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第16話 異変の真相

今日は17階層からの探索だが、昨日はおかしな事が立て続けに起こったので今後も注意が必要だ。



「疲れは取れてるか?」


「おう、ばっちりだぞ。」


「うん、元気。」


「ええ、ゆっくり休ませて頂きましたよ。」


「シー君はずるいよね。」


「はは、こればっかりは何を言われても仕方が無いな。」



そして仙境を出て探索を始めた。



「さて、昨日の事もあるからな。慎重に行こう。」


「おう。」「うん。」「ええ。」「お~。」




それから暫く17階層を探索して、ようやく宝箱を1つ見つける事が出来た。




「うん。罠、無い。」


「分かった、それじゃ、開けるぞ。」



宝箱を開けると中には赤みがかったマントが入っていた。



「このマントは特殊な物か?」


「・・・これは、耐火マントではないでしょうか?」


「火に耐性があるマントって事か。レッドベア対策には良いな。」


「ええ、前回わたくしは炎耐性のある鎧を纏っていましたが、これでも良いかも知れませんね。」


「性能的にはどっちが良いんだ?」


「鎧の方が性能は良いですよ。このマントは燃えないだけでしょうから。」


「そうか、エルは大丈夫なのか?」


「シルが火を防いでくれるから大丈夫だよ?」


「それなら、俺もヴァルマとスヴィも大丈夫だから、これはキスティさんが使ってくれ。」


「良いのですか?」


「ああ、俺たちは火耐性のスキルを持ってるからな。」


「それでは、遠慮なく使わせて頂きますね。」






それからも17階層を探索していると、前から誰かが向かって来ていた。






「誰かが来る、警戒してくれ。・・・ん?」


「シロウ、どうした?」


「これは、まずい。ヴァルマ、スヴィ、脇道に入る、先導してくれ。」


「お、おう。」「うん。」



それから脇道に入り、魔物に追いかけられていた貴族達と追いかけていた魔物をやり過ごすと、様子を見に戻った。



「随分な数に追いかけられていたな。」


「そんなにいたのか?」


「ああ、20以上いた。」


「そんなにか!?シロウ、助けなくて良かったのか?」


「今回はルール上助力は出来ない、助ければ俺たちも失格になってしまう。」


「そうですね、参加者たちもそれは理解しているはずです。」


「何かこう、もやっとするな。」


「あぁ、そうだな。」


「シー君。」


「ん?・・・また誰かが来る?遭遇しても面倒だ、下がって通り過ぎるのを待とう。」




追いかけられていた貴族達と同じ方向から、どこかのパーティが来た。




「コスティ、あいつらはあれで潰せるか?」


「大丈夫です、イルルト様。あいつらはCランクですから、あの数をけしかければ問題なく潰せます。」


「そうか、では、次に向かうぞ。」


「あの、イルルト様、こんな事をして不味くは無いですか?」


「トゥレンニ、貴様にも話したはずだ、これはベリザリオ侯爵家の指示だ。逆らう事は許さん。」


「で、ですが。幾ら何でも。」


「トゥレンニ!イルルト様に何を言うか!お前達の役目は我らを案内すれば良いのだ。無駄口を叩くな!」


「くっ。」


「・・・リーダー。」


「・・・トゥレンニ。」





「なるほど、そう言う事でしたか。イルルト様。」


「な!?キ、キスティ嬢、何故此処に。」


(くっ、キスティさん、何を勝手に!)


「・・・スヴィ。アレで撮っておいてくれ。」


「うん。」


「皆、臨戦態勢。行くぞ。」



イルルト達の話しを聞いて、キスティはそのまま話しかけてしまった。



「・・・キスティ嬢、私と共に生きて行く貴方ならば分かっているでしょう?」


「何をどう分かれと?貴方がしている事は犯罪ですよ?」


「ははは、違いますな。彼らを殺すのは魔物たちです、私では無い。」


「魔物をけしかけるのは同じ事です。」


「ふははは、残念ですが、それでは水晶に犯罪判定はされないのですよ。」


「それがどうかしましたか?此度の争奪戦は国王陛下の名の下に開催されており、他の貴族の妨害をしてはならない、と聞いているはずですが?」


「・・・キスティ嬢、これはベリザリオ侯爵家からの指示なのです。ベリザリオ侯爵家に逆らう様な真似はお止めなさい。」


「ベリザリオ侯爵家ですか、ではこの件は侯爵が糸を引いていると?」


「イ、イルルト様、どうされますか?」


「コスティ、黙っていろ。」


「は、はい。」


「なるほど、コスティ様もご存じなのですね。」


「え!?いや、その。」


「他の皆様も?」


「あ、いや。」


「けど。」


「あぁぁ。」


「イルルト様、申し訳ありませんが、この事は報告させて頂きます。シロウさん行きましょう。」


「あ、ああ。分かった。」


「お待ちなさい。キスティ嬢、本気でベリザリオ侯爵家に逆らうおつもりで?」


「これは、ルール違反であり、国王陛下への背信行為です。」


「くっ、・・・はぁ、キスティ嬢、貴方がここまで聞き分けが無いとは思いませんでしたよ。私の妻にして差し上げようとベリザリオ侯爵家に協力したと言うのに、無駄になりましたな。・・・コスティ、ピエタリ。」


『は!』



そう言うと彼らは懐に仕舞っていた何かの丸薬を飲み込むと、皮膚が赤黒く変色し筋肉が盛り上がり始め、更には、皮膚が鱗のような形に変わっていく。



「ぐっ、ぐぁぁぁあぁあぁぁあ!!!」


「がぁ、ぐあぁあぁああ!!!」


「ぐぅぅあぁああぁあ!!!」




「イルルト様、一体何を。」



「これは、まずくねぇか。トゥレンニ!」


「え!?何、あんなの聞いて無いんですけど?ねぇ、リーダー!」


「え?あ!チェルソ、ティルダ、退避!」



(・・・一体、何を飲んだ?)



更に目も赤くなり視線が定まらないらしく、眼球がせわしなく動いている。



「ぐぁぁああ!!!がぁ!」


「がぁああぁ、はぁあ。」


「ぐわぁはぁあ。はぁっぁ、はぁ。」




「はぁ、はぁ。は、はははっはっは!良い、良いぞ、あははは!!素晴らしい!」




「イルルト様、一体何を。」


「キスティ嬢、どうです、私のこの体!素晴らしいでしょう!この強化薬を飲めば私の力は、ち、ちから、は。へっ、あ、は、あは。」


「・・・イルルト様?」


「がぁがぐあぁあああ!!!!」


「キスティさん、下がって!」


「え?あ、はい。」



イルルトは強化薬と言っていたが、ここまで姿を変貌させる薬など、まともな薬では無い。



「お前達も下がっていろ!」


「え、だが。」


「邪魔だ!」


「っ、わ、分かった。チェルソ、ティルダ。」


「ああ。」「うんうん。」




「がぁ、げぁ、げへへへ、キ、コロ、ス、ギャハ、ギャハ。」



「シロウ、どうすんだ?」


「シロ。」


「あれはもう、・・・人じゃ、無い。」


「シロウ。そうだな、あれは魔物だ。」


「うん。倒す!」


「すまない。」


「おう、オレ達は家族だ、遠慮は要らない。」


「うん!」


「エルは援護を頼む!ヴァルマ、スヴィ、1体ずつ頼む。」


「おう、任せろ!」「うん、任せて!」


「シー君!矢が刺さらない!」



既にエルシュラがイルルトに向かって矢を放ったが、鱗の様になった皮膚が硬化しているのか、矢が刺さらない。



「ヴァルマ、スヴィ。魔纏だ。」


「おう。」「うん。」



矢が刺さらないならば、タートルリザード並みの硬度があるはずだ、通常の攻撃は通らない。



「ここまで来ると、龍人族みたいだな。」


「シー君、龍人族にあんな鱗は無いよ?」


「じゃあ、リザードだな。新しいリザード種だ。」


「ほお!そか、リザードか。」


「じゃあ、リザードの討伐開始だ!」



人の姿を捨てたイルルト達は新たなリザード種の様な姿になっている。


イルルトとしての意識があるのか分からないが、敵意を剥き出しにして向かって来るイルルト達をこのままにしてはおけない。



「すぅ、はぁ、しっ!」



魔纏を使い剣を振るうが、以前とは比べ物にならない速度で躱された。



「へぇ、速いな。それなら。」〔飛剣〕



飛剣を飛ばして牽制するが、浅く傷が入っただけで切断には至らない。



「面倒だな。」〔身体強化〕



更に身体強化をかけて速度上げてイルルトに向かうと、イルルトは剣を無茶苦茶に振りながら向かってくる。



「ギャハ、ギャハ、ギャハ!ガハァ!」



そして剣を振るいイルルトの剣を切断する、イルルトの視線が斬られた剣に向けられた瞬間に左脇腹を切り裂く。



「ガァ?ギャアアァ。」


「終わりだ!」〔重撃〕



そして最後は重撃を重ねて肩から心臓に向けて切り裂いた。



「ヴァルマ、スヴィ。」



2人は押してはいるが、致命傷に至っておらず、エルの牽制も意識が僅かに逸れる程度の効果しかない。



「スヴィ!」



ヴァルマは手数が多く、コスティは既にヴァルマに剣を切断されているので、まずはスヴィと戦っているピエタリを叩く。



「グルラァァア。」


「シロ!」


「ああ。」



スヴィが牽制している間にピエタリが振り回す盾を切断する。


そして、盾の無くなったピエタリに飛剣を飛ばすと、一瞬怯んだ隙にスヴィが槍を突き刺し止めを刺した。



「ヴァル!」


「おう!」



残ったコスティに対してヴァルマが牽制して意識を向けさせると、スヴィが槍で右足を切り裂いた。



「ギャアラァア!?」


「止めだ!」〔重撃〕



最後は、重撃で頭部を縦に切り裂いて止めを刺した。



「ふぅ、すぅ、はぁ。」


「すぅ、はぁ。」


「はぁ。全く本当に厄介だった。ヴァルマ、スヴィ、大丈夫か?」


「おう。今度は大丈夫だ。」


「うん。」



2人は前回の様に手が震えたりはしていなかった。



(・・・それでも。させたくは無いな。)


「お怪我はありませんか?」


「ああ、大丈夫だ。」


「ね、シー君ってCランクだよね?何であんなに強いの?」


「・・・、さぁ?」


「むむ、どゆこと?」


「ああ、エル。それよりやる事があるんだ。・・・話しを聞かせてもらおうか。」


「えっ!?いや、その。」




それから問い詰めるとトゥレンニ達は話し始めた。




事の始まりは、コスティ達がトゥレンニ達のパーティ”猛き戦士の集い”に参入する切っ掛けからだった。


トゥレンニ達はニクライネン家の臣下の家系で3人は昔からの知り合いだった、家は他の兄弟が継ぐので自分達は冒険者になって3人でパーティを組んだらしい。


それから2年は依頼を熟して少しずつランクを上げ、Cランクになってからダンジョンにやって来た、だか、半年前にトゥレンニ達と同じニクライネンの臣下であるコスティとその従者であるピエタリがやって来た。


コスティは臣下であり、臣下の家族であるトゥレンニ達よりも立場が上である為に参入を断る事はできなかった。


暫くは様子を見るていたのだが、3ヵ月程前にコスティは”魔集薬”と言う魔物を誘き寄せる薬の実験をすると言うと、その薬をばらまいたそうだ。


その時は、階段前で行い魔物が集まりだしたのを確認すると階段を降りて逃げたとの事だ。



「それって、洞窟の階層だったか?」


「知ってるのか?」


「確か7階層だったな。」


「あぁ、もしかして巻き込まれたのか?」


「巻き込まれたと言うか、集まっていたのを倒したな。」


「そ、そうか。」



元々、ダンジョンでは冒険者が逃げる時に魔物を集めてしまう事があるので、それほど不思議に思われる事は無かったそうだ。


そして、俺たちがトゥレンニ達を助けた時はコスティが誤って薬を撒いてしまい、スネークリザードを集めてしまったのだと。


その後も何度か実験をして確実に効果がある事が証明された。



「その薬は今回の為に作った訳じゃ無いよな?時期が合わない。」


「さぁ、そこまで俺たちは聞かされて無いから。」



そして今回、魔物をけしかけて他の貴族達を潰すために使ったそうだ。



「それで、あいつらが飲んだ薬は何だ?」


「そ、それも聞いて無い。俺たちは知らないんだ。」


(・・・イルルトもあっさり飲んだって事はどうなるかは知らなかったのだろうし、薬を用意したのはベリザリオって事か?)


「あと、イルルトが言ってた”ベリザリオ侯爵家に協力”とは、何の事だ?」


「えっ、今回の事じゃないのか?」


(・・・キスティさんの事を言っていたから、これも時期が合わない。婚約者候補になる前から関係があったはずだが、何の協力だ?)


「な、なぁ、俺たちはこれからどうすれば。」


「トゥレンニ、はっきり言うがこれは重罪になる。今回は国王の命でルールが公表されたのは知っているはずだ、お前達はそれを破った。」


「そ、そんな、俺たちは、ただ。」


「・・・命じられた、などと言っても。」


「シロウさん、彼らに証言させる事で罪を軽くする事はできると思いますよ。」


「ほ、本当ですか?し、証言します。」


「・・・キスティさんが言うならそうかも知れないな。けど、しっかり証言してもらうからな。」


「あ、ああ。するする。」












(・・・ニクライネンにベリザリオ、か。)


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