻って帰還した。
そして、領主邸に戻り詳細をアルマスに報告した。
「・・・、ニクライネンは罪に問えるだろう。だが、ベリザリオは。」
「こうして記録と証言があるのにか?」
「名が出ているだけだからな、”イルルトが勝手に名を使った”と言われれば、それ以上問い詰める根拠にはならん。」
「ベリザリオが関わっている確固たる証拠が必要、か。」
「まあ、そう言う事だ。それに・・・安易にこの事を報告すればベリザリオが証拠を消してしまいかねない。」
「・・・証拠が掴めるまでは、このままって事だな。」
撮影した映像ではイルルトが”ベリザリオ侯爵家の指示”と話しているだけで、それが真実かは分からない。
トゥレンニ達はイルルトに言われて行動していただけで、ベリザリオ侯爵家から直接指示された分けではないので、確証が無い。
この事が公になっても、ニクライネン子爵家はともかくベリザリオ侯爵家は白を切る事ができるし、証拠を消されればそれ以上追及はできない。
ベリザリオ侯爵家が関わっている証拠が必要になる。
「だが、ベリザリオ、いや、サロドルフはイルルト達がいなくなった事をもう知っているかもしれん。」
「ああ、そうだな。・・・、なぁ、トゥレンニ、お前達はダンジョン内で誰かと接触したりしなかったか?お前達の、と言うかイルルトの実力では15階層を越えられるとは思えないんだが?」
「うっ、その。イルルト様の知り合いの冒険者パーティに協力して貰って15階層まで越えたんだ。」
「冒険者?貴族では無く?」
「どうだろう、名前もパーティ名も教えてくれなかったし人目もあるから話しもしてないんだ、だから貴族かどうかも分からない。」
「そうか。それはサロドルフでは無いんだな?」
「ああ、サロドルフ様は俺たちも見かけた事があるから顔は知ってる、だからサロドルフ様じゃない。」
サロドルフのパーティとそれを助けるパーティが最低でも1つはあると言う事だ。
サロドルフの目的は複合スキルカードで、日数的に考えるとまだ到着してはいないと思うが、26階層を目指しているはずだ。
26階層を2パーティで探索するか、もしくはもう1つのパーティに他の貴族を排除させるか。
16~17階層ではイルルト達が他の貴族を排除していた事を考えれば、26階層に入る前もしくは入った後に潰しに来る可能性もある。
(・・・サロドルフを追い詰める証拠が必要か。)
「なぁ、アルマスさん、この記録は証拠として有効か?」
「そりゃあ、こいつは内容を変えたりはできないからな、証拠としては使えるが、どうする気だ?」
「まあ、これしか手が無いからな。」
▽▽▽
翌日からは16階層から19階層へと探索しながら様子を観察していた。
イルルト達が使った魔集薬は砂の様な見た目で周囲に撒いたり人に振りかけて使っていたそうだ。
薬はコスティが持っていたらしいが、既にダンジョンに吸収されているので回収もできていない、それ以前に例えその魔集薬を回収できたとしてもベリザリオに繋がるか分からない。
「イルルト達のした事が原因だろうな、貴族達が少ない。」
「ええ、潰された貴族家と、貴族家が減った事に恐れた貴族家が既に撤退していると聞きました。」
「ヘリスト家にとっても良い状況ではあるが。」
「そうですが、喜んではいられませんね。」
「まあな。」
「シロウ、どうする?このまま此処でカードを探すか?」
「・・・いや、下に行こう。ここで見つかる可能性も無い分けじゃないが、下の方が可能性は高いだろうし、サロドルフの事もある。」
「おう、じゃあ、行こう。」
その後20階層を越えて21階層に行き、更に数日をかかって25階層の守護者を倒した。
「26階層からは目的を達成するまで帰るつもりは無いが、皆はそれで良いか?」
「おう。」「うん。」「ええ。」「お~。」
「俺たちが上階層で様子見をしている間に、サロドルフ達はこの階層に来ているだろう。此処での目的は複合スキルカードの捜索とサロドルフが暗躍してる証拠を見つける事の2つだ。それと、サロドルフの指示で動いているパーティは正体が分からないから特に注意してくれ。」
「ですが、まずはカードの捜索が優先です。ここでカードを先に見つけられたら、サロドルフ様はこれ以上何かをする必要が無くなってしまいます。」
「そうだな。ではカードを探すとしよう。」
「おう。」「うん。」「ええ。」「お~。」
26階層を探索して幾つかの宝箱を発見したが、どれも目的の複合スキルカードでは無かった。
そして27階層を探索している時に気配を感知した。
「キスティさん、俺が1人で確認する。皆は仙境に隠れていて欲しい。」
「1人で、ですか?危険なのでは?」
「罠を回避する為に26階層で見つけた罠察知を使わせて貰うが良いか?」
「ええ、それは構いませんが。」
「あとは、隠形を使って様子を見る。証拠になりそうなら撮影も一緒にな。」
「・・・、わかりました。お願いします。」
「ああ。」
「シロウ。」「シロ。」
「大丈夫だ、2人は待っててくれ。」
「シー君、あたしは?」
「・・・、エルもな。」
「むふふ、待っていてあげよう。」
(・・・エルは仲間外れが嫌なのか?)
「じゃあ、行ってくる。」
罠察知のスキルを取得してから隠形を使い、慎重に気配がある方へ向かった。
(・・・当たりだ。)
「ちっ、レンニ!まだ見つからないのか。」
「サロドルフ様、そう簡単に見つかるなら既に見つかってますよ。」
「だが、見つけなければダンジョンを奪えんのだ、私がこんな所に来る羽目になったのは、マルスティ如きが下らん提案をした所為だ。」
「それはそうですが、こうなっては手あたり次第に宝箱を開けて行くしかありませんよ。」
「タイトの言う通りですよ、それに、ここまで来られる冒険者は事前に潰しましたし、イルルト達も上の迷宮階層で幾つかのパーティを潰した様で辞退する貴族家が出ているらしいです。」
「リクハルド・・・。そのイルルトも行方が分からないと聞いたが?」
「ええ、私も聞きましたが、まあ問題は無いでしょう。あいつ等にはもしもの時には”強化薬”を使う様に言ってあります。どうせ魔物に追い詰められてそれを飲んで死んだのでしょう。」
「あの不完全な強化薬か、あれは30分もしない内に死に至る劇薬だからな。」
「ええ、しかも、あれを飲めば、ただ暴れるだけの獣になってしまいますからね、生きていたとしても話しもできませんよ。」
「あいつが死ぬのは構わんが。・・・あいつがキスティに固執してたから、女を手に入れやすかったってのに。ちっ、別の手段を探す必要があるな。」
「ははは、サロドルフ様は壊しすぎなんですよ。」
「はっ、何を言ってる、それが良いんじゃないか。」
(・・・女?何の話しだ?っ、誰かが来る。)
「サロドルフ様。」
「・・・ヨーナス。そっちはどうだ?カードは見つかったか?」
「いえ、申し訳ありません、まだ見つかっていません。」
「ちっ、どいつもこいつも、私を苛立たせるな!さっさと見つけて来い!」
「も、申し訳ありません、で、ですが、我々も物資が尽きかけておりまして、その、イルルト様達が物資を運んで来る予定でしたので。」
「・・・、ちっ、アートス、渡してやれ。」
「良いので?」
「仕方が無かろう。こいつらは参加者では無いのだ、争奪戦が終わるまではダンジョンからは出られん。物資が尽きれば・・・。」
「ですが、魔集薬はもうありませんよ?」
「そんな物は必要無い。他に此処まで来られるパーティはいない。」
「まぁ、そうですね。分かりました。」
「助かります、半月も潜っているのでどうしても食料が足りなくて。」
「分かっている、お前達”斬武闘将”は、このままカードを探せ。」
「はい。分かりました。それでは失礼します。」
「ちっ、仕方が無い、物資が無ければ探索は続けられん。一度戻るぞ。」
「はい。」
(・・・証拠としてはこれで十分か?)




